大学出版部協会

 

高速マイクロマウスの作り方

勝てるロボコン
高速マイクロマウスの作り方

B5判 194ページ 並製
価格:2,970円 (消費税:270円)
ISBN978-4-501-41510-5(4-501-41510-X) C3353
奥付の初版発行年月:2000年11月 / 発売日:2000年11月中旬

内容紹介

低予算で試合に勝つロボット作りのノウハウ解説

 各種ロボットコンテストが全国各地で開催され,工業高校や大学の学生のみならず,一般社会人にも人気がある。しかし,非常に高価な高性能部品やモータを使用しなければ試合に勝つことできなくなってしまった。
 本書は,低予算で試合に勝つためのロボットをつくるためのノウハウをやさしく解説。

前書きなど

 皆さんは“マイクロマウス”という小さなロボット知っていますか? また,“マイクロマウス”を作ろうと考えたことがありますか? 本書はこれからマイクロマウスを製作し,大会に参加する方々のために,マイクロプロセッサによるセンサ/モータなどのコントロールを中心として,メカトロニクス技術の基礎を理解しながら,マイクロマウスを作ることを目的として書いてあります。
 1998年初夏にロボットコンテストに関するホームページを開設しましたところ,思いのほかに反響があり,ロボットコンテストに興味をもつ高校生や大学生,専門学校生などからロボットを製作するにあたって多くの質問が寄せられました。
 質問の一部を紹介します。
 (1) メカトロニクス,ロボット技術について知りたい。
 (2) センサやモータに関する知識を得たい。
 (3) マイクロプロセッサの使い方を学びたい。
 (4) 部品の購入先を知りたい。
 (5) 学校には工作機械がないが,手作業でロボットを製作できないか。
 (6) コンパクトな基板を製作したいが,プリント基板を使用しないで高密度配線ができないか。
 (7) ロボットを安価に製作することはできないか。
 当初,質問にはE-Mailで回答するようにしておりましたが,メールを書くだけで多くの時間を費やし,いつのまにか業務に支障をきたすようになって苦しんでおりました。
 この頃,時期を同じくして東京電機大学出版局より“ロボフェスタ」に関するテキストを出版する話があったので,これまでの質問を踏まえ,ロボフェスタ出場を目的としたマイクロマウス・相撲ロボットなどの製作に関するテキストを書くことにさせていただきました。
 1980年代,マイクロプロセッサの普及と同時に“メカトロニクス技術”が大ブームとなり,多くの学校に“メカトロニクス科”や“電子制御機械科”などが生まれ,マイクロマウス大会もこの時期に開催されるようになりました。ところが,家電製品や自動車などにマイクロプロセッサを組み込むことがあたりまえになってしまった今日,“メカトロニクス”もあたりまえの技術として定着し,熱病のようなブームは去り“メカトロニクス技術」を教える学校は少なくなくなってしまいました。“メカトロニクス技術”はわが国の産業の基盤であり,学校教育としてなくてはならないもですが,このような教育環境が減ってしまったことはきわめて残念なことです。
 質問をいただいた多くの方は,マルチメディア・CG・ゲームプログラミング・インターネットなどを専攻する情報処理系の生徒や学生であり,次いで電子系,機械系でした。Cやアセンブリ言語には自信があるが,電子回路や機械は全く分からないという専門学校生,逆にフライス盤作業は誰にも負けないが,マイクロプロセッサなど見たこともない工業高校機械科の生徒などさまざまな顔ぶれです。メカトロニクス技術を学ぶための教育環境がなくなったのであるから,これらの質問は当然のことであり,知らないことは恥ではなく,また,勉強不足でもありません。
 本書ではこれらの高校生や大学生,専門学校生などを対象として,“もの作り”を主体としてメカトロニクス技術の基礎を解説すると同時に,“いかに安価にロボットを製作するか”ということに重点を置きました。(ただし,工作機械や高価な処理系などは学生には準備できません。学校の設備を拝借することにします。)
 製作にあたり,製作費4万円以内を目標とし,高価なモータやセンサを使用せず,安価に仕上げることを目標として設計してみることにしました。高価なDC サーボシステムやPSDなどの採用は社会人になってからでも遅くはないでしょう。
 ロボット製作とアマチュアロボットコンテストの意義を考えてみます。
 (1) 技術力アップにつながる。専門外の技術も自然に身につく。
 (2) 工夫する力が身につく。
 (3) 多くの異業種エンジニアと交流を深めることができる。
 (4) 製作の苦労に伴う達成感・充実感・自信。
 毎年,アマチュアロボットコンテスト上位入賞のロボットを見ていると,プロのエンジニアが設計製作したロボットが強いとは限りません。また,お金をかけたから優秀とも言い切れません。そこにアマチュアロボットコンテストの意義と面白さがあります。
 ロボット製作ははっきり言って3K(今や死語化した?)の極致ですが,その分,完成した時の充実感は途方もなく大きいものです。
 理工系離れが危惧される今日の状況にあって,アマチュアロボットコンテストに出場しようとする熱意のある若者を心から応援します。科学技術立国を国是とするわが国において,彼らが将来を支える原動力になることは間違いありません。
 21世紀は人工知能ロボットの時代です。家庭・医療・福祉などがその活躍の場となります。ロボット製作をトリガとして,21世紀の人工知能ロボット技術をリードするエンジニアを目指してください。
 最後になりましたが,本書の執筆にあたってお世話になりました東京電機大学出版局の植村八潮氏,石沢岳彦氏に厚く御礼申し上げます。

