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多角的視座からの位置づけ「中尾佐助 照葉樹林文化論」の展開

「中尾佐助 照葉樹林文化論」の展開 多角的視座からの位置づけ

山口 裕文:編著, 金子 務:編著, 大形 徹:編著, 大野 朋子:編著
A5判 862ページ CD付き
価格:17,600円 (消費税:1,600円)
ISBN978-4-8329-6820-2 C3020
奥付の初版発行年月:2016年05月 / 発売日:2016年06月上旬

内容紹介

中尾佐助の位置づけを現在の視座から行う。照葉樹林帯のコアである動植物学、森林生態学、資源植物学などをはじめとして、それらを包む文化的側面―民族学、中国思想史、宗教学、科学史、地理学などにいたる多彩さと猥雑さを通して照葉樹林文化の本質を論考。

著者プロフィール

山口 裕文(ヤマグチ ヒロフミ)

大阪府立大学名誉教授,植物文化多様性学 農学博士

金子 務(カネコ ツトム)

大阪府立大学名誉教授,科学思想史・科学社会学

大形 徹(オオガタ トオル)

大阪府立大学人間社会システム科学研究科教授,中国哲学

大野 朋子(オオノ トモコ)

神戸大学大学院人間発達環境学研究科准教授,緑地環境学 博士(農学)

