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臨床環境学

臨床環境学

菊判 336ページ 並製
価格:3,960円 (消費税:360円)
ISBN978-4-8158-0781-8 C3051
奥付の初版発行年月:2014年09月

内容紹介

環境の病いとどう向き合うべきか。環境問題発生のダイナミズムを見据え、従来の学問分野を超えた新しいアプローチが、現場で診断から治療までを一貫して行う臨床環境学であり、それを支える基礎環境学である。個別性に配慮したこれら先進的な試みを、理論と実践の両面から初めて解説。


目次

  第Ⅰ部 環境学とは何か

第1章 地球学から環境学へ

 1.1 地球学から見た環境問題
 1.2 現代の環境学の課題
 1.3 環境学における地球学の役割
 1.4 学問世界を超える環境学

第2章 環境問題から見た人類史

 2.1 産業革命以前の環境問題
   2.1.1 人類の世界への拡散
   2.1.2 人類の拡散に伴う大型草食動物の絶滅
   2.1.3 農業と文明の勃興
   2.1.4 農業に伴う環境問題 (1) —— 塩害
   2.1.5 農業に伴う環境問題 (2) —— 植生伐採と土壌流失
 2.2 産業革命以降のローカルな環境問題
   2.2.1 産業革命とその影響
   2.2.2 スモッグ公害
   2.2.3 光化学スモッグ公害
   2.2.4 酸性雨
   2.2.5 重金属・有機塩素化合物による汚染と生物濃縮
   2.2.6 窒素循環の変化と富栄養化
 2.3 20世紀中盤以降のグローバルな環境問題
   2.3.1 人口爆発と人間活動の拡大
   2.3.2 森林破壊
   2.3.3 オゾン層の破壊
   2.3.4 海洋酸性化
   2.3.5 絶滅と生物多様性の低下
   2.3.6 人間活動による気候変化
   2.3.7 人類世 (人新世) の到来
 2.4 人類史的俯瞰 —— 環境問題発生の連鎖構造
   2.4.1 繰り返される環境問題
   2.4.2 問題の解決が新たな問題を生む連鎖構造
   2.4.3 生命型システムに共通のメカニズム —— 技術・制度・遺伝子
   2.4.4 導かれる教訓 —— 先を予測する想像力の重要性

第3章 環境問題へのこれまでのアプローチ

 3.1 近代科学の限界 —— 環境問題はなぜ解決しないか
   3.1.1 2つの環境問題 —— 公害問題と地球環境問題
   3.1.2 近代科学と環境問題
   3.1.3 近代科学の黎明 —— 危機の中からの科学革命
   3.1.4 19世紀の近代科学 —— 資本主義体制とディシプリンの成立
   3.1.5 20世紀の近代科学 —— 戦争と地球環境問題
   3.1.6 これからの科学 —— 持続可能な地球社会をめざして
 3.2 戦後日本の環境行政
   3.2.1 環境行政の永遠の課題 —— 科学化・総合化・民主化
   3.2.2 戦後復興と資源行政の実験
   3.2.3 高度成長と公害行政の失敗
   3.2.4 環境行政の確立と停滞
   3.2.5 持続可能な開発と環境問題のグローバル化
   3.2.6 あるべき環境行政に向けて
 3.3 環境問題をめぐる住民運動
   3.3.1 環境保全と住民運動
   3.3.2 足尾銅山鉱毒事件 —— 近代化と環境問題
   3.3.3 沼津コンビナート反対運動 —— 高度成長と環境問題
   3.3.4 漁業者の植林運動 —— ポスト高度成長期の環境問題
   3.3.5 住民運動の経験から学ぶ

コラム1 東洋医学へのアナロジーで環境学を考える

  第Ⅱ部 臨床環境学の構築

第4章 臨床環境学の提唱と課題

 4.1 臨床の現場での新しい環境学 —— 診断と治療の統合
   4.1.1 臨床専門医を必要とする今日の環境問題
   4.1.2 臨床の現場を担ってきた 「治療」 の専門家
   4.1.3 「診断」 の専門家はどこで何をしているのか
   4.1.4 よりよき臨床対応を実現するために —— 診断と治療のインターディシプリナリな協力
   4.1.5 歴史の教訓に学ぶ —— 診断と治療の相互作用の重要性
 4.2 学問の垣根を越えて —— インターディシプリナリからトランスディシプリナリへ
   4.2.1 インターディシプリナリな研究者像
   4.2.2 インターディシプリナリな研究の壁と可能性
   4.2.3 インターディシプリナリからトランスディシプリナリへ
   4.2.4 市民に知は欠落しているのか、充足しているのか
   4.2.5 トランスディシプリナリな研究への市民参加
   4.2.6 トランスディシプリナリな大学の創造
 4.3 臨床環境学の方法
   4.3.1 地域づくりのプロセス —— 「作業仮説ころがし」 とドライビング・アクター
   4.3.2 地域の診断と問題マップづくり
   4.3.3 地域のデザイン
   4.3.4 実践とその評価 —— 「地域づくりは人づくり」
   4.3.5 研究者の立ち位置
   4.3.6 国際化する上での課題
 4.4 実践に必要な人材の育成 —— 櫛田川流域における研修から
   4.4.1 人材育成のための臨床環境学研修
   4.4.2 研修の実践
   4.4.3 人材育成の効果
   4.4.4 地域社会へ/からの還元

