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変革期の任命文書をめぐって朝鮮中近世の公文書と国家

九州大学人文学叢書5
朝鮮中近世の公文書と国家 変革期の任命文書をめぐって

A5判 282ページ 上製
価格:4,180円 (消費税:380円)
ISBN978-4-7985-0122-2 C3322
奥付の初版発行年月:2014年03月 / 発売日:2014年03月上旬

内容紹介

朝鮮中近世(おおむね高麗・朝鮮時代に相当/10世紀初から19世紀末)における重大な変革期のひとつとして,高麗が事元(モンゴルへの藩属)した13世紀半ばから,朝鮮王朝の基礎が整えられる15世紀初までの期間が挙げられる。「高麗事元期」「朝鮮初期」と称されるこの時期には,王氏高麗から李氏朝鮮への易姓革命が起こり,政治・社会・文化の各方面で深甚な変化が生じている。この影響は,当然,文書制度にも及んでおり,文書の有する様々な要素が大きく変貌を遂げた。このように,高麗事元期から朝鮮初期にいたる約二百年間は,朝鮮古文書の画期をなす重要な時期であるが,史料の制約からか,既往の研究では,この時期の文書に対する理解がそれほど深められてこなかった。
こうした朝鮮古文書学の研究状況に鑑み,本書では高麗事元期から朝鮮初期の任命文書をとりあげ,文書の性格を理解する上で最も基礎的な要素である,体系・体式・機能について検討することにした。任命文書は,他の種類の文書に比べて事例数が多く,通時的研究に格好の対象である。また,任命文書は王命のもとに作成・発給されるため,その文面は,王朝政府の権力関係や王の権威,為政者の政治思想をよく反映している。それゆえ,史料が少なく不明な部分が多い,当該時期の国家の制度や思想を考察する上で,非常に貴重な材料となるのである。
本書では,上に述べた問題関心のもと,高麗事元期から朝鮮初期における任命文書の体系・体式・機能を,新たな史料と分析方法に基づいて可能な限り深く掘り下げ,それによって,朝鮮中近世の任命文書制度の歴史的変遷を展望することを試みる。加えて,東アジア諸勢力(元・明・女真)との関係にも注意を払いつつ,当該時期における高麗・朝鮮王朝の制度や思想の解明に取り組むことにしたい。


目次

  凡例

序章
 
  一 朝鮮古文書研究の歩み
  二 朝鮮古文書研究の課題と本書の目的
  三 高麗・朝鮮時代の任命関連文書の概観と問題点
  四 本書の構成

第一章 『頤斎乱藁』辛丑日暦所載の高麗事元期から朝鮮初期の古文書  官教・朝謝文書の新事例  
 
  一 はじめに
  二 古文書の載録経緯と関連人物
  三 『頤斎乱藁』辛丑日暦所載古文書の分析
   (一) 官教
   (二) 禄牌
   (三) 朝謝文書
   (四) 尺文の可能性のある文書
   (五) 用途不明の文書
  四 おわりに

第二章 高麗事元期から朝鮮初期における任命文書体系の再検討
 
  一 はじめに
  二 先行研究に対する検討
   (一) 高麗・朝鮮時代の任命関連文書
   (二) 先行研究とその問題点
  三 高麗事元期の官教をめぐる諸問題
   (一) 「申祐官教」の真偽の検討
   (二) 官教の成立  元の宣との比較  
   (三) 官教発給の様相
  四 おわりに
  補論

第三章 朝鮮初期における官教の体式の変遷  頭辞と印章を中心として  
 
  一 はじめに
  二 朝鮮時代の官教
  三 頭辞の変遷
  四 印章の変遷
   (一) 朝鮮建国と「高麗国王之印」
   (二) 「国王信宝」と「朝鮮王宝」
   (三) 二種の「朝鮮国王之印」と「伝国宝」
   (四) 「国王行宝」の鋳造
   (五) 「施命之宝」の鋳造
   (六) 「王世子之印」と「施令之印」
   (七) 世祖の女真招撫の自制と「施命」
   (八) 「施命之宝」の新鋳
  五 おわりに
  補論

第四章 事元以後における高麗の元任命箚付の受容  「金天富箚付」の検討  
 
  一 はじめに
  二 「金天富文書」の内容検討
   (一) 「金天富文書」にみえる文言の検討
   (二) 「金天富箚付」にみえる官職の検討
   (三) 『金寧金氏世譜』元帥公事蹟所載文書について
   (四) 金天富の経歴と金寧金氏族譜の編纂
  三 元任命箚付と事元以後の高麗におけるその受容
   (一) 元の任命箚付
   (二) 事元以後の高麗における任命箚付の受容
  四 朝鮮初期における任命箚付の使用状況
   (一) 女真人に対する任命箚付および官教の発給
   (二) 済州人に対する任命箚付の発給
  五 おわりに

第五章 朝鮮初期における文武官妻封爵の規定と封爵文書体式の変遷
 
  一 はじめに
  二 『経国大典』文武官妻封爵の規定と封爵文書の体式
  三 高麗最末期における文武官妻封爵の規定と封爵文書
  四 朝鮮初期における文武官妻封爵規定の変遷
   (一) 太祖五年五月  建国直後の規定  
   (二) 太宗一七年九月  爵号の改称  
   (三) 世宗一二年四月  封爵形式の変化  
   (四) 世宗二一年閏二月  一品妻爵号の改称  
   (五) 『経国大典』外命婦条成立まで
  五 文武官妻封爵文書の体式の変遷
   (一) 「李和尚妻李氏封爵牒」の釈読
   (二) 文武官妻封爵文書の体式の変遷過程
   (三) 文武官妻封爵文書の分界線の変遷
  六 おわりに

終章

 主要参考文献

 初出一覧

 あとがき

 索引


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