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冷戦後国際秩序の模索と多国間主義アジア・太平洋のロシア

アジア・太平洋のロシア 冷戦後国際秩序の模索と多国間主義

A5判 234ページ 上製
価格:6,600円 (消費税:600円)
ISBN978-4-8329-6809-7 C3031
奥付の初版発行年月:2014年11月 / 発売日:2014年11月下旬

内容紹介

本書は、ロシアが大国としての地位を維持するために、冷戦終結後の国際秩序をどのように構想し、関わろうとしてきたのかについて、グローバル・レベルでの構想を説明しつつ、とくにアジア・太平洋地域の文脈で検討することを目的とする。本書では、ロシアの対ヨーロッパ・大西洋政策と対アジア・太平洋政策を対置させること、そして各地域での国際制度に対する外交エリートの理解と接近に注目することを通じて、エリツィン、プーチン、メドヴェージェフという3人の大統領の時代、つまり1991年12月から2012年5月までのロシア連邦の外交形成に通底する理念とその変容を分析することを第1の目的とする。第2の目的は、これまで個別のエリアごとに分析されてきた政策としての「アジア・太平洋」を2極対立構造を克服するための新しい「ロシア外交」形成プロセスと、地域秩序の再編プロセスの双方向の力学として考察することである。ロシア外交の対欧米研究と対アジア・太平洋研究が十分なバランスをもって分析されていない。従来あまり析出されてこなかったロシア連邦の外交像を描き出すことを第3の目的とする。

著者プロフィール

加藤 美保子(カトウ ミホコ)

1978年秋田県生まれ。東京外国語大学外国語学部ロシア東欧課程ロシア語科卒業。北海道大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学。博士(学術,北海道大学,2011年)。
北海道大学スラブ研究センター新学術領域研究プロジェクト・アシスタント(2009-2010年),オックスフォード大学セント・アントニーズ・カレッジ客員研究員(日本学術振興会ITPフェロー,2011-2012年)を経て,現在日本学術振興会特別研究員PD(慶應義塾大学)。

主要業績
・「第二次プーチン政権のアジア・太平洋政策――米中ロ大国間関係の変化の観点から」(『ロシア・東欧研究』第41号,2013年)
・「2013年版「ロシア連邦の対外政策概念」における変化とその意味――アジア・太平洋地域を中心に」(『ロシア・ユーラシアの経済と社会』2013年6月号)
・「ロシアのアジア・太平洋地域へのアプローチ――台頭する中国との協調と自立の観点から」(『国際安全保障』第39巻第1号,2011年)
・"Russia's Multilateral Diplomacy in the Process of Asia-Pacific Regional Integration: The Significance of ASEAN for Russia," in Akihiro Iwashita, ed., Eager Eyes Fixed on Eurasia, vol. 2 (Sapporo: Slavic Research Center, Hokkaido University, 2007).

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

序 章 ポスト冷戦とロシア外交
第一節 課題設定と研究目的  
第二節 研究動向の整理  
(1) 国際関係論とロシア外交研究  
(2) 本研究の視点と方法  
第三節 アジア・太平洋地域の地理的範囲について  
(1) 対外政策における「アジア・太平洋」地域  
(2) 「東アジア」の位置づけ  
第四節 本書の構成  

第一章 エリツィン-コズィレフ体制下の外交の再検討
――ヨーロッパ安全保障の文脈から――
第一節 コズィレフ期の外交を論じる意義  
第二節 対外政策形成システム  
第三節 コズィレフ外相の対外政策構想  
第四節 ヨーロッパにおける国際制度を通じた多極の限界  
(1) ロシアにとってのCSCEの意義  
(2) ソ連崩壊後の安全保障環境の変化と国際制度――NATO,CFE条約を事例に  
(3) チェチェン紛争と国際制度――CSCEを事例に  
第五節 エリツィン-コズィレフによる国際制度の利用の評価  
(1) 国際関係論における多国間主義  
(2) ペレストロイカ以降の多国間主義の系譜  
小  括  

第二章 初期エリツィン政権におけるアジア・太平洋政策の形成過程
第一節 アジア・太平洋政策を論じる視点  
第二節 ソ連のアジア・太平洋政策の変化  
(1) ソ連の対外政策における「アジア・太平洋地域」の浮上  
(2) ゴルバチョフのアジア・太平洋政策――「安全保障」と「経済協力」の分離  
第三節 アジア・太平洋におけるロシア  
(1) ソ連の参入に対する地域諸国の反応  
(2) ロシアの対外政策における「アジア・太平洋地域」  
第四節 北朝鮮問題がアジア・太平洋政策に与えたインパクト  
(1) 韓国接近政策の負の成果  
(2) モスクワによる多国間協議の提唱と挫折  
第五節 アジア・太平洋地域主義へのロシアの参入  
(1) アジアにおける出発点としての東南アジア  
(2) ロシアとASEAN――関係の制度化  
第六節 アジア・太平洋地域における困難と可能性  

第三章 「多極世界」における大国ロシアの追求(1996年1月~1999年12月)
第一節 多極世界というレトリックについて  
第二節 新しいロシアの国益と対外戦略――プリマコフの場合  
第三節 ヨーロッパ・大西洋政策における勢力均衡  
(1) 対立の焦点――コソヴォ紛争  
(2) 対立のなかの対話――CFE条約の適合化  
第四節 アジア・太平洋政策における「大国ロシア」の追求  
(1) NATO拡大とアジア・太平洋政策  
(2) 多極世界の追求――中国,東南アジア  
第五節 対中外交の文脈における「多極世界」の解釈  
第六節 四大国間の一時的協調  
(1) アジア・太平洋地域主義とロシア  
(2) APEC加盟が残した地政学的課題  

第四章 プーチン政権以降のアジア・太平洋政策(2000年~2012年)
第一節 バンドワゴンと均衡政策  
第二節 ロシアと台頭中国――連携から自立へ  
第三節 「多ベクトル外交」の萌芽――可能性と困難  
(1) エネルギー供給国としてのロシア  
(2) 重層的な地域制度の活用  
第四節 ロシア極東開発とアジア・太平洋地域主義――APECを事例に  
(1) ロシア極東開発における連邦政府のジレンマ  
(2) ヨーロッパ中心主義の克服――地域統合とロシア  
(3) APEC参加に関する連邦政府の取り組み  
(4) APECにおけるロシアの活動  
(5) 2012年のウラジオストクAPECサミット――問題点と展望  
小  括  

第五章 米中ロ大国間関係の変化とアジア・太平洋政策の刷新
第一節 第二次プーチン政権の外交的課題  
第二節 国内外の研究動向  
第三節 2000年~2012年の米中ロ関係の戦略変化  
(1) 「戦略的三角形」論  
(2) 21世紀の米中ロ関係の質的変化  
(3) 二国間関係  
第四節 地域へのインプリケーション  
(1) 北東アジア  
(2) 東南アジア  
小  括  

結 語 ポスト冷戦期のロシア外交における多国間主義の役割
(1) 冷戦終結後の国際秩序とロシア  
(2) ロシア外交におけるアジア・太平洋地域  
(3) ロシア外交における勢力均衡と多国間主義  
(4) 多極志向と多国間主義の展望  

主要参考文献一覧  
初出一覧  
あとがき  
事項索引  
人名索引  


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