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食料問題からアグリビジネスへ産業化する中国農業

産業化する中国農業 食料問題からアグリビジネスへ

A5判 276ページ 上製
価格:6,380円 (消費税:580円)
ISBN978-4-8158-0886-0 C3033
奥付の初版発行年月:2017年09月 / 発売日:2017年09月中旬

内容紹介

製造業など工業の高度成長の陰で見過ごされてきた農業。しかしその経済発展を可能にしたのは、飢饉の経験を乗り越えて、厖大な人口への食料供給を実現した農業であった。龍頭企業の台頭など、アグリビジネスでも世界的地位を築きつつある中国農業の現状を、新たな視座で描き出す。

(受賞)
第34回「大平正芳記念賞」
2019年度「日本農業経済学会学術賞」

前書きなど

序章 2つの農業問題と農業産業化

1978年12月に開催された中国共産党・第11期中央委員会第3総会(いわゆる「三中全会」)を契機に中国の改革開放政策がスタートし、2018年には40年の節目を迎える。改革開放政策は農村部の経済改革から始まり、農業生産責任制の導入や農産物流通の段階的な自由化など画期的な政策が打ち出される一方で、豊かさを求める農民自身の積極性が改革を一層加速させ、その相乗効果が大きなうねりとなって経済改革が進展してきた。

この約40年にわたる農業・農村改革のなかで、中国農業は大きな成果を挙げてきた。急速な発展を続ける製造業の陰に隠れてあまり知られていないが、中国は農業生産に関しても世界のなかで極めて重要な位置を占めている。FAO(国際連合食糧農業機関)の統計(2013年)によると、中国の小麦とコメ生産量はそれぞれ1億2193万トンと2億361万トンで、ともに世界第1位を占め、トウモロコシの生産量も2億1849万トンで、アメリカに次ぐ世界第2位の生産量を誇っている。また、穀物を含めた2015年の中国の食糧生産量は6億2144万トンに達し、1980年の生産量と比較するとほぼ倍増を実現した。

……

[「序章」冒頭より/注は省略]

著者プロフィール

宝剣 久俊(ホウケン ヒサトシ)

1972年 東京都に生まれる
2000年 一橋大学大学院経済学研究科博士後期課程単位取得退学
    日本貿易振興機構アジア経済研究所研究員を経て
現 在 関西学院大学国際学部教授、博士(経済学)

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

序 章 2つの農業問題と農業産業化
1 中国農業・農村の歩みと直面する問題
2 本書の分析枠組みと課題
3 本書の構成

第1章 改革開放と食糧流通システムの再編
 ―直接統制から間接統制へ―
1 計画経済期の食糧生産・流通
2 食糧流通制度の改革と漸進的自由化
小 括

第2章 農業調整問題の登場
 ―食料問題の解決と農業保護政策への転換―
1 速水理論による中国農業の評価
2 農業産業化を通じた農業構造問題への対応
小 括

第3章 変容する農業経営と所得格差
 ―農家の階層化と教育投資―
1 非農業就業と教育効果の研究レビュー
2 分析対象地域の特徴
3 農業経営類型間の移動とその決定要因
4 非農業就業の所得格差への影響
小 括

第4章 農地流動化の急拡大とそのインパクト
 ―農業産業化の前提―
1 農地流動化の進捗状況と制度的枠組み
2 浙江省調査地域の農地流動化の特徴
3 農地流動化による地代水準の効率性
小 括

第5章 農業産業化のもとでの農民専業合作社
 ―産業化の担い手とその現在―
1 農民専業合作社の変遷と政策的支援
2 統計調査に基づく農民専業合作社の実態
3 農民専業合作社の事例研究
小 括

第6章 農民専業合作社は所得を向上させたのか
 ―全国農家調査によるミクロ計量分析―
1 先行研究と研究課題
2 分析フレームワーク
3 農民専業合作社加入効果の推計
小 括

第7章 農民専業合作社は所得と栽培技術を改善させたのか
 ―山西省農家調査によるミクロ計量分析―
1 調査対象地域の概要と調査方法
2 農民専業合作社による会員向けサービスの実態
3 農民専業合作社加入効果の推計
小 括

終 章 中国農業産業化の軌跡と展望
1 本書のまとめ
2 農業産業化の展望

参考文献
あとがき
初出一覧
図表一覧
索 引


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