大学出版部協会

 

温暖化の湖沼学

温暖化の湖沼学

A5判 340ページ
価格:3,960円 (消費税:360円)
ISBN978-4-87698-590-6 C3040
奥付の初版発行年月:2012年02月 / 発売日:2012年02月下旬

内容紹介

琵琶湖でも冬季直混合が阻害され、深層部の貧酸素状態が観測される等,温暖化は湖沼の水質や生物相に深刻な影響を及ぼす。所在環境や水塊としての大小・深浅等により,独特の物理・化学機構を持つ湖沼に対する環境変動の影響を明らかにした初の成書。湖沼の物理や生態についての基礎的知識も詳しく解説。環境科学,環境工学専門家必携。

著者プロフィール

永田 俊(ナガタ トシ)

東京大学・大気海洋研究所・教授

吉山 浩平 (ヨシヤマ コウヘイ)

岐阜大学・流域圏科学研究センター・助教

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

口絵
はじめに

序章 温暖化時代の湖沼学
1 温暖化の実態と将来予測
2 人為擾乱と湖沼学—富栄養化を例に
3 温暖化の湖沼学という新たな挑戦
4 本書の構成と概要

第1章 顕在化する温暖化影響
1.1 温暖化に対する湖沼の応答
(1)湖物理構造の応答
(2)湖水質の応答
(3)湖生態系の応答
(4)まとめ
1.2 日本の事例
(1)気温の長期変動
(2)温暖化への湖の応答に関する国内の事例

第2章 湖沼物理過程
2.1 湖沼における素過程
(1)水収支
(2)熱収支
(3)水の密度
2.2 流れ場モデル
(1)基礎方程式
(2)境界条件
2.3 湖沼の流れ
(1)熱循環
(2)風成循環
(3)波動
2.4 乱流と混合
(1)乱流とは
(2)乱流の発生メカニズム
(3)乱流強度のパラメータ化
(4)表層混合層
(5)風による混合
(6)対流によって形成される混合層
(7)亜表層混合層
(8)琵琶湖における例
2.5 湖岸境界過程
(1)湖岸境界層の特徴
(2)地形性の流れ
(3)成層期の湖岸流
(4)沿岸湧昇
(5)湖岸フロントによる境界領域と密度流
(6)湖岸境界層の範囲
(7)温暖化による沿岸域への影響
2.6 底層境界過程
(1)底層境界層の重要性
(2)底層境界層に対する支配方程式
(3)底面付近の流れ
(4)成層していない場合の底層境界層中の流れ
(5)成層下での底層境界層中の流れ
(6)底層境界層中の物質輸送
(7)琵琶湖における底層境界層
(8)地球温暖化の進行が底層境界層に与える影響
コラム1 乱流の測定

第3章 湖沼生態系
3.1 一次生産
(1)一次生産とは
(2)光環境と一次生産
(3)栄養塩環境と植物プランクトン
(4)水温と植物プランクトン
3.2 沖合生態系の食物網
(1)生食連鎖
(2)微生物ループ
(3)栄養塩の再生
3.3 有機物の鉛直輸送と深層・堆積物における物質代謝
(1)沈降粒子の生成と有機物の鉛直輸送
(2)無酸素化した堆積物からのリンの溶出
(3)深層における有機物分解と酸素消費
3.4 湖沼生態系に対する温暖化影響
(1)温暖化と一次生産
(2)温暖化と植物プランクトンの群集構造
(3)動物プランクトンの代謝プロセスと水温
(4)生態系代謝バランスに対する温度上昇の影響
(5)食物網および生態系レベルでの温暖化影響に関する最近の研究動向
3.5 魚類・底生動物に対する温暖化影響
(1)個体への生理的影響
(2)環境を介した生物間相互作用への影響
(3)生物群集・生物多様性への影響
(4)生態系機能・サービスへの影響
(5)陸水生態学の知見を集積するために
コラム2 一次生産の測定
コラム3 安定同位体比を用いた高次生産者の栄養段階の推定
コラム4 自生性有機物と他生性有機物
コラム5 PEGモデル,湖沼における季節性のテンプレート

第4章 温暖化を踏まえた湖沼管理にむけて
4.1 数値モデルによる影響評価
(1)数値モデルの意義と使用例
(2)生態系モデル
(3)流れ場−生態系結合数値モデル
(4)計算の流れ
(5)離散化
(6)季節変動の再現計算例
(7)経年変動の再現計算例
(8)数値モデルを用いた温暖化影響評価
4.2 温暖化影響評価の汎用的な指標
4.3 今後の課題

Appendix ナヴィエ・ストークス方程式とレイノルズ分解
文献一覧
索引


一般社団法人 大学出版部協会 Phone 03-3511-2091 〒102-0073 東京都千代田区九段北1丁目14番13号 メゾン萬六403号室
このサイトにはどなたでも自由にリンクできます。掲載さ>れている文章・写真・イラストの著作権は、それぞれの著作者にあります。
当協会 スタッフによるもの、上記以外のものの著作権は一般社団法人大学出版部協会にあります 。