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― スイスと西南ドイツの人格的支配宗教改革と農奴制

宗教改革と農奴制 ― スイスと西南ドイツの人格的支配

A5判 528ページ 上製
価格:7,700円 (消費税:700円)
ISBN978-4-7664-2060-9 C3022
奥付の初版発行年月:2013年07月 / 発売日:2013年07月下旬

内容紹介

身分制社会秩序の根拠に迫る実証的研究。

▼1517年、ルターの『九五箇条の提題』を契機として始まった宗教改革運動は、腐敗した教会に厳しい批判を投げかけるとともに、聖書そのものに立ち戻ることを訴え、またたくまにヨーロッパ全土に広がった。この運動は、人々を良心の自由、宗教上の内面的自由に目覚めさせ、近代への扉を開く重要な契機になったと位置づけられている。しかし、この運動の影響下に闘わされた農民戦争にも拘らず、農奴たちの解放は「啓蒙の18世紀」を俟たねばならなかった。それはなぜなのか。本書は、神学と農奴解放思想とのかかわりを思想史的に検討し、国制史、社会史研究の観点から農奴制の実態を実証的に明らかにすることで、近代ヨーロッパ成立の根幹に位置するこの問題に答える、重厚な研究書である。


目次

序論

第1編 農奴制をめぐる思想史的研究

 第1章 宗教改革期における平民の農奴制観とその思想的背景
  はじめに
  第1節 近世におけるスイスと西南ドイツの農村の一般的状況と農奴
      制の役割
  第2節 「古き法」に基づく抗議
   (1)農奴制全般に関わる訴え
   (2)農奴制に由来する個別的な問題に関わる訴え
  第3節 「神の法」に基づく抗議
   (1)農奴制全般に関わる訴え
   (2)農奴制に由来する個別的な問題に関わる訴え
  第4節 その他の抗議
   (1)農奴制全般に関わる訴え
   (2)農奴制に由来する個別的な問題に関わる訴え
  おわりに

  補論 近世スイスにおける自由の概念
  はじめに
  第1節 農民戦争期におけるスイスの状況
  第2節 諸抗議書における自由
   (1)宗教的な自由
   (2)人格的な自由
   (3)経済的な自由
   (4)共同体自治に関する自由
  おわりに
 
 第2章 中世カトリック教会と農奴制
     ―アウグスティヌスとトマス・アクィナスの奴隷制論を例にし
      て―

  はじめに
  第1節 アウグスティヌス以前の奴隷制肯定論
   (1)古代ギリシアの奴隷制肯定論
     A アリストテレス以前の奴隷制肯定論
     B アリストテレスの自然奴隷説
   (2)原始キリスト教と奴隷制
  第2節 アウグスティヌス著『神の国』に見る奴隷制理解
   (1)アウグスティヌスの社会思想概観
   (2)アウグスティヌスの奴隷制観
  第3節 トマス・アクィナス著『神学大全』に見る奴隷制理解
   (1)トマス・アクィナスの社会思想概観
   (2)トマス・アクィナスの奴隷制観
  おわりに

 第3章 宗教改革者と農奴制
     ―ウルバヌス・レギウスを中心として―
  はじめに
  第1節 ウルバヌス・レギウスの生涯
  第2節 ウルバヌス・レギウスの農奴制論
  第3節 他の宗教改革者との比較
  おわりに

 第4章 スイス再洗礼派と農奴制
     ―ベルンの二つの討論会について―
  はじめに
  第1節 ベルンの宗教改革の経過と再洗礼派の活動
  第2節 ハンス・プフィスターマイヤーとの宗教討論(一五三一年)
  第3節 ツォフィンゲンでの再洗礼派との宗教討論(一五三二年)
  おわりに

 第5章 エラスムスと人格の自由
     ―『キリスト者の君主の教育』を中心として―
  はじめに
  第1節 『キリスト者の君主の教育』の成立背景とその史料的特質
  第2節 『キリスト者の君主の教育』に見られる政治・社会思想
   (1)第1章の内容
   (2)第2章から第11章の内容
  第3節 『キリスト者の君主の教育』における農奴制批判とエラスム
      スの平民観
  おわりに

第2編 領邦国家形成と農奴制

 第1章 中近世におけるベルン領の農奴制問題について
     ―フリーニスベルクとミュンヘンブッフゼーを中心にして―
  はじめに
  第1節 中世後期におけるベルン領の地域的特性と農奴制の機能
  第2節 フリーニスベルク修道院領の農奴制問題
  第3節 ミュンヘンブッフゼーの農奴制問題
  第4節 一五二五年の農民戦争期におけるベルンの農奴制問題
  おわりに

 第2章 近代初期におけるゾーロトゥルンの農奴制問題について
  はじめに
  第1節 一六世紀初頭までのゾーロトゥルン史の概略と農奴制の特徴
  第2節 一五一三/一四年の農民反乱
  第3節 一五二五年の農民戦争とその後
  おわりに

 第3章 近代初期におけるチューリヒの農奴制問題について
     ―ドイツ農民戦争期(一五二五年)を中心にして―
  はじめに
  第1節 一六世紀初頭までのチューリヒ史の概略と農奴制の特徴
  第2節 チューリヒでのドイツ農民戦争の経過
  第3節 農奴制問題に関する農民たちの抗議内容
  第4節 聖職者たちの助言と市参事会の対応
  おわりに

結論
付録 史料の邦訳と解説
フィリップ・メランヒトン著『農民の「一二箇条」に反駁して』(一五二五年)

あとがき
初出論文一覧

索引
 事項
 人名・家名
 地名

参考文献目録
 Ⅰ 欧文文献目録
 Ⅱ 邦文文献目録

 ≪地図一覧≫
  地図1 一七世紀後半のスイス盟約者団の概況
  地図2 一四五〇年頃のベルン領
  地図3 一五ニ七年のゾーロトゥルンの諸代官区
  地図4 チューリヒ領の拡大


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