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初めて学ぶシーケンス制御

初めて学ぶシーケンス制御

B5判 208ページ 並製
価格:3,190円 (消費税:290円)
ISBN978-4-501-11680-4 C3054
奥付の初版発行年月:2015年01月 / 発売日:2015年01月中旬

内容紹介

旧版「12週間でマスターPCシーケンス制御」の改訂版。シーケンサ(PLC)によるシーケンス制御を初学者向けに解説。入出力機器の接続法からラダー図の作図法まで詳細に解説。

前書きなど

 シーケンサは“産業用コントローラ”の切り札です。複雑化する産業設備の自動化のなかで,元来からの“シーケンス制御”にとどまらず,演算制御・情報処理・ネットワーク化に対応できる,高機能・高性能なシステム構築のキーコンポーネントです。
 シーケンサは,マイクロエレクトロニクス技術の急速な発展に伴い,高機能・高性能化と同時にユーザの利用環境も改善され,どの分野の技術者にもたいへん扱いやすい制御機器となっています。また,取扱説明書などのマニュアル類も充実しており,電気や電子の専門知識がなければ扱えないような,特別な制御機器ではなくなってきました。特に,プログラムの開発環境は非常に改善され,メーカごとに異なる専用の開発ツールを必要としていた制約からも解放されて,パソコンを使って手軽に作成できるようになっています。
 反面,シーケンス制御の伝統的な考え方や手法は引き継がれており,パソコンの取り扱いやコンピュータのプログラム経験者であっても,初めてシーケンス制御を経験する人にとっては,非常になじみにくい面があります。最近の高級機種に属するシーケンサでは,コンピュータ言語のC言語のような構造化プログラミングを志向したものも現れていますが,シーケンスプログラム作成の主流には,依然としてシーケンス制御専用の言語と方法が用いられています。これら主流の言語は,リレー回路に起因する伝統的な記号などで表現されます。このためシーケンス制御を含む産業設備機器に関わる技術者にとって,従来から使われている記号や表現を使ってシーケンスプログラムを作成したり,すでに作られて稼働している既存の制御プログラムが理解できることが重要になります。
 筆者は,制御技術者養成の研修会や通信教育講座,書籍と雑誌連載などを通じて,多くの技術者の方々とかかわってきましたが,初めてシーケンス制御を学ぼうとする人にとって,共通した“つまずきやすいポイント”がいくつかあることを知りました。筆者が初めてシーケンス制御の入門書を書いた1986年頃は,電磁リレーの電気回路や制御を経験している技術者も多く,そのことがかえってコンピュータ処理による,シーケンサの動作とプログラムを理解するうえでの障害になっていました。一方コンピュータに詳しい人は,プログラム処理の細かいことが気になり,プログラムの作成がなかなか進められない状況にはまり込むことが多々ありました。シーケンス制御の講習会では,リレーの電気回路やコンピュータの知識にも乏しいほうが,かえってすんなりと取り組めていたことが印象的でした。
 これからシーケンス制御を学ぼうとしているのは,コンピュータになれ親しんでいる一方で,ほとんどの人たちが電磁リレーの電気回路には経験がないと思われます。本書はこれらの経験とこのような状況を考え,これまでの教材や説明の例題などを見直し,シーケンス制御の現場で必要とされる即戦力を育てる,本当に必要と思われる内容を段階的に扱いました。小さな障害を乗り越えながら少しがまんをすれば,3か月程度で無理なく効率的に重要で基本的なことが習得できるように工夫してみました。また,全体を通じて特別に電気や電子の知識がなくても理解できるように心がけました。
 前半の第5章までは,シーケンサのハードウェアを中心に解説し,シーケンサの仕様を理解するとともに,シーケンサにセンサやアクチュエータなどの入出力機器を正しく接続できるようにします。
 後半からは,シーケンス制御のメインテーマであるプログラム(ソフトウェア)について,基礎から実務に沿ったプログラムの作成までを解説しました。第6~第7章では,シーケンサの基本命令と基本回路(プログラム)を取り上げ,ここでプログラム作成の基礎が習得できるようにします。第8~第10章では,具体的にいろいろなプログラムを作成しながら,プログラム作成の過程や考え方を詳しく説明するとともに,問題を解決するためのプログラムテクニックなども学びます。第11章では,加減算などの四則演算をシーケンサで行う場合の,データの取り扱いと処理方法について説明しました。第12章では,十字交差点の信号機制御をテーマに,実務においては,シーケンス制御の範囲にとどまらない広い知識や経験が必要とされることを学びます。最後のadvanceでは,物流管理で製品の流れを追跡するためのヒントと,少し高度なテクニックについて考えます。
 本書は既刊の“PCシーケンス制御”を骨格にして新しく編成しました。ねらいは,シーケンサを利用する“シーケンサ制御”をはじめて手がける各種の技術者,あるいは高等学校や専門学校生がシーケンサ制御の実務に従事しようとする際,誰もが経験するわかりにくいところを,スムーズに解きほぐしながら解決していくことです。このねらいが本書を手にしたみなさんの努力と少しの辛抱によって十分に達せられ,シーケンサにはじめて接する学生諸君や現場の技術者の実務に,少しでも役立つことを願っています。
 おわりに,本書の刊行に際し東京電機大学出版局編集課 石沢岳彦氏にご尽力いただきました。ここに記して,深く感謝の意を表します。