第5章 臨床環境学の実践と展望

 5.1 森と街の再生をめざす臨床環境学 —— 都市の木質化を通じた連携構築
   5.1.1 森林と都市の関係についての診断
   5.1.2 森林と都市の関係についての処方箋
   5.1.3 森林と都市の関係についての治療
   5.1.4 臨床環境学的アプローチとしての都市の木質化プロジェクト
 5.2 櫛田川流域における臨床環境学
   5.2.1 地域社会の縮図としての櫛田川流域
   5.2.2 森林におけるシカ問題
   5.2.3 シカ問題の診断と処方箋
   5.2.4 地域資源を活かす治療法
 5.3 中国の都市化についての臨床環境学
   5.3.1 発展する中国社会のマクロな診断
   5.3.2 ミクロな診断と処方箋
   5.3.3 マクロな処方箋 —— 市民参加による管理された成長
 5.4 ラオスの森林をめぐる臨床環境学
   5.4.1 ラオスの発展と天然資源
   5.4.2 森林問題をめぐる背景
   5.4.3 3つの地域における臨床環境学
   5.4.4 森林を診る視点
   5.4.5 森林問題への処方箋
 5.5 診断と治療の無限螺旋としての臨床環境学

コラム2 臨床環境学実践の経験から見えてきたこと

  第Ⅲ部 臨床環境学を支える基礎環境学

第6章 基礎環境学の提唱と課題

 6.1 新しい基礎環境学の必要性
   6.1.1 新しい基礎環境学 —— 従来の認識からの決別
   6.1.2 臨床を支える共通の基盤 —— 臨床環境学と基礎環境学
   6.1.3 臨床の現場を越えて —— 多様な空間・時間スケールへの認識
   6.1.4 臨床の現場から抽出される共通の課題
   6.1.5 基礎環境学の構築をめざして —— 階層性と歴史性
 6.2 環境問題の時間的構造 —— 共通する発生・拡大のメカニズム
   6.2.1 気候と歴史の関係 —— 数十年周期変動への脆弱性
   6.2.2 「過適応」 —— 通底するメカニズム
   6.2.3 なぜ 「過適応」 は起きるのか
   6.2.4 長期的持続性と短期的適応性の両立可能性
 6.3 環境問題の空間的構造
   6.3.1 地球環境問題への国際的取り組み
   6.3.2 地球環境問題の水平統合と垂直統合
   6.3.3 異なるスケールと課題の連結
 6.4 空間軸と時間軸の統合による問題解決へ
   6.4.1 負のスパイラル
   6.4.2 負のスパイラルから正のスパイラルへ
   6.4.3 統合的時空間計画とマネジメント —— 開発と保全のバランス
   6.4.4 地理情報の重ね合わせ —— 景観生態学などの展開
   6.4.5 空間計画に対する時間軸の統合

第7章 基礎環境学の実践と展望

 7.1 窒素循環の歴史的展開 —— 化学肥料がもたらした環境問題
   7.1.1 化学肥料の導入以前の窒素循環
   7.1.2 化学肥料の導入による窒素循環の変化
   7.1.3 アジアモンスーン地域における窒素循環 —— その歴史的変遷
   7.1.4 持続可能な窒素循環に向けて
 7.2 食料生産・消費構造のグローバル化
   7.2.1 「緑の革命」 による近代農業の普及
   7.2.2 グローバル市場での商品となった余剰食糧
   7.2.3 現在の食料システムがもたらした利点
   7.2.4 現在の食料システムがもたらした問題
   7.2.5 今後の食料生産
   7.2.6 グローバル社会の中での食糧政策
 7.3 ローカルな伝統知と科学知の融合 —— 近代的な食料生産技術の受容と乖離
   7.3.1 科学知および伝統知の特徴
   7.3.2 科学知と伝統知を融合するこれまでの試み
   7.3.3 交錯する科学知と伝統知
   7.3.4 科学知と伝統知の融合に向けて

コラム3 比較優位の原理と、経済のグローバル化の背景

終 章 新しい環境学をめざして

 終.1 環境問題の解決に貢献する学問とは
 終.2 臨床環境学の6つのキーワード
 終.3 基礎と臨床の連携による問題解決をめざして


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