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国民を監督する「公共宗教」フィリピン・カトリック教会の政治関与

フィリピン・カトリック教会の政治関与 国民を監督する「公共宗教」

A5判 350ページ 上製
価格:6,930円 (消費税:630円)
ISBN978-4-87259-695-3 C3016
奥付の初版発行年月:2019年09月 / 発売日:2019年10月下旬

内容紹介

組織の再形成と社会関与の在り方について課題山積であったフィリピン・カトリック教会が、1986年の民主化政変を機に影響力を強め、2001年の政変で自ら抱える矛盾を露呈するに至るまでを、教会関係の公文書等から明らかにする。教会が提示する歴史的正当性は政治にどのような影響力をもっていたのか。宗教指導者の社会的な地位と「公共宗教」の存在意義とは何か。カトリック教会による政治関与の歴史と矛盾。

著者プロフィール

宮脇 聡史(ミヤワキ サトシ)

1969年生まれ。
2006年 東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了(国際社会科学)
2001-2006年 東京基督教大学神学部 講師
2006-2012年 同 准教授
2012-2014年 大阪大学大学院言語文化研究科 講師
2014年‐   同 准教授

『はじめての東南アジア政治』(増原綾子他と共著、有斐閣)
「フィリピン・カトリック教会の公文書における「他者」」(『キリストと世界』18)
「フィリピン・カトリック教会の公文書に見られるフィリピン史解釈」(『東洋文化研究所紀要』157)
「現代フィリピン・カトリック教会における歴史の記念の仕方」(『言語文化研究』42)

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

第1章 「公共宗教」は政治にどう関わるか フィリピン・カトリック教会の国民論と教会論をつなぐ 
1 「この国のみんなの宗教」が民主政治に関わるということ
2 フィリピン・カトリック教会は「公共宗教」としてどう理解されてきたか
3 フィリピン・カトリック教会の政治への関与を分析するために
4 フィリピンにおける制度的教会の概要
5 本書の構成

第2章 カトリック教会の政治関与・動員形成過程
1 歴史的背景
2 1960年代以降の模索
3 マルコスによる戒厳令期(1972-1981年)における教会内の緊張関係
4 民主化政変と主流派路線の確立
5 民主化以降
6 政治関与の背景を問う

第3章 政治・社会司牧の制度と主流教説の確立
1 教会指導者層の政治・社会への関与の仕組
2 CBCPの司牧声明における教会の政治・社会への関与
3 1980年代以降の司牧声明における政治論
4 「EDSA」「ピープルパワー」論の構築
5 1997-1998年:教会指導者層の政治論集大成
6 政治関与から政治教育、そして要理教育へ

第4章 要理教育刷新の展開
1 要理教育刷新プログラムの展開
2 要理教育を支える制度・組織
3 要理教育の現場
4 要理教育をめぐる緊張
5 教会指導者層の要理教育に対する姿勢と動機

第5章 教会刷新ビジョンとフィリピン社会
1 教会論・宣教論の形成と実践
2 教会の「フィリピン文化論」
3 教会による「フィリピン教会=社会観」の覇権の限界

第6章 矛盾の露呈
1 フィリピン・カトリック教会がエストラーダ大統領辞任要求に至るまで
2 エストラーダ放逐と教会―教会版「EDSA」の「再現」
3 「EDSA3」と教会の挫折

第7章 「公共宗教」の模索
1 教会の政治関与―背景、過程とそのひとつの帰結
2 政教関係の研究を深めるために
3 「ピープルパワー」のその後をめぐって

フィリピン・カトリック司教協議会(CBCP)の司牧声明類(1940-2001)
参考文献・資料一覧
あとがき
索引


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