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多極化するチェコ社会と体操運動身体の国民化

身体の国民化 多極化するチェコ社会と体操運動

A5判 272ページ
価格:5,060円 (消費税:460円)
ISBN978-4-8329-6581-2(4-8329-6581-6) C3031
奥付の初版発行年月:2006年02月 / 発売日:2006年02月下旬

内容紹介

現在のオリンピックやサッカーなどを見てもナショナリズムと身体文化の結びつきは明らかである.本書は,チェコ人とドイツ人の対立が深まっていった19世紀チェコの体操運動に焦点を当て,活発に活動していた体操結社が,大衆を「国民化」してゆく過程を詳細に論じる.

著者プロフィール

福田 宏(フクダ ヒロシ)

1971年 和歌山県新宮市生まれ.
1999年 北海道大学大学院法学研究科博士課程単位取得退学(政治学専攻).博士(北海道大学・法学).
同法学研究科助手,講師を経て,
現在  北海道大学スラブ研究センター 21世紀COE研究員.
専攻  チェコ近現代史,ハプスブルク帝国史.

主要業績
『スポーツ』(近代ヨーロッパの探究8)(共著) ミネルヴァ書房,2002年.
「『国民楽派』を超えて —— 近代のチェコ音楽とは?」
『フィルハーモニー』(NHK交響楽団機関誌),2004年9月.
ほか.

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

プロローグ
1万1000名の集団美
民主主義の学校
3つの出会い
 (1) 市民層と下層民の出会い
 (2) 市民性とエスニック性の出会い
 (3) 身体と精神の出会い
本書の構成

第1章 国民社会への軌跡
はじめに
1.1 多極化するチェコ社会
 1.1.1 対抗意識
 1.1.2 誰がチェコ人なのか?
1.2 チェコ社会における国民主義の展開
 1.2.1 M.フロフの段階論
 1.2.2 近代的「市民社会」としての国民(C1段階)
 1.2.3 一人歩きする「チェコ性」(C2段階)
 1.2.4 市民層と下層民のせめぎ合い(C3段階)
1.3 ドイツ系社会とユダヤ系社会の反応
 1.3.1 追い込まれるドイツ系社会
 1.3.2 「袋小路」のユダヤ系社会
1.4 研究史
 1.4.1 近代性(=市民性)への着目
 1.4.2 チェコ史学における新しい流れ
 1.4.3 体育史研究における変化
おわりに——本書の位置づけ

第2章 チェコ系とドイツ系の「分化」
はじめに
2.1 チェコ社会における結社活動の発展
 2.1.1 立憲体制への移行と結社法
 2.1.2 結社の発展と諸国民の「分化」
2.2 体操運動における「分化」過程
 2.2.1 体操運動の萌芽期
 2.2.2 「分化」の始まり
2.3 創設者の「覚醒」
 2.3.1 フュグネルの「チェコ化」
 2.3.2 ティルシュの模索
2.4 チェコ的体操の探究——身体文化の創出
 2.4.1 「適者生存」の世界観
 2.4.2 モデルとしての古代ギリシア
おわりに

第3章 シンボルをめぐる闘争
はじめに
3.1 ソコル
 3.1.1 ソコルの発展
 3.1.2 体操運動における国民的公共圏
 3.1.3 チェコ社会におけるヤン・フス
 3.1.4 ソコルにおけるヤン・フス
3.2 労働者系体操運動
 3.2.1 労働者体操協会の誕生
 3.2.2 初期の課題
 3.2.3 ソコルとの関係
 3.2.4 「先駆的社会主義者」としてのヤン・フス
3.3 カトリック系体操団体
 3.3.1 カトリック大衆運動とオレル
 3.3.2 ソコルとの「対決」と「真のキリスト者」としてのフス
おわりに

第4章 「我が祖国」への想像力
はじめに
4.1 「救うべき同胞」の発見
 4.1.1 言語と国民
 4.1.2 学校財団と国民協会
4.2 ドイツ系多数地域とソコル運動
 4.2.1 支援活動のきっかけ
 4.2.2 社会主義勢力との対立
4.3 禁止された2つの祭典
 4.3.1 テプリツェにおける祭典
 4.3.2 プラハティツェへの遠征
4.4 「脅かされた地域」へのソコルの進出
 4.4.1 クカニの語り——国民的地平
 4.4.2 公共空間の構築——体育館と指導者
 4.4.3 チェコ系多数社会とのネットワーク
おわりに

第5章 創られるユダヤ人の身体
はじめに
5.1 ドイツ体操運動における反セム主義の台頭
 5.1.1 反セム主義の新しさ
 5.1.2 体操運動における「アーリア化」の波
5.2 「病的なユダヤ人」から「新しいユダヤ人」へ
 5.2.1 「劣性の他者」としてのユダヤ人
 5.2.2 ユダヤ系体操運動の展開
5.3 チェコ社会におけるユダヤ人
 5.3.1 チェコ・ナショナリズムにおける反セム主義
 5.3.2 ソコルにおける反セム主義の拡大
 5.3.3 プラハにおけるユダヤ体操運動とソコル祭典
おわりに

第6章 オリンピックとチェコ国民
はじめに
6.1 社会におけるオリンピックの位置
 6.1.1 初期オリンピックのイメージ
 6.1.2 スポーツと体操をめぐる論争
6.2 対立の予兆
 6.2.1 1896年の第1回アテネ大会
 6.2.2 国家と国民の問題
 6.2.3 オーストリアにおけるオリンピックへの関心
6.3 政治化するオリンピック
 6.3.1 1906年アテネ中間大会における最初の対立
 6.3.2 1908年ロンドン大会における「ボヘミヤ王国」
6.4 「国家的事項」としてのオリンピック
 6.4.1 「オリンピック国民」の定義
 6.4.2 グートとヴィンディシュグレーツの直接交渉
 6.4.3 1912年のストックホルム大会
6.5 チェコ・オリンピック委員会の追放
 6.5.1 チェコ・スポーツ基本政治綱領
 6.5.2 オリンピック・コングレスの参加資格
 6.5.3 1914年のパリ・コングレス
 6.5.4 「政治的国民」の意味するもの
おわりに

エピローグ
《マラトンの戦い》とチェコ国民
《ティルシュの夢》——国民的体操運動の頂点
夢のあとに——終わりの始まり



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