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哲学的考察自己犠牲とは何か

自己犠牲とは何か 哲学的考察

A5判 624ページ 上製
価格:6,930円 (消費税:630円)
ISBN978-4-8158-0928-7 C3010
奥付の初版発行年月:2018年11月 / 発売日:2018年11月下旬

内容紹介

日常の「自分を殺す」行いから極限状況まで、広く見られる自己犠牲 ——。なぜそれは可能で、どのようにして生み出されるのか。日本人戦犯裁判の事例を糸口に、西洋近代哲学では問えなかった問いを、人類学や心理学の知見をも参照しつつ根底から考察し、私たち自身の現実を初めて哲学的に解明した労作。

著者プロフィール

田村 均(タムラ ヒトシ)

1952年、名古屋市に生まれる。1977年、京都大学文学部卒業。1984年、京都大学大学院文学研究科博士後期課程満期退学。元名古屋大学大学院文学研究科教授。近年では、訳書にケンダル・ウォルトン『フィクションとは何か』(小会、2016年)などがある。

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

 凡 例

序 章 自己犠牲はなぜ哲学の問題となるのか

  第Ⅰ部 権力と犠牲

第1章 シンガポール華僑粛清事件と河村参郎
    1 シンガポール華僑粛清事件
    2 戦犯裁判と河村参郎
    3 個人意志の問題
    4 河村参郎の心理と行為の考察

第2章 戦犯心理の分析
    1 戦犯裁判研究と河村事案
    2 BC級戦犯裁判の思想史的背景
    3 丸山眞男による戦犯心理の分析
    4 作田啓一による戦犯心理の分析

第3章 犠牲の宗教人類学
    1 動物殺しと犠牲儀礼
    2 タイラーの犠牲論
    3 ロバートソン・スミスの犠牲論
    4 ユベールとモースの犠牲論

第4章 犠牲、虚構、演技
    1 犠牲譚の虚構性
    2 河村参郎と虚構性
    3 権力、責任、犠牲 —— 第Ⅰ部の結び

  第Ⅱ部 自己犠牲の論理

第5章 自己犠牲と意志
    1 自己犠牲の基本的特徴
    2 自己犠牲と心の分裂
    3 私的価値と公共的価値 —— 西洋近代思想史一瞥
    4 Willと意志

第6章 自己犠牲の物語
    1 『アウリスのイーピゲネイア』
    2 「レイニー河で」
    3 2つの物語の比較
    4 全体論と個人主義

第7章 自己犠牲と合理性
    1 田村(1997)と柏端(2007)
    2 合理性概念の拡張
    3 ジレンマ状況と合理性
    4 共同行為
    5 自己犠牲という共同行為

第8章 自己犠牲と服従
    1 共同行為と日常生活
    2 自発的な服従
    3 自己犠牲の定義
    4 個人と意志

  第Ⅲ部 自己と自己犠牲

第9章 自己という思想
    1 デカルトから始まる
    2 ジョン・ロックの人格論
    3 ヒュームによる自己の解体

第10章 自己の心理学
    1 自己の多層性
    2 環境に埋め込まれた身体 —— 身体的な自己
    3 共同注意と対象化された「私」—— 心としての自己(1)
    4 心の理論 —— 心としての自己(2)
    5 発達心理学と哲学的自己論

第11章 現代哲学と自己の概念
    1 一人称表現の意味
    2 一人称表現の指示
    3 一人称表現と社会
    4 ごっこ遊びの成り立ち
    5 ごっこ遊びと自己

第12章 功利主義と自己犠牲
    1 J・S・ミルにおける功利主義と自己犠牲
    2 オーヴァヴォルドとその業績
    3 「自己利益と自己犠牲の概念」(Overvold 1980)
    4 「自己利益と欲求の充足」(Overvold 1982)
    5 自己利益の概念と自己犠牲の社会性
    6 「道徳、自己利益、そして道徳的であるべき諸理由」(Overvold 1984)
    7 服従の内在化
    8 Willと服従

終 章 自己犠牲と私たち
    1 2つの立場の比較
    2 自己実現の願望

 あとがき
 注
 参考文献
 索 引

関連リンク

ケンダル・ウォルトン『フィクションとは何か』


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