小・中・高等学校でのプログラミング教育実践 問題解決を目的とした論理的思考力の育成
価格:2,420円 (消費税:220円)
ISBN978-4-7985-0267-0 C3037
奥付の初版発行年月:2019年09月 / 発売日:2019年09月中旬
インターネットを介した仮想空間と生活における現実空間が融合した新たな社会 (Society5.0) が始まろうとしています。それに伴って新しい社会に合わせた情報教育が社会的に必要となり、2020年度から学校教育においてプログラミング教育が必修化されます。これまで主に中学校の技術・家庭科 (技術分野) と高等学校の情報科で行われていたプログラミング教育ですが、これからは小学校から高等学校まで一貫した教育が行われます。本書は、小・中・高等学校を通したプログラミング教育実践を扱う最初の書籍であり、学校種や教科を超えた幅広い方々にとって必携の書です。
第Ⅰ部では総論として、小・中・高等学校でのプログラミング教育の背景と、学習指導要領改訂を踏まえた小・中・高等学校での情報教育の現状と将来について解説しています。
第Ⅱ部では小学校におけるプログラミング教育を取り上げます。プログラミング教育の位置付けや教育的意義、身につく資質・能力について概観し、情報科学と情報技術の観点から評価する方法を提案します。さらに2年生2件(算数、総合的な学習)、3年生1件(理科)、4年生1件(音楽)、5年生1件(社会)、6年生2件(算数、理科と総合的な学習)の実践例を紹介します。その中には、予算やセキュリティの観点からパソコンの導入が難しい学校でも参考にできる、パソコンを必要としない実践例も含まれています。
第Ⅲ部では中学校におけるプログラミング教育を取り上げます。小学校でプログラミング教育を受けてきた生徒たちに対してどのような教育をすべきなのか、教育の接続の要点を検討したうえで、様々な実践例が示されます。「計測・制御に関するプログラミング」3件、「ネットワークを利用した双方向性のあるコンテンツによるプログラミング」4件の実践例に加え、「生物育成の技術」と組み合わせた実践例も紹介します。
第Ⅳ部では高等学校におけるプログラミング教育を取り上げます。小学校、中学校におけるプログラミング教育の目的と、中学校と高等学校におけるプログラミング教育の歴史を押さえたうえで、中学校から高等学校へのプログラミング教育の接続における注意点を示します。次いでプログラミング教育を行ううえで押さえておくべきデータ構造の基礎知識を概観し、コミュニケーションツールを利用したプログラミング教育、ビッグデータを活用したプログラミング教育、情報セキュリティの暗号化を題材としたプログラミング教育など、多彩な実践例を紹介します。
第Ⅴ部ではプログラミングに関わる関連語彙を初心者の方向けに優しく解説しています。
一般社団法人日本産業技術教育学会 編(イッパンシャダンホウジンニッポンサンギョウギジュツキョウイクガッカイ)
菊地 章(きくち あきら)
鳴門教育大学大学院学校教育研究科教授
森山 潤(もりやま じゅん)
兵庫教育大学大学院学校教育研究科教授
上野耕史(うえの こうし)
国立教育政策研究所教育課程研究センター
研究開発部教育課程調査官
鹿野利春(かの としはる)
国立教育政策研究所教育課程研究センター
研究開発部教育課程調査官
山本利一(やまもと としかず)
埼玉大学教育学部教授
川島芳昭(かわしま よしあき)
宇都宮大学教育学部准教授
黒田昌克(くろだ まさかつ)
南あわじ市立松帆小学校教諭
村上綾香(むらかみ あやか)
伊勢崎市立あずま小学校教諭
本村猛能(もとむら たけのり)
日本工業大学共通教育学群教授
篠塚祐香里(しのづか ゆかり)
上尾市立鴨川小学校教諭
林 康成(はやし やすなり)
長野市立南部小学校教諭
村松浩幸(むらまつ ひろゆき)
信州大学学術研究院教育学系教授
桂本憲一(かつらもと けんいち)
松本市立開智小学校教諭
阪東哲也(ばんどう てつや)
鳴門教育大学情報基盤センター研究員
中村直哲(なかむら ただよし)
静岡市立麻機小学校教諭
尾﨑 誠(おざき まこと)
厚木市立荻野中学校教諭
紅林秀治(くればやし しゅうじ)
静岡大学教育学部教授
増田麻人(ますだ あさと)
調布市立第七中学校教諭
伊藤陽介(いとう ようすけ)
鳴門教育大学大学院学校教育研究科教授
※執筆順
下戸 健(しもと たけし)
福岡工業大学大学院工学研究科准教授
梅野貴俊(うめの たかとし)
福岡教育大学教育学部教授
原未希子(はら みきこ)
佐賀県立鳥栖高等学校教諭
