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多文化「共創」の実践者たちいのちに国境はない

いのちに国境はない 多文化「共創」の実践者たち

四六判 248ページ 並製
価格:2,200円 (消費税:200円)
ISBN978-4-7664-2393-8 C0036
奥付の初版発行年月:2017年02月 / 発売日:2017年02月下旬
発行:慶應義塾大学出版会  
発売:慶應義塾大学出版会
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内容紹介

▼一国主義に未来はない

▼多文化が進む日本と日本人
 「日本人」と聞いて、みなさんは、どんな人を思い浮かべますか?
 いま注目されているのは、「日本人の多文化」です。日本国籍取得者の増加だけでなく、海外で育った日本人や国際結婚で生まれた子どもも成長し、多言語・多文化家族が増えています。
 「義務教育機会確保法」制定をはじめ法制度改革も動き出し、国や自治体、企業、市民セクター、医療機関、教育機関の連携が進んでいます。
 多様なルーツをもつ住民同士が互いに支え合い、安全で豊かな社会を創る……そんな「多文化社会のセカンド・ステージ」が始まろうとしています。

▼ケアの実践こそが、平和な暮らしを守る
外国人住民の受け入れ拡大や東京オリンピック・パラリンピックの開催などを契機に、日本でも多様なルーツをもつ人々がさらに増え、私たちの身近なパートナーになるでしょう。
一方、こうした変化に対し、テロや犯罪の増加を心配する声もあります。しかし、教育・住居・就業・医療などライフサイクルを通じた<共創>こそが、社会的リスクを回避するカギを握っています。いま、日本に必要なのは、多文化化のリスクを熟知し、「共創」の果実を社会に届けられる「いのちのケア」の「実践者」たちなのです。
ぜひ、皆さんも本書に登場する「実践者」たちの「現場」からの声に耳を傾けてください。

著者プロフィール

川村 千鶴子(カワムラ チズコ)

大東文化大学環境創造学部教授、博士(学術)
慶應義塾大学商学部卒業、多文化教育研究所所長、大東文化大学環境創造学部助教授を経て、2009年より現職(2013~15年、同学部長)。移民政策学会理事、日本オーラル・ヒストリー学会理事など歴任。
主要業績に、『多文化「共創」社会入門 ―― 移民・難民とともに暮らし、互いに学ぶ社会へ』(共編著、慶應義塾大学出版会、2016年)、『パスポート学』(共著、北海道大学出版会、2016年)、『多文化都市・新宿の創造 ―― ライフサイクルと生の保障』(慶應義塾大学出版会、2015年)、『多文化社会の教育課題 ―― 学びの多様性と学習権の保障』(編著、明石書店、2014年)、『オセアニア学』(共著、京都大学学術出版会、2009年)など多数。

上記内容は本書刊行時のものです。

【執筆者】
チョウ チョウ ソー(Kyaw Kyaw Soe)
 NHK国際放送「ラジオ日本」ビルマ語アナウンサー
増田 隆一(Ryuichi Masuda)
 フリー・ジャーナリスト、情報メディア社会学研究者
下川 進(Susumu Shimokawa)
 NHK国際放送局チーフディレクター
ダニエーレ・レスタ(Daniele Resta)
 大東文化大学環境創造学部助教、博士(日本言語文化学)
関口 明子(Akiko Sekiguchi)
 公益社団法人国際日本語普及協会(AJALT)理事長
関本 保孝(Yasutaka Sekimoto)
 元夜間中学教諭
椙本 歩美(Ayumi Sugimoto)
 国際教養大学基盤教育助教、博士(農学)
土田 千愛(Chiaki Tsuchida)
 品川女子学院教諭、東京大学大学院国際社会科学研究科博士課程
荻野 政男(Masao Ogino)
 株式会社イチイ代表取締役、公益財団法人日本賃貸住宅管理協会理事
市橋 和彦(Kazuhiko Ichihashi)
 株式会社ブリッジマン代表取締役、マーケティング・コンサルタント、
 MBA(ミシガン州立大学経営管理大学院)
柴崎 敏男(Toshio Shibazaki)
 NPO法人国際社会貢献センター(ABIC)プロジェクト・スタッフ
冨田 茂(Shigeru Tomita)
 高田馬場さくらクリニック院長、医学博士
マ テン テン ウ(Ma Thin Thin Oo)
 医療通訳者、高田馬場さくらクリニック勤務
塩田 渡留侍(Dorjee Shiota)
 作業療法士、医療通訳者
堀 成美(Narumi Hori)
 国立研究開発法人国立国際医療研究センター国際診療部医療コーディネーター
 (看護師) / 感染症対策専門職

目次

序 章 いのちを守りたい! / 川村 千鶴子

 第Ⅰ部 越境のすすめ
第1章 グローバル市民として生きる / チョウ チョウ ソー
 はじめに
 1 本屋さんが憩いの場
 2 建築現場で働く
 3 レストランの起業
 4 ジャーナリストとして
 5 教育に目を向ける
 おわりに

第2章 僕がパリの外国人だったころ / 増田 隆一
 はじめに ―― 異国で暮らす
 1 パリの日本人コミュニティ
 2 フランスの公共サービス
 おわりに

第3章 「多文化共創」は、辺境にこそあり!
―― 北の島サハリンで考えたこと / 下川 進
 はじめに ―― 辺境に行ってみよう!
 1 すぐそこにある不思議な島、サハリン
 2 注目! コリア系サハリン人
 3 領土問題の最前線ではあるけれど……
 4 ここはかつて戦場だった
 おわりに ―― 厳しい現実を超えて