2001年10月 著者


目次

1 マイクロマウスとは
1.1 マイクロマウスとマイクロマウス競技
1.2 マイクロマウスのおもしろさ
1.3 全日本マイクロマウス大会
2 マイクロマウスの基礎知識
2.1 マイクロマウスのシステム構成
2.2 CPUとインタフェース
 2.2.1 マイクロマウスのコンピュータに要求される機能
 2.2.2 ワンチップマイコン各種
 2.2.3 ワンボードマイコン各種
2.3 モータとコントロール回路
  2.3.1 マイクロマウスのモータ
  2.3.2 ステッピングモータとコントロール回路
  2.3.3 姿勢制御(トリミング)
  2.3.4 姿勢制御(トリミング)の方法
2.4 フォトセンサと制御回路
  2.4.1 壁検出の方法
  2.4.2 フォトセンサの選び方
2.5 電 池
2.6 マイクロマウスのステアリングメカニズム
2.7 プログラム開発ツール
 2.7.1 プログラム開発/デバッグ法
 2.7.2 モニタプログラム
2.8 迷路探索アルゴリズム
3 ワンチップマイコンTMPZ84C015
3.1 TMPZ84C015の内部ブロック
3.2 PIO
 3.2.1 PIOの機能
 3.2.2 PIOの構成
 3.2.3 PIOのコントロール
3.3 CTC
  3.3.1 CTCの構成
  3.3.2 CTCのモード
  3.3.3 CTCのコントロール
3.4 SIO
  3.4.1 マイクロマウスとシリアルインタフェース
  3.4.2 SIOの機能
  3.4.3 SIOによるモデムインタフェース
  3.4.4 SIOの割り込み
  3.4.5 SIOのレジスタ
4 AKI-80と周辺回路のインタフェース
4.1 AKI-80の回路
4.2 AKI-80のメモリ構成
4.3 AKI-80と周辺回路接続例
 4.3.1 センサコントロール回路
 4.3.2 ステッピングモータコントロール回路
 4.3.3 コンソール入出力のインタフェース
5 マイクロマウスの製作
5.1 仕 様
5.2 回路/機構
5.3 製作に必要な機械,機器,工具
5.4 材料,部品
5.5 モニタROM
5.6 CPU,I/O,センサコントロールボードの製作
5.7 モータコントロールボードの製作
5.8 メカニズムの製作
 5.8.1 モータシャフトの加工
 5.8.2 ホイールとタイヤ加工,組み立て
 5.8.3 シャシの加工
5.9 電池パックの製作
5.10 組み立てと調整
5.11 検 査
6 マイクロマウスのプログラム
6.1 プログラム
6.2 コンパイル
6.3 プログラムの転送と実行  
付  録
1. マイクロマウス競技規定
2. 全日本マイクロマウス大会記録
3. 大会主催者/メーカー
索  引


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