平尾健二(ひらお けんじ)
福岡教育大学教育学部教授
保坂 恵(ほさか めぐむ)
新潟大学教育学部附属長岡中学校教諭
磯部征尊(いそべ まさたか)
愛知教育大学教育学部准教授
小島一生(こじま いっせい)
大町市立仁科台中学校教諭
鈴木隆将(すずき たかまさ)
信州大学大学院教育学研究科学生
白石正人(しらいし まさと)
福岡教育大学教育学部教授
水門博一(みと ひろかず)
みやま市立高田中学校教諭
阿部百合(あべ ゆり)
二松學舍大学附属柏中学校・高等学校教諭
鎌田高徳(かまだ たかなり)
神奈川県立茅ケ崎西浜高等学校教諭
長井映雄(ながい あきお)
和歌山県立和歌山高等学校教諭
大石智広(おおいし ともひろ)
神奈川県立生田東高等学校教諭
井手広康(いで ひろやす)
愛知県立小牧高等学校教諭
春日井優(かすがい ゆう)
埼玉県立川越南高等学校教諭
齋藤 実(さいとう みのる)
埼玉県立大宮高等学校教諭
武村泰宏(たけむら やすひろ)
大阪芸術大学芸術学部教授
南雲秀雄(なぐも ひでお)
新潟青陵大学福祉心理学部教授
大森康正(おおもり やすまさ)
上越教育大学大学院学校教育研究科教授
※ 執筆順
目次
小・中・高等学校でのプログラミング教育のために
第Ⅰ部 総論
第1章 小・中・高等学校でのプログラミング教育の重要性
1.社会の急速な情報化とそれに対応したプログラミング教育
2.情報に関わる学問体系の変化と情報教育の変化
3.教科における問題解決
4.条件付問題解決育成を伴ったプログラミング教育
第2章 プログラミング的思考とコンピュテーショナル・シンキング
1.はじめに
2.諸外国におけるプログラミング教育
3.プログラミング教育における思考力の育成
4.まとめ
第3章 小学校と中学校の情報教育の現状と将来
1.情報教育と情報活用能力
2.小学校における情報教育の現状
3.中学校における情報教育の現状
4.小・中学校における情報教育の将来
第4章 高等学校の情報教育の現状と将来
1.「情報科」新設から「情報Ⅰ」,「情報Ⅱ」まで
2.「情報Ⅰ」、「情報Ⅱ」の内容
3.将来に向けた動き
4.おわりに
第Ⅱ部 小学校におけるプログラミング教育
第1章 小学校におけるプログラミング教育の歩みと役割
1.はじめに
2.我が国の小学校におけるプログラミング教育の歩み
3.初等中等教育におけるプログラミング教育の教育的意義
4.プログラミング教育の効果
5.教育実践の結果から得られた初等中等教育におけるプログラミング教育の効果
6.発達段階に応じた指導過程の必要性
7.おわりに
第2章 小学校におけるアルゴリズム学習とその評価
1.はじめに
2.アルゴリズム学習と情報科学技術教育
3.おわりに
第3章 低学年児童のための学習アプリ開発を題材とした小学校プログラミング教育の実践
1.総合的な学習の時間における小学校プログラミング教育の実践
2.実践のデザイン
3.実践の対象者およびプログラミング環境
4.まとめと今後の課題
第4章 プログラミングを活用した加法・減法の計算の学習
1.算数科におけるプログラミング学習の概念
2.授業計画
3.活用教材
4.授業概要
5.調査
6.おわりに
第5章 算数科第6学年「縮図や拡大図」の学習を支援するプログラミング学習
1.はじめに
2.算数科におけるプログラミング教育
3.活用したプログラミング教材
4.実践事例の提案
5.おわりに
第6章 照度・温度センサを活用した「日なたと日かげ」のプログラミング学習
1.はじめに
2.授業実践概要
3.カリキュラムマネジメントを通したものづくり【視点1】
4.オープンエンドな問題をトライ&エラーを通して解決するものづくり【視点2】
5.協働するものづくり【視点3】
第7章 小学校社会科における防災コンテンツのプログラミング
1.はじめに
2.授業の設計
3.実践の様子
4.おわりに
第8章 小学校における発光教材を利用したアルゴリズム学習
1.アルゴリズム学習と発光教材の親和性
2.効果的なアルゴリズム学習を実現するPIC-GPE
3.PIC-GPE組込LED発光教材を活用した実践事例の紹介
4.今後に寄せて
第9章 小学校における音の学習を通したアルゴリズム学習
1.「音楽づくり」×「プログラミング」
2.小学校4年生 音楽「音階から音楽をつくろう」
第Ⅲ部 中学校におけるプログラミング教育
第1章 小学校から中学校へのプログラミング教育の接続
1.はじめに
2.小・中学校連携の要点
3.中学校の情報技術に関する内容の要点
4.おわりに
