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本歌取論の展開とポスト新古今時代の和歌「めづらし」の詩学

「めづらし」の詩学 本歌取論の展開とポスト新古今時代の和歌

A5判 350ページ 上製
価格:6,710円 (消費税:610円)
ISBN978-4-87259-611-3 C3092
奥付の初版発行年月:2019年09月 / 発売日:2019年11月中旬

内容紹介

中世和歌における本歌取の概念を捉え直し、隠された表現意識を明らかにしたうえで、古歌を再利用するという方法の不可逆的な「展開」を提示。心を切り離した断片的な詞を再構成して新たな表現を生み出す古歌取の意義を再評価し、新古今時代以降の和歌が方法論的に展開した真の理由を、「めづらし」の理念のもとで解き明かす。創作行為において過去からの影響をいかに積極的に変換するか。古典主義のゆくえと「芸術」への解。

著者プロフィール

土田 耕督(ツチダ コウスケ)

土田 耕督(つちだ こうすけ)
1980年生まれ。専門は和歌論・連歌論を中心とした日本の芸術理論。
大阪大学文学部卒。大阪大学大学院文学研究科文化表現論専攻(美学)博士後期課程単位取得退学。博士(文学)。
英国王立芸術大学(Royal College of Art)派遣研究員、日本学術振興会特別研究員DC2、同特別研究員PD(国際日本文化研究センター外来研究員)、大阪大学大学院文学研究科 文化表現論専攻(美学)助教を経て、現在、同志社大学嘱託講師、大阪産業大学非常勤講師、奈良芸術短期大学非常勤講師。

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

はじめに

序章 「本歌取」とは何か 「新古今時代」における古歌再利用意識の諸相

  序 「本歌取」研究の成果と問題点
  1 藤原定家の「本歌」観
    a.「証歌」としての「本歌」 b. 内容的親縁性を保持する古歌としての「本歌」
    c.「ふるき歌を本歌としてよむ」際の「本歌の心」 d.「本歌を取りて新しく聞ゆる姿」
  2 「本歌を取る」と「古歌を取る」
    a.「本歌」・「本歌取」概念の錯綜:『毎月抄』再考
b.「古歌を取る」という方法①:『詠歌大概』再考
    c.「古歌を取る」という方法②:『無名抄』に見る同時代の共通認識
  3 新古今時代における古歌再利用の複雑化
    a.複数の古歌の再利用 b.歌詞の同時代的共有
  結

附 「本歌」推定の不確実性 定家詠「大空はむめのにほひにかすみつつくもりもはてぬ春のよの月」の本歌


Ⅰ 「めづらし」の詩学と〈擬古典主義〉

第一章 藤原為家の「古歌取」論
  序
  1 為家の「本歌」観
a.題詠と「本歌取」 b.「本歌取」への評価
  2 「古歌取」論の系譜
  3 為家の「古歌取」論
    a.前提:「本歌取」との区別 b.動機:「めづらし」という価値 c.特質:「めづらし」の諸相
  結

附 『簸河上』に見る真観の「本歌」論

第二章 藤原為家の和歌と〈擬古典主義〉
  序
  1 為家の和歌
    a.聴覚印象の操作 b.「風情」の更新 c.古歌の分解と再構成 d.為家の歌詞観
  2 古典主義と擬古典主義
    a.持続する「中世」和歌と「過去の重荷」 b.俊成・定家の歌論に見る古典主義
c.為家の「稽古」と擬古典主義
  結


Ⅱ 〈擬古典主義〉への順応と反動

第三章 錯綜する「本歌取」
  序
  1 阿仏の「本歌取」論
     a.「あらぬことにひきなす」という方法 b.「ありのままのこと」を詠む
  2 源承の「古歌取」論
     a.万葉歌摂取の是非 b.「初本とすべき歌」と「古歌取」 c.「似劣る」歌の忌避
  3 二条為世の「本歌取」分類
     a.分類基準:内容から形式へ b.「本の歌」との優劣関係 c.「贈答」としての「本歌取」
  結

第四章 「心詞」の再利用可能性
  序
  1 二条派の和歌観 詞の配列による「心」の操作
     a.詞の「つづけがら」と詠歌の独自性 b.聴覚印象と「余情」
  2 京極派の和歌観 「心のままに匂ひゆく」詞
     a.「人の心」と「天地の心」との照応 b.「稽古」の否定
  3 中世和歌世界の選択
     a.「歌ことば」と「ただことば」 b.「心」の反復性と一回性
  結

  附 「あたらし」/「めづらし」 中世和歌における〈独創性〉の出自


Ⅲ 「本歌取」論のパラダイム形成

第五章 解体する「本歌取」 『井蛙抄』に見る頓阿の分類
  序
  1 「古歌取」の認定と「あらぬ事をよむ」という方法
  2 「本歌の心」への依存
     a.依存度の測定:為家の歌に対する誤解 b.「本歌の心」への依存としての「贈答」
     c.「本歌の心」の通時的踏襲による「風情」の形成
  3 「本歌の心」の追体験
     a.「本歌の心」の共時的踏襲としての追体験
b.「本歌の心」を追体験する「人の心」:京極派和歌の吸収
  4 「本歌」選定の恣意性
  5 「本歌取」に対する価値判断の恣意性
  結

第六章 中世「本歌取」論の帰結 『愚問賢注』と『近来風体』の分類
  序
  1 「愚問」に見る二条良基の分類
     a.「本歌取」に対する共通認識 b.良基独自の分類項目:「詞よりとりつく」方法
  2 頓阿の分類の完成
     a.『井蛙抄』における分類基準の解消
     b.着想と詞の前後関係:為家の歌に対する誤解(続) c.「定家的本歌取」による「新しき心」
  3 『近来風体』に見る二条良基の分類
     a.「古歌取」の復権 b.「詞ばかりをとる」という方法の提起
c.連歌の理念の逆移入:聴覚印象と即興性
  結

附 連歌における古歌再利用意識の継承と応用


終章 ポスト新古今時代の和歌システム
  1 「本歌取」-「新しき心」/「古歌取」-「めづらし」
  2 「心詞」データベースへのアクセス
  3 データベース=システムの機能と「めづらし」の詩学

  終わりに 「相も変わらぬことを前より少しだけましにやること」の芸術学のために

あとがき
付録 中世の勅撰和歌集と御子左藤原家 関連系図
索引


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