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情報通信基礎

情報通信基礎

A5判 168ページ 並製
価格:2,200円 (消費税:200円)
ISBN978-4-501-32270-0(4-501-32270-5) C3055
奥付の初版発行年月:2003年03月 / 発売日:2003年03月上旬

内容紹介

情報の通信技術を基礎知識から学べるテキスト

前書きなど

 「情報通信」という言葉はやや漠然としていて,「情報と通信」であったり,「情報の通信」であったりします.詳しい定義は例えば文献[1]を参照していただきたいと思いますが,本書の意図するところは後者のほうです.
 筆者はかつて,本書と同名の「情報通信基礎」という科目を学部1年生に対して講義したことがあります.そのときは,情報関連の先生と分担して,筆者は通信の部分を受け持ちましたので,その講義は「情報と通信の基礎」という性格のものでした.講義を行ってみて,少なくとも筆者の取り上げたような項目は,通信関連の科目を学んでいく上で役に立ったのではないかと思っています.
 「情報通信」と銘打ったり冠したりしたテキストは数多く発行されていますし,それぞれがあるねらいのもとに書かれていることは当然ですが,意外に「情報の通信」の立場から書かれたテキストは少ないことがわかりました.そこで筆者の行った通信関連の基礎をもとに,情報の部分も取り込んで入門テキストを書こうと思い立ちました.
 情報のどういう部分を取り上げ,どこまで論じるかについてはずいぶん悩みました.意図するところは「情報の通信」ですから,通信に関連の深い項目を選んだつもりですが,かなり独断と偏見があったかもわかりません.情報プロパーの項目,例えば,コンピュータの構成とかソフトウェアは除外しました.また,「基礎」ですから,ネットワークや機器に関する項目も取り上げていません.
 情報に限らず,本書全体としてこういう項目・配列でよかったのかについては,書き上げた今も悩んでいるのが現状です.ご意見がありましたら御教示いただきたいと思っています.
 本書のスタイルはこれまでの筆者の著書にならって次のようにしました.

(1)14回の講義回数を想定し,14章構成とする.
(2)1章は10頁とし,概要,4節(2頁/節),問題から構成する.
(3)節は左側に説明,右側に対応する図面,表,解説,例題等を配置する.
(4)問題は各章の内容との関連に留意し,ヒントをつける.

 章の内容と配列にはかなり迷いました.もともと,“高学年になって専門の科目を学習する上で知っておいた方が良い項目”ということを選択の基準に置いて出発したので,あまり系統だった内容や配列にはなっていません.しかし,できるだけ前の章で学んだ内容が後章の学習に役立つように考えました.おおまかに述べると次のとおりです.
 第1章は世界統一単位SIと直角座標・極座標の話から入ります.第2,3章でベクトルおよびベクトル演算子ナブラと,直角座標における演算方法を述べます.
 第4章では周波数と波長の関係と,通信で用いられる周波数帯を概観し,第5章では波形の基礎となる正弦波の性質と,正弦波のいろいろな表現法を述べます.
 第6章では,波形の時間変化と周波数帯域幅の関係,われわれが伝達したい信号の種類と性質,アナログ信号をディジタル信号に変換する方法を述べ,第7章でこの信号を搬送波(高周波正弦波)に乗せる変調と,そこから信号を取り出す復調を説明します.
 第8章では通信は勿論,他の分野でも広く用いられるデシベルを学習します.
 第9章で集合の概念とこれと密接な関係のある確率の導入と性質,第10章で情報通信で重要な情報量を確率を用いて表現する方法を解説します.
 第11章では信号と雑音の取り扱いや表現法,第12章で情報源の送出速度と通信路の容量の間に整合が取れていなければならないことを示します.
 第13章ではディジタル通信において情報を符号化するための条件や効率よく符号化する方法,第14章では符号を誤り少なく伝送するための方策を述べます.
 内容に関しては数多くの資料,書籍を参考にさせていただきました.その主なものは巻末に列挙しました.各著者に対し深く感謝申し上げます.また,巻末には,付録として,本書を利用していただくに当たり参考になると思われる事項を集めました.
 本書の執筆を開始するにあたっては,内容と構成について東京電機大学出版局植村八潮課長からいろいろなアドヴァイスをいただきました.また,編集にあたっては出版局松崎真理さんに種々ご協力をいただきました.途中で中止しようかと思ったこともありましたが,お二人のご理解とご協力,その他出版局各位のご支援により出版にこぎつけることができました.
 また,図面の作成,原稿のチェックなどで,工学部情報通信工学科の先生方,電波応用研究室,ワイヤレスシステム研究室の方々に御世話になりました.あわせてお礼申し上げます.
 今回は筆者の直接の専門ではない情報の分野にも踏み込んで執筆しましたので,間違いや不適切な表現があるかと思います.ご指摘,ご叱正をいただければ幸いです.

2003年2月


目次

1 単位系と座標系
1.1 単位系
1.2 2次元座標系
1.3 3次元座標系
1.4 答案を書くにあたって
   章末問題1

2 ベクトル演算
2.1 ベクトルの加減算
2.2 ベクトルの乗除算
2.3 直角座標表示による演算
  2.3.1 乗算
  2.3.2 位置ベクトル
  2.3.3 直角座標系の回転
   章末問題2

3 ベクトル演算子
3.1 ∇ψ
3.2 ∇・Α
3.3 ∇×Α
3.4 ∇2,∇×(∇ψ),∇・(∇×Α)
   章末問題3

4 周波数と波長
4.1 周波数とは,波長とは
4.2 電磁波の速度
4.3 高周波の名称
4.4 本章に出てくる用語と単位
   章末問題4

5 正弦波
5.1 三角関数
5.2 ピーク値と実効値
5.3 ejψとは
5.4 正弦波の表示法
   章末問題5

6 信号と帯域幅
6.1 時間と周波数
6.2 アナログ信号
6.3 ディジタル信号
6.4 アナログディジタル変換
   章末問題6

7 変調と復調
7.1 変調・復調の原理
7.2 アナログ変復調
7.3 ディジタル変復調
7.4 コード変復調(スペクトル拡散)
   章末問題7

8 デシベル
8.1 対数
8.2 電力の相対値表現
8.3 電圧・電流の相対値表現
8.4 絶対値表現
   章末問題8

9 集合と確率
9.1 集合
9.2 集合の演算
9.3 確率の導入
9.4 結合確率と条件付確率
   章末問題9

10 情報量
10.1 確率と情報量
10.2 平均情報量(エントロピー)
10.3 結合,条件付,相互情報量
10.4 各種エントロピー,平均相互情報量
   章末問題10

11 信号と雑音
11.1 信号・雑音の表現法
11.2 熱雑音
11.3 信号対雑音比
11.4 雑音指数
   章末問題11

12 通信速度と通信路容量
12.1 情報源通信速度
12.2 通話路容量
12.3 帯域制限された白色ガウス通信路
12.4 シャノンの定理
   章末問題12

13 符号の効率化
13.1 効率化の条件
13.2 効率化の方法
13.3 音声の符号化
13.4 画像の符号化
   章末問題13

14 符号の高信頼化
14.1 論理演算
14.2 ハミング距離
14.3 パリティチェック符号
14.4 巡回符号
   章末問題14

付  録
A.1 国際単位系(SI)
A.2 主要定数
A.3 三角関数・双曲線関数
A.4 ベクトル公式
A.5 微分・積分公式
A.6 関数の展開
A.7 ガウス分布
A.8 単位の名称(接頭語)
A.9 ギリシャ文字

参考文献
索  引


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