大学出版部協会

 

情報検索とエージェント

インターネットの知的情報技術
情報検索とエージェント

A5判 144ページ 並製
価格:1,980円 (消費税:180円)
ISBN978-4-501-53440-0(4-501-53440-0) C3004
奥付の初版発行年月:2002年03月 / 発売日:2002年03月上旬

内容紹介

知識処理の第一線の研究者がわかりやすく解説

 インターネットにおける情報検索・情報統合の内部的なメカニズムを明らかにして,そこに利用されている知的情報工学やAIの技術について解説した一冊.インターネットがはらむ本質的な課題,それに対するAIをはじめとする知的処理の取り組み,インターネットの今後の進化について,知的処理の第一線の研究者がわかりやすく論じる.

前書きなど

 現在わが国において,ビジネスマンやエンジニア,研究者はもとより,中高校生から主婦にいたる多くの人々が,パソコンや携帯電話を使って,電子メールを頻繁にやり取りし,WWWのページを閲覧している.今後も通信インフラのさらなる整備とともに,インターネットの普及はますます進んでいくと考えられ,もはやインターネットなしの生活など考えられないという状況に至るかもしれない.このように普及しつつあり,今後もさらに普及するであろうインターネットであるが,その利用形態が一般ユーザにとって十分使いやすいものになっているかどうかは,大いに疑問が残るところである.
 例えば,WWWのサーチエンジンによるWebページの検索を考えてみよう.優秀と言われるサーチエンジンを実際に使ってみるとよくわかることだが,さまざまな検索目標にたいして,サーチエンジンが返してくるヒットリストの上位に,欲しいWebページを1回の検索で見つかるようにすることは必ずしも容易なことではない.なぜなら,そのようなことを実現するには,ユーザは自分の欲しいWebページを的確に表すキーワードを考える必要があり,さらには,サーチエンジンの検索メカニズムをある程度理解している必要があるからである.このような問題に対応するには,対話的にユーザの検索要求を引き出したり,検索要求を学習するメカニズム,またユーザの嗜好によってクエリを補完するメカニズムなどが必要になってくる.このようなメカニズムは,人工知能をはじめとする知的情報処理の得意分野であり,その応用が大きく期待できる.
 また,別の例として,主に携帯電話に対して,商品案内やさまざまな勧誘の電子メールを大量に送りつける迷惑メールがあげられる.これらの迷惑メールは,本来は人間がその内容を見れば簡単にそれであると判断して,削除できるメールであるにも関わらず,それらを迷惑メールと判断して取り除くフィルタリング技術が確立していない.したがって,現在の迷惑メール対策は,簡単には推定できないようなメールアドレスに変更するという対症療法的な対応にとどまっている.
 これらの問題は,巷に溢れているインターネットの技術,例えば,HTML,XMLなどのWebページ記述言語,通信プロトコル,サーバの構築などの技術とは本質的に別の問題であり,通信される情報のコンテンツに関する問題である.そして,これらを処理するには,人工知能を初めとする知識処理の技術が必要なことは明らかである.
 本書「情報検索と統合の技術」は,このような背景から,「インターネットの知的情報技術シリーズ」の要素技術編として,わが国における知識処理の第一線の研究者により,インターネット時代で生じる様々な課題とそれらに対する知識処理の適用について書かれたものである.一般のビジネスマンや文系の大学生などのインターネット初学者にもできるだけ直観的に理解できるように,具体的な方法を豊富な応用例を基にしてわかりやすく書くように心がけたつもりである.よって,読者はインターネットに関するごく基本的な知識さえあれば,本書を読むことにより,現在における本質的な課題,それに対する人工知能をはじめとする知的処理の取り組み,そして,今後インターネットが進んでいく方向を把握することができるだろう.
 河野浩之(京都大学)による第1章「Web時代の情報検索」は,インターネット上の情報検索の核となっているサーチエンジンの技術解説である.従来のデータベースや情報検索技術との関連,サーチエンジンの構造や性能比較,そしてデータマイニング技術の利用法とともに,河野氏自身が開発したサーチエンジン『問答』に関する解説が行われている.
 山田誠二(東京工業大学)による第2章「情報収集エージェント」は,インターネット上から利用者の代わりに情報収集や抽出を行うエージェント技術に関する解説である.現在のサーチエンジンは利用者のキーワード入力に対して,それに該当するWebページのリストを返してくれるだけである.情報収集エージェントは得られたリストからWebページを収集し,さらに利用者が必要とする情報や知識をその中から抽出することを(半)自動的に行ってくれる.
 北村泰彦(大阪市立大学)による第3章「WWW情報統合」は,インターネットに分散している複数の情報源からの異種情報やデータを統合して利用者に提供するシステムに関する解説である.ここではWebページの構造に着目して情報抽出するプログラミング言語,メディエータやオントロジを用いて異種情報を統合するデータベース技術,情報統合をプランニングするマルチエージェントシステムに関する解説が行われている.
 高橋克巳(NTT)による第4章「モバイル情報検索」は,利用者が動きまわることを前提とした情報検索技術に関する解説である.携帯電話,携帯端末,カーナビゲーションシステムなどが普及するにつれ,その上でのインターネット情報検索に対する要求も急速に増加している.本章ではモバイル情報検索の歴史を振り返った後,モバイル情報検索を支える技術を,モバイルインターネットアクセス技術と位置情報処理技術の両面から解説を行っている.さらに著者らが行っている実験プロジェクトについても紹介している.
 さて,本シリーズは関西文化学術研究都市けいはんなプラザにおける学術交流の一環として行われた知的情報統合研究会の活動を通して生まれたものである.この研究会を積極的に支援していただいた株式会社けいはんなの皆様にこの場を借りてお礼申し上げます.最後に,本書において,図や表の引用に快く応じて頂いた多くの研究者の方々にお礼を申し上げます.

2002年2月
著者らしるす


目次

第1章 Web時代の情報検索
第2章 情報収集エージェント
第3章 WWW情報統合
第4章 モバイル情報検索
参考文献
用語集


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