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枯渇・環境汚染・利害対立鉱物資源問題と日本

鉱物資源問題と日本 枯渇・環境汚染・利害対立

A5判 168ページ 上製
価格:3,080円 (消費税:280円)
ISBN978-4-7985-0261-8 C3057
奥付の初版発行年月:2019年09月 / 発売日:2019年08月下旬

内容紹介

世界は鉱物資源問題(枯渇問題・環境汚染問題・利害対立問題)をどう解決していくのか、その中で日本が果たすべき役割は何か。また、ほとんどの鉱物資源を輸入に依存する日本は、それらをどのように確保していけばよいのか。本書は日本に対し、問題解決のための6つの事業の実施を提案するものである。

・南太平洋諸国の排他的経済水域で深海底鉱物資源の商業的生産を行う
・ボーキサイトやラテライトから鉄を回収する技術を開発し、その技術を
 熱帯・亜熱帯の開発途上国に移転する
・環境ODAの実施を通じて日本企業の海外投資を後押し、同時に相手国
 企業の環境汚染防止技術レベルを日本並みに近づける
・CO2を発生させない製鉄法、「鉄硫化物原料化」法を開発し、世界に、
 とくに開発途上国に普及させる
・開発途上国に深海底鉱物資源調査の技術協力(ODA)を売り込む
・日本の国内製錬業を海外へシフトする

これらの事業のうちのいくつかは革新的というにふさわしい夢のような事業で、ハードルはやや高いが、日本なら手の届く範囲にある。これらの事業は日本の将来への投資でありかつ相手国のためにもなり、パリ協定および持続可能な開発目標SDGsで日本が求められた目標の達成に大きな貢献が期待できよう。

著者プロフィール

志賀 美英(シガ ヨシヒデ)

鹿児島大学名誉教授
工学博士(1977年3月、早稲田大学)
専門:資源経済学、鉱床学
1947年12月、福島県相馬郡小高町(現、福島県南相馬市小高区)生まれ
1977年3月、早稲田大学大学院理工学研究科資源科学専攻博士課程修了
著書:『鉱物資源論』(2003年3月、九州大学出版会)
   『開発教育序論』(編著、2008年5月、九州大学出版会)
   『写真集 金属鉱石』(2015年8月、南日本新聞開発センター)
定年退職後は、鉱物資源の普及活動(講演・執筆、金属鉱物資源の展示会開催など)を行っている。

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

 序

  第1部 鉱物資源に関する予備知識

第1章 世界の鉱物資源の需給

 1 鉱物資源開発
 2 製錬・精製
 3 消 費
 4 まとめ

第2章 日本の金属鉱業

 1 鉱山業
 2 製錬業

第3章 日本の鉱物資源の輸入

 1 鉱物資源の輸入形態
 2 日本企業の外国投資に対する政府の支援
 3 鉱物資源の輸入価格と輸出価格
 4 鉱物資源の輸入関税
  4.1 関税概説
  4.2 日本の関税
  4.3 WTO協定下における日本の鉱物資源の関税
  4.4 EPA下における日本の鉱物資源の関税

  第2部 鉱物資源問題

第4章 直面する三大鉱物資源問題

 1 枯渇問題
 2 環境汚染問題
  2.1 開発途上国の鉱害
  2.2 日本の鉱害
 3 利害対立問題
  3.1 第1次利害対立─南北対立
  3.2 第2次利害対立─深海底鉱物資源をめぐる利害対立
  3.3 第3次利害対立─大陸棚延長に係る近隣諸国間の境界争い
  3.4 南極の鉱物資源をめぐる「開発」対「環境」の対立

  第3部 鉱物資源の枯渇対策

第5章 鉱物資源の枯渇対策

 1 未開発鉱物資源の開発
  1.1 深海底鉱物資源の開発
   1.1.1 マンガン団塊
   1.1.2 コバルトリッチクラスト
   1.1.3 海底熱水鉱床
   1.1.4 レアアース泥
   1.1.5 深海底鉱物資源開発の問題点
  1.2 南極の鉱物資源の開発
   1.2.1 石 炭
   1.2.2 縞状鉄鉱層
   1.2.3 デュフェク塩基性層状貫入岩体
   1.2.4 斑岩型銅・モリブデン・金鉱床
   1.2.5 石油・天然ガス
   1.2.6 周辺大陸からの類推
 2 鉱業技術の開発
  2.1 選鉱技術の開発
  2.2 製錬・精製技術の開発
  2.3 低品位鉱の開発
 3 非鉱物資源の資源化
  3.1 岩石からの金属の回収
  3.2 土からの金属の回収
  3.3 海水からの金属の回収

第6章 鉱物資源の枯渇対策で日本に期待すること

 1 深海底鉱物資源を開発する
 2 土から鉄をつくる

  第4部 環境汚染対策

第7章 環境汚染対策

 1 坑廃水対策
 2 選鉱で発生する尾鉱対策
 3 非鉄金属の製錬で発生する二酸化イオウ対策
 4 鉄の製錬で発生する二酸化炭素対策
  4.1 二酸化炭素の発生量を削減する方法
   4.1.1 「廃プラスチックの高炉原料化」法
   4.1.2 直接還元製鉄法
  4.2 二酸化炭素を発生させない方法

第8章 環境汚染対策で日本に期待すること

 1 環境ODAを日本企業の海外投資プログラムの中に組み込む
  1.1 開発途上国の環境汚染の背景
   1.1.1 資金不足
   1.1.2 低い環境認識
   1.1.3 実体のない環境基準
  1.2 中途半端な日本の環境汚染対策技術協力(ODA)
  1.3 EPAの「投資」における環境
  1.4 双方が望む方法
 2 鉄の製錬で二酸化炭素を発生させない

  第5部 鉱物資源に係る利害対立の対策

第9章 鉱物資源に係る利害対立の対策

 1 開発途上国の経済的自立のために日本が行ってきた取組みの概要
 2 鉱物資源に関連する日本のODA事業
  2.1 資源開発協力基礎調査・レアメタル総合開発調査など
  2.2 深海底鉱物資源調査
  2.3 専門家派遣事業など
  2.4 準賠償事業:韓国浦項製鉄所(現、ポスコ)建設
  2.5 民間企業の技術協力と政府の資金協力を組み合わせた事業:中国上海宝山製鉄所建設

第10章 鉱物資源に係る利害対立対策で日本に期待すること

 1 開発途上国の経済的自立に貢献する
 2 開発途上国に深海底鉱物資源調査の技術協力(ODA)を売り込む
 3 日本の国内製錬事業を海外ヘシフトする
  3.1 国内製錬業の危機
  3.2 国内製錬から海外製錬への方向転換
  3.3 製錬分野の海外投資に対する政府の支援
  3.4 海外製錬の対象国
 4 海外投資の心得

  第6部 提案した事業のパリ協定およびSDGsへの貢献

第11章 パリ協定

 1 パリ協定発効までの経緯
 2 パリ協定に対する日本の方針や取組み
  2.1 政 府
  2.2 関係機関
  2.3 民間部門
 3 提案した事業のパリ協定への貢献

第12章 持続可能な開発目標SDGs

 1 SDGs採択までの経緯
 2 SDGsに対する日本の方針や取組み
  2.1 政 府
   2.1.1 開発協力大綱の策定
   2.1.2 「SDGs推進本部」の設置
  2.2 JICA
  2.3 JOGMEC
  2.4 民間部門
 3 提案した事業のSDGsへの貢献

 引用文献
 索 引


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