2014年12月

CASテクノロジー研究所
吉本久泰


目次

第1章 シーケンサはどのような制御機器か
 1.1 シーケンサの正体
 1.2 シーケンサ制御装置
 1.3 シーケンサ制御の利点
 1.4 第1章のトライアル
 《ミニ解説》a接点とb接点
第2章 シーケンサの仕様とプログラム処理
 2.1 シーケンサの内部構成とカタログの読み方
 2.2 シーケンサの動作とプログラム処理
 2.3 プログラミング・ツールとプログラムの作成
 2.4 第2章のトライアル
第3章 シーケンサの入力回路と入力機器の接続法
 3.1 シーケンサの入出力部と入出力機器
 3.2 シーケンサの入力回路と入力機器の接続法
 3.3 第3章のトライアル
第4章 シーケンサの出力回路と出力機器の接続法
 4.1 シーケンサの出力回路と出力機器の接続法
 4.2 第4章のトライアル
第5章 入出力機器の割付けと使用上の注意
 5.1 入出力の割付け
 5.2 使用上の注意と対策
 5.3 第5章のトライアル
第6章 シーケンサのプログラム(基礎1)
 6.1 プログラム言語
 6.2 シーケンサの基本命令とプログラムの基本回路
 6.3 プログラムの重要回路
 6.4 第6章のトライアル
 《ミニ解説》安全な回路
第7章 シーケンサのプログラム(基礎2)
 7.1 シーケンサのタイマとカウンタ
 7.2 よく使う便利な命令
 7.3 第7章のトライアル
 《ミニ解説》プログラムのスキャン処理
第8章 プログラムの設計例(1)
 8.1 プログラムの設計例
 8.2 第8章のトライアル
第9章 プログラムの設計例(2)
 9.1 プログラムの設計例
 9.2 第9章のトライアル
 《ミニ解説》単相誘導電動機とリバーシブルモータ
第10章 プログラム演習(1)エレベータの運転プログラム
 10.1 制御仕様
 10.2 プログラム設計
 10.3 第10章のトライアル
第11章 算術演算とデータ処理
 11.1 データ形式
 11.2 算術演算の関連命令
 11.3 算術演算
 11.4 小数を含む計算例
 11.5 第11章のトライアル
第12章 プログラム演習(2)十字交差点の信号機制御
 12.1 制御対象の把握から
 12.2 信号機点灯制御の仕様書
 12.3 プログラム設計
第13章 Advanceフリーフローコンベア上の物流管理と仕分け
 13.1 フリーフローコンベア上の物流管理
 13.2 製品情報の発見と物流監視の方法
 13.3 仕 様
 13.4 プログラムの設計
 13.5 物流追跡の検証
トライアル解答
索引


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