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MATLAB/SimulinkによるCDMA

MATLAB/SimulinkによるCDMA

A5判 186ページ 並製
価格:2,750円 (消費税:250円)
ISBN978-4-501-32100-0(4-501-32100-8) C3055
奥付の初版発行年月:2000年03月 / 発売日:2000年03月中旬

内容紹介

 移動体通信システムは,アナログの周波数多元接続(FDMA)から,デジタルの時分割多元接続(TDMA)へと移行してきたが,これからのマルチメディア化とグローバル化に対応し得る次世代システムのホープとして期待が集まっているのは,高速デジタルの符号分割多元接続(CDMA)である。本書では MATLABを使ったシミュレーションを用いて,このCDMAを要素技術から解説する。

前書きなど

 アナログセルラー方式から始まった第1世代の公衆移動通信は,デジタルセルラー方式の導入により第2世代へ移行しつつある.さらに西暦2000年にはマルチメディアに対応した第3世代へ進展すると予想されている.第3世代の携帯電話システム「IMT-2000」では世界統一標準化が ITU(International Telecommunication Union)で行われており,世界各国の提案方式が競合している.特に重要となる無線アクセス方式には,音声ばかりでなくファックス,電子メール,コンピュータ間通信,静止画,動画などの様々なマルチメディア情報を伝送できる大容量伝送路と,移動網を経由したことを意識させない高品質伝送路の提供が必要である.これらの要求を満たす次世代方式の有力候補として,符号分割多元接続(CDMA: Code Division Multiple Access)が注目を集めている.IMT-2000に対する日本案はDS-CDMA(Direct Sequence CDMA)をベースとするW-CDMA(Wideband CDMA)方式にほぼ固まっている.
 CDMAは従来の通信システムにはない様々な技術を集めた複雑なシステムであるが,最も特徴的なものは「拡散符号」であると言える.この拡散符号を用いるがゆえ,FDMAやTDMAにはない様々な利点が生まれると同時に工夫も必要になる.それゆえCDMAの本質を理解するには,拡散符号の性質や役割を理解することが重要と言える.CDMAでは,「これ以上ユーザと接続できない」という,回線数の明確な上限が無い.FDMAやTDMAでは,回線数は設計段階において明確に固定的に決定され,それ以上のユーザを接続することはできない.これに対してCDMAでは,回線数が増加すると,通信品質は緩やかに劣化する.回線容量は通信路の状態および要求する通信品質に依存し,明確には求めることができない.しかしデータ誤りによる品質劣化は,誤り訂正符号により改善可能である.したがってCDMAシステムにおいては,誤り訂正符号が回線容量を増加するために重要である.
 CDMAでは拡散符号や誤り訂正符号の理解が重要になってくるわけだが,これらは「ガロア体理論」を中心とする,極めて数学色の濃い代数理論を基にしている.そのため,数学の専門家でないと理解が困難なところがあった.そこで本書では,アルゴリズム開発言語として世界的に普及している「MATLAB」と,そのオプションであるブロック線図シミュレータの「Simulink」を用いて,シミュレーションによって視覚を中心に拡散符号と誤り訂正符号の理論を確認し,それらがCDMAとどのように関わっているのかを解説することによりCDMAを理解することを試みた.MATLABをお持ちの読者においては,実際にシミュレーションできるよう,CD-ROMでプログラムを提供しているので是非試していただきたい.本書で用いているMATLABのバージョンは,R11.1(MATLAB 5.3.1/Simulink 3.0.1) である.
 本書の構成としては,前半がCDMA全般の技術と理論の解説とし,後半でMATLAB/Simulinkを用いて,前半の内容を,符号に重点に置いてシミュレーションを中心に確認している。また付録として,MATLAB/Simulinkの基本的な使用法を解説した.それぞれの執筆分担は以下のようである.
    第1章〜第4章:理論/概要編
        東京工業大学,真田幸俊
    第5章〜第7章:MATLAB/Simulinkによるシミュレーション編
        サイバネットシステム(株)
    付録:MATLAB/Simulinkの使用法の基本
        サイバネットシステム(株)
 サイバネットシステム(株)執筆分は、MATLAB技術部の石塚真一が中心となって執筆した。
 最後に本書を執筆するにあたり,東京工業大学情報工学科,荒木純道教授においては,ご多忙中にもかかわらず第一部の原稿を丹念にチェックして頂いた.また,東京電機大学出版局の植村八潮氏においては,出版までの間、多大なる励ましの言葉を頂いた.両氏に紙面を借りてお礼申し上げます.

2000年2月:著者ら記す


目次

1 移動体通信の発展動向
2 CDMAと拡散符号
3 CDMAの要素技術
4 次世代移動通信システム
5 通信システムシミュレーション環境
6 MATLABによる符号の取り扱い
7 システムのシミュレーション
付録1 MATLABの基本
付録2 Simulinkの基本


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