第2章 設計学習を意識した授業用マイコンボード開発とプログラミング
1.エネルギー変換技術と計測・制御技術との円滑な接続
2.リレーを活用した,計測・制御システムの設計学習案
3.リレーとPICマイコンを活用した授業用マイコンボードの開発
4.センサ2個とリレー2個でプログラミング的思考の育成を
5.まとめ
第3章 状態遷移図を利用したプログラミング
1.状態遷移図を利用したプログラムによる計測・制御教材の開発
2.プログラムの設計活動
3.開発した計測・制御システム
4.評価試験
5.結果および考察
6.まとめ
第4章 計測・制御を考慮したプログラミング
1.計測・制御の基礎
2.中学校における計測・制御学習の位置付け
3.計測・制御のプログラミング・モデルとプログラミング例
第5章 生物育成に関連させたシミュレーションプログラム
1.複数の内容を併せて学習するための情報技術
2.「生物育成」と「情報」の両内容を併せて学習できるシミュレーション教材
3.開発したシミュレーション教材の有効性
4.複数の内容を併せて学習するための「情報」と将来展望
第6章 STEM教育を考慮した中学生による幼児向けハイブリッド型アプリケーション開発
1.学習者のプログラミング的思考を引き出すSTEM教育題材
──アプリ開発環境Monacaの活用を通して──
2.題材計画
3.教材の説明
4.授業の実際
5.題材のまとめ
第7章 ネットワークコンテンツ処理のためのプログラミング
1.はじめに
2.授業内容の検討
3.学習指導の実際
4.実践の評価
第8章 Webアプリケーションを意識したネットワークプログラミング
1.プログラミング題材としてのWebアプリケーション
2.学校現場で想定されるLAN環境
3.JavaScriptについて
4.jQueryについて
5.プログラムの作成,実行とデバッグ
6.例示されている題材とプログラム例
7.安全なプログラムについて
8.プログラミング題材について
第9章 情報機器変遷調査のためのネットワークプログラミング
1.ネットワークを利用した双方向性のあるコンテンツのプログラミングの特徴
2.紀元前からの計算機器の変遷
3.Web環境におけるHTMLならびにJavaScript
4.JavaScriptによるコンピュータ関連博物館の地図配置と双方向性検索
第Ⅳ部 高等学校におけるプログラミング教育
第1章 中学校から高等学校へのプログラミング教育の接続
1.プログラミングの概要
2.中学校・高等学校におけるプログラミング教育
第2章 プログラミング教育とデータ構造
1.プログラミング教育とデータ構造のつながり
2.データ構造の役割
3.データ構造例
第3章 生徒が自ら選ぶソフトウェアによる問題解決の授業実践
1.問題解決の手段としてのプログラミング
2.授業計画
3.教材について
4.評価について
5.今後に向けて
第4章 コミュニケーションツールの仕組みの理解を目的としたプログラミング
1.プログラミングによる情報の科学的な理解
2.クライアント・サーバシステムの仕組みの理解
3.コミュニケーションツールの仕組みのプログラミング
4.プログラミングによる情報の科学的な理解についての考察
第5章 問題解決のためのビッグデータ利用
1.ビッグデータ利用の社会的背景
2.未来社会に向けた問題解決能力の育成
3.ビッグデータを利用した高等学校情報の授業実践
4.プログラミングによるビッグデータ分析
第6章 暗号化手法の理解のためのプログラミング
1.授業の背景 プログラミングを通して学べること
2.授業の題材 公開鍵暗号方式と問題解決
3.授業のねらいと構成
4.1時間目の授業 公開鍵暗号方式を発明する
5.2時間目の授業 素因数分解の手順を考える
6.3時間目の授業 コンピュータに素因数分解を実行させる
7.授業の評価
第7章 シミュレーション利用による社会システム予測
1.社会システム予測のためのシミュレーション
2.社会シミュレータの利用を想定した授業計画
3.授業評価アンケートの結果と考察
4.授業実践のまとめと今後の課題
第8章 Webサーバ上で動作する情報システムのプログラミング
1.情報システムとプログラミング
2.授業計画
3.教材説明
4.内容及び学習の評価
第9章 情報オリンピックを意識した基本アルゴリズムとブランコ操作への応用
1.プログラミング学習位置付けの方向性
2.情報オリンピック問題を活用したプログラミング学習教材の開発
3.AIブランコロボットと遺伝的アルゴリズム
第Ⅴ部 用語集
プログラミングに関わる関連語彙
参考文献
あとがき