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髙梨兵左衛門家の研究醤油醸造業と地域の工業化

醤油醸造業と地域の工業化 髙梨兵左衛門家の研究

A5判 616ページ 上製
価格:7,480円 (消費税:680円)
ISBN978-4-7664-2349-5 C3033
奥付の初版発行年月:2016年06月 / 発売日:2016年06月下旬
発行:慶應義塾大学出版会  
発売:慶應義塾大学出版会
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内容紹介

日本最大の醬油産地 野田の最有力醸造家に関する初の総合研究
 
一業専心的な醬油醸造家・資産家として髙梨家が果たした
地域社会への貢献、地域の工業化や関東市場との関わりを、
3万点に及ぶ史料から明らかにする。


▼新史料から読み解く野田の醬油醸造業と地方資産家 髙梨家。

 本書は、日本最大の醬油産地である野田の醬油醸造業について、最有力の醬油醸造家の一つであり地方資産家ないし事業家であった髙梨兵左衛門家の江戸中期から20世紀始めにかけての3万点に及ぶ史料を元に、野田が日本最大の産地に成長した過程と、髙梨家が地域の経済や社会にいかに貢献し、関東市場といかなる関わりを持ったかを明らかにし、醬油醸造業史研究、地方資産家研究の中に位置づけるものである。
 近年、経営史・産業史分野では衣料・食など「生活」に関わる研究に関心が向けられつつあり、本書はその意味でも注目されると考えられる。

著者プロフィール

井奥 成彦(イオク シゲヒコ)

1957年生まれ 明治大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得退学
博士(史学)
現在 慶應義塾大学文学部教授
主要著書 『醬油醸造業史の研究』(共著、吉川弘文館、1990年)
『東と西の醬油史』(共著、吉川弘文館、1999年)
『19世紀日本の商品生産と流通』(日本経済評論社、2006年)

中西 聡(ナカニシ サトル)

1962年生まれ 東京大学大学院経済学研究科第2種博士課程単位取得退学
博士(経済学)
現在 慶應義塾大学経済学部教授
主要著書 『産業化と商家経営』(共編著、名古屋大学出版会、2006年)
『海の富豪の資本主義』(名古屋大学出版会、2009年)
『近代日本の地方事業家』(共編著、日本経済評論社、2015年)

上記内容は本書刊行時のものです。

【監修者】
公益財団法人髙梨本家(上花輪歴史館)

【編著者】
井奥 成彦(いおく・しげひこ) 〈序章・第Ⅰ部のねらい・第11章・終章〉
 現在 慶應義塾大学文学部教授

中西 聡(なかにし・さとる) 〈序章・第Ⅱ部のねらい・第9章・第12章・終章〉
 現在 慶應義塾大学経済学部教授

【執筆者】(執筆順)
髙梨節子(たかなし・せつこ)〈序章〉
 1942年生まれ
 慶應義塾大学経済学部卒業
 現在 上花輪歴史館副館長

石井寿美世(いしい・すみよ)〈第1章〉
 1976年生まれ
 慶應義塾大学大学院経済学研究科後期博士課程単位取得退学
 現在 大東文化大学経済学部専任講師

石崎亜美(いしざき・あみ)〈第2章〉
 1986年生まれ
 慶應義塾大学大学院文学研究科修士課程修了
 現在 国立公文書館職員

谷本雅之(たにもと・まさゆき)〈第3章〉
 1959年生まれ
 東京大学大学院経済学研究科第2種博士課程単位取得退学
 博士(経済学)
 現在 東京大学大学院経済学研究科教授

天野雅敏(あまの・まさとし)〈第4章〉
 1948年生まれ
 神戸大学大学院経済学研究科博士課程単位取得退学
 経済学博士
 現在 岡山商科大学経営学部教授、神戸大学名誉教授

花井俊介(はない・しゅんすけ)〈第5章〉
 1958年生まれ
 東京大学大学院経済学研究科第2種博士課程単位取得退学
 現在 早稲田大学商学学術院教授

前田廉孝(まえだ・きよたか)〈第6章〉
 1985年生まれ
 慶應義塾大学大学院経済学研究科後期博士課程単位取得退学
 博士(経済学)
 現在 西南学院大学経済学部准教授

桜井由幾(さくらい・ゆき)〈第7章〉
 1940年生まれ
 東京大学大学院人文科学研究科博士課程中退
 元総合女性史研究会事務局長

森 典子(もり・のりこ)〈第8章〉
 1934年生まれ
 千葉県立野田高等学校卒業
 野田醬油株式会社(現キッコーマン株式会社)を経て、
 現在 上花輪歴史館学芸員

岩淵令治(いわぶち・れいじ)〈第10章〉
 1966年生まれ
 東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了
 博士(文学)
 現在 学習院女子大学国際文化交流学部教授

