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近世ヨーロッパにおける宣教のレトリック殉教の日本

殉教の日本 近世ヨーロッパにおける宣教のレトリック

A5判 600ページ 上製
価格:9,680円 (消費税:880円)
ISBN978-4-8158-1119-8 C3022
奥付の初版発行年月:2023年02月 / 発売日:2023年03月中旬

内容紹介

キリスト教文化にとって日本は殉教の聖地だった。
グローバルな宣教のなかで、驚くべきイメージはどのように成立・普及したのか。
長崎二十六殉教者の列福やその聖遺物の行方、
さらには多様な殉教伝・磔図像・残酷劇などを跡づけ、
東西をつなぐ新たな「双方向の歴史」を実践する。
なぜ〈暴虐と聖性の国〉となったのか

著者プロフィール

小俣ラポー 日登美(オマタ ラポー ヒトミ)

2005年 ストラスブール大学歴史学部DEA課程修了
2007年 東京大学大学院人文社会系研究科修士課程修了
2016年 パリ高等研究実習院(宗教学部門)およびフリブール大学文学部歴史学科(近世史部門)にて博士号取得
ハーヴァード大学客員研究員、日本学術振興会特別研究員などを経て
現 在 京都大学白眉センター/人文科学研究所 白眉特定准教授

主な論文に、「17-18世紀ヨーロッパにおける日本情報と日本のイメージ」(木畑洋一・安村直己編『岩波講座 世界歴史15 主権国家と革命 15-18世紀』岩波書店、2023年)、「「偶像崇拝」の地・日本――近世フランスの思想家ルイ・リショームの言説から」(『佛教大学歴史学部論集』11号、2021年)などがある。他に英語・フランス語による著書・論文多数。

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

序 章

第1章 複数の位相を持つ「殉教」
     ──概念の歴史化
古代教会における「殉教」概念の発生/殉教思想の日本への流入/絶対的悪を規定する迫害/力の逆転の思想としての殉教/16~17世紀における「殉教」概念/西欧言語圏における「殉教」研究の方法論/日本語による「殉教」言及/殉教と歴史認識――宣教言説の受容と反発の狭間で/「殉教」という訳語の誕生/近代以降の「殉教」言説のゆくえ/殉教の様々な位相

第2章 日本の殉教者の初めての聖性公認
     ――長崎二十六殉教者の列福過程
「聖人」を生む制度――「列聖」と「列福」/列福開始以前のフランシスコ会とイエズス会の対立/フランシスコ会の殉教顕彰の伝統/迫害での逃避について(De fuga in persecutione)――イエズス会宣教における初期の殉教観/列福過程の最初の段階――「情報と尋問の裁判」 /二十六人中のイエズス会関係者/「信仰への憎しみ」の確認/日本のキリスト教徒からの列福嘆願書/慶長遣欧使節/列福過程の再開/教会裁判(1621~22年)における質問条項/長崎裁判/裁判をすっぽかす人たち/イエズス会と殉教伝①――モレホン/イエズス会と殉教伝②──マテウス・デ・コウロス/メキシコ・プエブラにおける教会裁判/裁判記録と教皇庁裁判所/イエズス会と托鉢修道会の対立の政治問題化/列福/列福後の現象──信仰の盛り上がりと普及活動/クリストヴァン・フェレイラのフェイク・ニュース/イエズス会と列福候補者/ベネディクト十四世と長崎二十六殉教者の特異性

第3章 聖遺物
     ──殉教者の旅する聖性
日本で希求された聖遺物/信者の命がけの回収と聖遺物の意識的な破壊/キリシタン版における聖遺物/日本の文化的文脈における遺骸/日本に運ばれたヨーロッパの聖遺物/霊的な勢力圏を刻む聖遺物/聖遺物と勢力圏/「現地」産の新たな聖遺物の出現――ザビエルの聖遺物信仰/聖遺物の集積地・マカオ/ヨーロッパへ旅する聖遺物についての相反する資料/ヨーロッパにおける日本の聖遺物/ペドロ・バウティスタの二つの頭蓋骨/真正性と同時代性の間/殉教伝、絵画、演劇――広義の聖遺物入れ

第4章 日本の殉教者のイメージ形成
     ――十字架から炎へ
列福以前の殉教者の図像化――フランシスコ会における磔刑と聖痕/フランシスコ会のプロセッション/列福前の図像の用い方/フランシスコ会による殉教絵画/イエズス会における磔刑図/日本の磔刑報告のプロテスタントへの影響/十字架のイメージと十字架への信仰/イエズス会の文化的文脈における磔刑/イエズス会における最初の日本殉教者の図像化/ニコラ・トリゴー『日本殉教史』における磔刑図/トリゴー『日本殉教史』図像群のヨーロッパ的文脈①──プロテスタント由来の殉教・拷問図/意図的に描かれる/描かれない日本の刑罰/トリゴー『日本殉教史』図像群のヨーロッパ的文脈②──古代の殉教図との関連/『日本殉教史』の拷問とガッローニオの古代殉教の考古学/列福以後のイエズス会の日本殉教者図像の変化/日本殉教者の磔刑図と聖アンデレ/ゴルゴタの丘への同化/十字架から炎へ――殉教者を象徴するもの

第5章 舞台の上の日本
     ──殉教を見るということ
日本の殉教の演劇化の嚆矢/托鉢修道会と殉教演劇/修道会演劇研究の資料的問題/イエズス会の劇場における日本の表象の嚆矢/イエズス会における日本殉教演劇の始まり/「カトリックの前線」地帯における日本殉教演劇/「日本殉教演劇の作品群」とドイツ語圏/イエズス会演劇における殉教――カタルシスと演劇的暴力/日本殉教演劇に見られる暴力とその文脈――『日本のキリスト教徒の闘い』とその周辺/「恐怖の劇場」と殉教の悲劇──殉教を見るということ/イエズス会学校のバレエと殉教者――殉教場面の忌避①/フランスにおける日本関係のイエズス会学校演劇――殉教場面の忌避②/礼節とイエズス会の教育/舞台における死の表現の変遷――『ピリマロ』・『ブンゴ王キバヌス』・『テオカリス』/おわりに──イエズス会の演劇における日本をめぐる言説と象徴性のゆくえ

終 章
殉教という美徳の衰微/西欧と再び接続される日本/現代日本に継承された「殉教」概念の系譜

  あとがき
  注
  参考文献
  図版一覧
  索引


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