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

はじめに  
第Ⅰ部 中尾佐助の探検紀行
第一章 フィールド学者中尾佐助の辿った探検の路──いくつかの海外調査から( 山 口 裕 文)
中国で攪乱された照葉樹林を見る / 根栽農耕文化とオーストロネシア花卉文化センターへの旅  / ヒマラヤの探検 / アフリカの探検(一九六八年)/ フィールド調査とは
第二章 熱帯、湿潤熱帯林 ( 岡 田   博)
湿潤熱帯林の特徴 / 森林破壊の現状 / 熱帯原生林の保護
 第三章 中尾佐助のインド探検 ( 河 瀨 眞 琴)
カラコラム一九五五年 / インド一九八一年
 第四章 中尾佐助のアフリカ探検と現在のアフリカ農業について( 伊 藤 一 幸)
 アフリカ探検 / 多様な食用植物(作物)と料理 / 熱帯の農業と雑草 / 猛威を振るう根寄生雑草 Striga
 第五章 花と樹──中尾佐助スライドデータベースからバラについて( 上 田 善 弘)
 スライドに見られるバラ /  日本と中国における花の改良の違い  /庭木としてのバラ
 第六章 中尾佐助スライドデータベースにみる家畜と伴侶動物( 森 元 真 理)
 ウシ /  ヤク / ウシ交雑種 / ヤギ / ブタ / ウマ / ロバ / イヌ /植物だけでなかった中尾佐助の興味
第Ⅱ部 照葉樹林帯周辺の生物的自然
第七章 東アジア温帯林構成植物の歴史生物地理 ( 阪 口 翔 太)
日華植物区系とは何か / 系統地理学が明らかにした日華植物区系型分布植物の系統分化 / 日華森林亜区内における陸橋の形成と植物の分化 / 東シナ海周辺における落葉広葉樹林要素の歴史 / 琉球列島を中心とした常緑広葉樹林要素の歴史
 第八章 日本人の歴史と草原の変遷( 副 島 顕 子)
 満鮮要素と日本の草原 / 先史時代の日本における草原の分布と変遷 / 近世から現代へ
 第九章 照葉樹林文化と木の葉の博物誌( 山 口   聰)
照葉樹林文化とは / 照葉樹林での人々の暮らしと「木菜」 / 木の葉、新芽を食物資源として利用する文化 /照葉樹と常緑樹 / 五 チャ、そのほかのツバキ属植物に見られるリーフフェノロジー 第一〇章 帰化植物アサガオ類のつくる自然への功罪( 保田謙太郎)
帰化アサガオ類とは / 帰化アサガオ類の日本への侵入 / 帰化アサガオ類の大豆畑への侵入と定着 / 照葉樹林帯の雑草群落への帰化アサガオ類の拡散と影響 / 照葉樹林帯の雑草群落で拡散する帰化アサガオ類の生態的特徴 / 雑草群落の帰化アサガオと人間との関係
 コラム① 日本の生態系に根付く訪問者、外来生物達──セイヨウミヤコグサを例に( 三村真紀子)
 日本に生息するミヤコグサ属 / 日本の草地に咲く在来種ミヤコグサ / セイヨウミヤコグサの侵略  
第Ⅲ部 森と林と住まいにおける自然倫理
第一一章 仏典・聖書における「聖樹」の東西受容──仏教・キリスト教文化圏と東アジア照葉樹林文化の日本( 金 子   務)   
 照葉樹林文化圏と硬葉樹林文化圏と  / 仏陀説話にまつわる聖樹と受容 /  聖書植物と東アジアの異種体験 /学会でも混乱を重ねた植物命名法
第一二章 『荘子』に見える植物 ──扶揺、冥霊、大椿、大瓠、樗、櫟をめぐって( 大 形   徹 ) /  は じ め に / 『荘子』に見える扶揺(扶桑) / 冥霊と大椿 / 大瓠 / 樗 / 櫟社 /  お わ り に 
第一三章 宋以前の文人からみた南方植物とその文化( 久 保 輝 幸)
漢字と植物 / 先秦(〜前二〇六年) / 秦漢(紀元前二〇六〜二二〇年) /  魏晋南北朝(二二〇〜五八一年) / 隋唐代および五代十国(五八一〜九六〇年) / 宋代(九六〇〜一二七九年)
第一四章 住まいの植栽、その選択と配置による吉凶──明代の『営造宅経』を通して( 水 野 杏 紀・平 木 康 平)  
 中庭の植栽について / エンジュの植栽について / バショウの植栽について / ヤナギ(シダレヤナギ)の植栽について
第Ⅳ部 照葉樹林帯の里山・里海・里畑
第一五章 造園樹木の「無用の用」( 前 中 久 行)
 造園と園芸 / 造園の対象空間 / 庭園空間の特質 /  場の特性と植物の整合性 
第一六章 紀伊大島のイノシシとアオノクマタケラン ──排他的関係性をめぐって( 梅 本 信 也)    紀伊大島西部におけるイノシシの出現  / 道路を介したイノシシ行動圏の拡大 / 草地植生での被害拡大  / イノシシの攪乱による栽培的効果 / イノシシが示すアオノクマタケランの忌避可能性 /  アオノクマタケラン茎葉によるイノシシ忌避実験
 第一七章 日本の照葉樹林帯における巨木文化──歴史的にみた巨木の“癒し”( 児 島 恭 子)
巨木の“癒し”とは /歴史上の巨木 /巨木とモリの関係 /日本の照葉樹林文化としての巨樹の文化
第一八章 中国福建省のクスノキの巨木( 鈴木貢次郎・亀 山 慶 晃・李   景 秀 )
中尾佐助の巨木論  / クスノキ / 福建省で見たクスノキの巨木 / 日本のクスノキの巨木 / クスノキの巨木と社会背景
第Ⅴ部 照葉樹林帯における花卉園芸文化をめぐって
第一九章 照葉樹林文化が育んだ花をめぐる人と植物の関係 ──東アジア原産花卉の栽培化と野生化そして拡散( 山 口 裕 文)
 植物の鑑賞と園芸植物 /  栽培化と野生化  / 東洋花卉文化の観賞植物
第二〇章 江戸の園芸文化における桜草と花菖蒲( 大 澤   良)
 古典園芸植物 / サクラソウ / ハナショウブ
 第二一章 艶やかなつるバラの世界 ( 上 田 善 弘)
 現代バラに果たしたアジア起源のバラの役割 / つるバラの野生種 / つるバラの改良史 / そのほかのつるバラ  / つるバラの魅力
 第二二章 中国雲南省のトウツバキとその保全( 中 田 政 司・管   開 雲・王   仲 朗)
 トウツバキの植物文化 / トウツバキ古樹の調査  / 野生トウツバキ林の調査 /野生トウツバキの花の多様性とその要因 
 第二三章 斑入り園芸植物からの野生化( 植 村 修 二)
 斑入りとは / 斑入り植物の野生化  / 斑入りアオキの野生化
 第Ⅵ部 照葉樹林帯におけるヒトと植物との多様なかかわり
第二四章 納豆餅と雑煮 ( 中 村   治)
 納豆の歴史 / 納 豆 餅 / 味つけについて / 正月に納豆餅を雑煮代わりに食べるという食べ方が意味するもの 
コラム② ブータンの小粒小豆セームフチュン( 山 口 裕 文)
 第二五章 中国古代の香──降神と辟邪の観点から ( 木 﨑 香 織 )
 香の字と祭祀 / 香煙と祭祀 / 香煙と昇仙 / 香と徳の伝達 / 魂を呼びもどす香 / 副葬品としての薫炉・香炉・博山炉 / 香と降神・辟邪
  第二六章 「掛け香」になった生薬「訶梨勒」( 林 み ど り)
 「訶梨勒」について  / 掛け香としての訶梨勒 / 吊るす形の香の種類 / 訶梨勒の渡来 薬物として奉納された訶梨勒 / 中国における文献 /日本における文献
コラム③ 工芸茶という文化 ( 山本悦律子)
食べる茶から飲む茶へ / 工 芸 茶
第二七章 東南アジアの少数民族における竹づくりの魔除け「鬼の目」の多様性( 大 野 朋 子)
 祭祀植物 / 竹の呪具「鬼の目」 /
第二八章 ボゴールのタラスとサトイモ料理 根栽農耕文化の今( 宮 浦 理 恵)
 サトイモの地理的分化 / ボゴールのタラス / タラスの調理法
 引用参考文献 / 図表写真出典一覧 / 付録フィールド画像集/ 収録スライド表 / 索引


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