豊田美佐子(とよだ・みさこ)〈巻頭資料作成〉
 1976年生まれ
 日本女子大学文学部卒業
 現在 上花輪歴史館学芸員

目次

巻頭言(髙梨兵左衛門)

凡例
地図 一九一六年頃の千葉県北部周辺図
髙梨家略系図
資料1 野田町蔵図
資料2 髙梨家屋敷絵図
資料3 髙梨家江戸・東京向け出荷商標

序章 近代日本資本主義と醬油醸造業(井奥成彦・髙梨節子・中西 聡)
 第1節 醬油醸造業史の研究史と本書の課題
 第2節 髙梨兵左衛門家の歴史
 第3節 髙梨兵左衛門家の資産規模と野田地域経済の概観

第Ⅰ部 髙梨家の醬油醸造
 第Ⅰ部のねらい(井奥成彦)

第1章 髙梨家の経営理念 ―― 家訓とその特質(石井寿美世)
 はじめに
 第1節 髙梨家における四種の家訓
 第2節 一八一八年「條目之事」 ―― 二四代兵左衛門(順信)
 第3節 一八四二年「規則」 ―― 二五代兵左衛門(忠学)
 第4節 一八四五年「規則」 ―― 二五代兵左衛門(忠学)
 おわりに

第2章 近世における醬油生産と取引関係(石崎亜美)
 はじめに
 第1節 髙梨家の醬油販売
 第2節 髙梨家の印
 第3節 御用醬油と髙梨家のブランド力
 第4節 問屋の要望
 おわりに

第3章 醬油醸造業における雇用と労働(谷本雅之)
 はじめに
 第1節 雇用労働者の構成
 第2節 賃金水準と労働移動
 第3節 労働力の調達と給源
 おわりに

第4章 明治後期・大正初期における醬油醸造経営とその収支
(天野雅敏)
 はじめに
 第1節 髙梨家「店卸帳」と損益の動向
 第2節 醬油醸造業の利益率の動向を規定した要因
 第3節 醬油の販路と醬油価格の動向
 おわりに ―― 野田醬油株式会社の設立と髙梨家

第5章 明治後期・大正初期における醬油生産の構造
―― 各蔵の特徴と機能(花井俊介)
 はじめに
 第1節 出蔵・続蔵の生産構造
 第2節 元蔵の生産構造
 第3節 辰巳蔵の生産構造
 第4節 醬油市場と蔵別の製品供給構造
 第5節 販売戦略と生産の動向
 おわりに

第6章 近代における原料調達
―― 交通インフラ整備の進展と原料産地の変化(前田廉孝)
 はじめに
 第1節 原料の調達量・価格
 第2節 大豆の調達
 第3節 小麦の調達
 第4節 食塩の調達
 おわりに

第Ⅱ部 髙梨家と関東の地域経済
 第Ⅱ部のねらい(中西 聡)

第7章 髙梨家の醬油醸造業と上花輪村周辺地域
―― ・絞袋などを中心に(桜井由幾)
 はじめに
 第1節 もう一つの原材料、
 第2節 上花輪村周辺の状況
 おわりに

第8章 髙梨家の江戸店「近江屋仁三郎店」の成立と展開(森 典子)
 はじめに
 第1節 江戸店成立の気運と醬油酢問屋の状況
 第2節 近江屋仁三郎店の経営
 おわりに

第9章 近代期の髙梨(近江屋)仁三郎店と東京醬油市場(中西 聡)
 はじめに
 第1節 近代期の髙梨(近江屋)仁三郎店
 第2節 髙梨仁三郎店の取引動向
 第3節 東京醬油会社と野田醬油醸造家
 第4節 髙梨本店・本家にとっての髙梨仁三郎店
 第5節 野田醬油株式会社設立後の髙梨東京勘定方
 おわりに

第10章 江戸・東京の酒・醬油流通 ―― 生産者から消費者へ
(岩淵令治)
 はじめに
 第1節 高崎屋と髙梨家
 第2節 醬油酢問屋・地廻り酒問屋の業態
 第3節 仲買・小売の業態
 おわりに

第11章 髙梨家醬油の地方販売の展開(井奥成彦)
 はじめに
 第1節 江戸(東京)売と地方売の変遷
 第2節 地方の販売先についての分析
 おわりに

第12章 近代髙梨家の資産運用と野田地域の工業化(中西 聡)
 はじめに ―― 醬油醸造家の資産運用と地域の工業化
 第1節 髙梨家の資産運用 ―― 有価証券投資を中心として
 第2節 髙梨家と野田商誘銀行
 第3節 野田醬油醸造業の近代化
 おわりに ―― 野田醬油醸造産地の競争力

終章 総括と展望(井奥成彦・中西 聡)
 第1節 醬油醸造家としての髙梨兵左衛門家
 第2節 地方資産家としての髙梨兵左衛門家
 第3節 地方資産家と地域の工業化

あとがき
図表一覧
索引


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