第4章 映画から学ぶ移民とダイバーシティ
―― 映像メディアのパワーと役割 / ダニエーレ・レスタ
 はじめに ―― 映画はなぜパワフルなのか
 1 映像メディアの社会的役割
 2 映画に見る移民とダイバーシティ
 3 移民映画で地域交流!?
 おわりに

 第Ⅱ部 主体性と多様性の学びが未来を拓く
第5章 外国にルーツをもつ子どもたちへの日本語教育
―― JSL教師の育成と支援を!/ 関口 明子
 はじめに
 1 日本の難民受け入れ
 2 難民への日本語教育
 3 外国にルーツをもつ子どもたちへの日本語支援
 4 JSL教師の育成と支援を!
 おわりに

第6章 夜間中学でいつでも誰でもどこでも基礎教育を!
―― 義務教育機会確保法成立までの道程 / 関本 保孝
 はじめに
 1 学習権が基本的人権を守る
 2 多様化する夜間中学生
 3 夜間中学での取り組み
 4 すべての人に義務教育を!
 5 政府が動き始めた
 6 基礎教育保障学会の設立
 おわりに――義務教育機会確保法が成立

第7章 地域に根ざした大学のグローバル教育
―― 秋田からの挑戦 / 椙本 歩美
 はじめに――農山村の多文化空間
 1 国際教養大学の多文化共生キャンパスライフ
 2 地域に根ざしたグローバル教育を創る
 おわりに――秋田が世界とつながるとき

第8章 庇護申請中の子どもたちと学び合う
―― 多様性を認め合う学校 / 土田 千愛
 はじめに
 1 庇護申請者とは
 2 庇護申請中の子どもたちの生活実態
 3 多様性を尊重する企画づくり
 おわりに

 第Ⅲ部 まちも会社も活性化する「多文化共創」思考
第9章 多文化対応で住まい探しのお手伝い
―― 不動産屋が担う、まちのグローバル化 / 荻野 政男
 はじめに
 1 海外渡航が仕事のきっかけに
 2 住まいの情報を集めて回る
 3 外国人向け賃貸事業を始める
 4 グローバル化は不動産会社から
 5 多文化スタッフによる「外国人サポートセンター」
 おわりに

第10章 多様性を生かせば経営が変わる
―― 多文化共創という理念と実際 / 市橋 和彦
 はじめに
 1 多文化共創マーケティングが役立つ
 2 マーケティングの原点は相手の心を理解して好きになってもらうこ
   と
 3 試作品の完成度が重要なポイントになる
 4 「利他ファースト」に徹したマーケティングを実施
 5 「あったらぜひ欲しい」を発見する
 6 20歳までに多文化と接する
 おわりに――多文化共創マーケティングのまとめと提言

第11章 在日ブラジル人児童の心の支援
―― 外国につながる子どもたちの「育てられる権利」を守る /
柴崎 敏男
 はじめに ―― 子どもたちは今
 1 子どもの育てられる権利
 2 正常な生育とは?
 3 在日ブラジル人支援とそこから見えてきたもの
 4 外国人児童生徒の障害発現率問題
 5 外国人児童のなかの発達障害の割合は本当に高いのか
 6 特別支援学級
 7 これからの子どもの支援 ―― せんだんは双葉より芳し
 おわりに

 第Ⅳ部 いのちに国境はない
第12章 多文化スタッフが担うチーム医療
―― まちの多文化クリニックの試み / 冨田 茂
 はじめに――クリニックの成り立ち
 1 言葉の問題
 2 医療費と制度 ―― 外国人は医療費の支払いが困難なのか?
 3 生活の変化と医療
 4 病気の予防について ―― 健康診断
 5 障害の予防について ―― リハビリテーション
 おわりに

第13章 医療現場の多言語化を担う
―― 医療通訳という仕事 / マ テン テン ウ
 はじめに
 1 日本へ
 2 医療通訳者になる
 3 医療通訳者の仕事
 おわりに――クリニックのスタッフとともに

第14章 人のいのちに国境はない
―― 日本で作業療法士・医療通訳者として働きながら / 塩田 渡留侍
 はじめに
 1 医療と福祉を学びたい!
 2 プロになる!
 3 心と心、個性と個性で接する
 4 医療現場の多文化化
 おわりに

第15章 国際医療の現場と医療リテラシー
―― 地域で活躍するリーダーの育成 / 堀 成美
 はじめに
 1 「国際」病院に「国際」診療部ができた背景
 2 国際診療部と医療コーディネーター
 3 コミュニケーションに不可欠な医療通訳の手配
 4 医療通訳は誰のため?
 5 外国人患者が増えると未収金が増えるという誤解
 6 多様な文化についての学びと実践
 7 地域に伝えていくこと
 8 1点20円の重み
 おわりに

終 章 世界の混迷と危機を多文化共創のチャンスへ / 川村 千鶴子
 はじめに
 1 路地裏は多文化の宝庫
 2 10代のみなさんへ
 3 いのちの大切さを教えてくれた、あらゆる民族の助産訓練
 4 強制移動と平和のためのミュージアム
 5 老年期を迎えるとき
 おわりに ―― 多文化共創博物館

多文化共創の実践者から政府・自治体への7つの提言


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