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前頭葉の謎を解く

学術選書003 心の宇宙1
前頭葉の謎を解く

四六判 258ページ 並製
価格:1,650円 (消費税:150円)
ISBN978-4-87698-803-7(4-87698-803-X) C1347
奥付の初版発行年月:2005年12月 / 発売日:2005年12月上旬

内容紹介

人類は,動物の中で最も大脳が発達している.なかでも前頭葉はひときわ大きい.それゆえ,この「前頭葉」こそが「知性の座」だと考えられた.しかし,事故や病気で前頭葉に損傷を受けた人を見ても,知能や記憶力が衰えた様子はない.これはどういうことだろうか? 知れば知るほど,もっと知りたくなる脳の不思議な世界へようこそ.

著者プロフィール

船橋 新太郎(フナハシ シンタロウ)

京都大学大学院人間・環境学研究科共生人間学専攻認知・行動科学講座認知科学分野教授。京都大学理学博士。

1950年生まれ。京都大学大学院理学研究科動物学専攻(霊長類分科)博士課程中途退学。奈良県立医科大学助手、エール大学医学部博士研究員、同研究助教授、京都大学教養部助教授、京都大学総合人間学部助教授、同教授をへて現職。



主な著書

『記憶と脳』(共著、サイエンス社、2002年)、『情と意の脳科学−−人とは何か』(共著、培風館、2002年)、『脳とワーキングメモリ』(共著、京都大学学術出版会、2000年)、『脳の神経科学II−−脳の高次機能』(共著、岩波講座「現代医学の基礎」第7巻、岩波書店、1999年)。

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

口 絵



第1章……ビルにいったい何が起こったのか

第2章……前頭葉機能の謎

 大脳における機能の局在

 ヒトの知性や創造性も局在するか?

 前頭連合野は知性の座?

 前頭連合野は沈黙野?

 前頭葉機能の謎

第3章……前頭連合野はどのようなところか? 

 前頭連合野の特徴

 前頭連合野の発達

 メスラムによる前頭連合野の機能区分

 ブロードマンによる前頭連合野の区分

 マカクザルの前頭連合野

 大脳皮質内の感覚情報の流れ

 前頭連合野と他の連合野との入出力関係

 前頭連合野からの出力

 まとめ

第4章……前頭連合野の損傷で何が起きるか?

 フィネアス・ゲイジ (Phineas Gage)

 前頭連合野の損傷で観察される変化

 運動のプログラミングの障害

 性格の変化

 問題解決能力の欠如

 計画性の欠如

 反応抑制の欠如

 実行機能

 前頭連合野と実行機能

第5章……動物を用いた行動実験

 動物による局所破壊実験

 前頭連合野の破壊実験

 遅延反応課題

 ラシュレイと記憶痕跡

 フルトンとジェイコブセンの実験

 遅延反応課題と前頭連合野

 遅延交代反応と前頭連合野

 物体交代反応と前頭連合野

 遅延見本合わせ課題と前頭連合野

 弁別学習課題と前頭連合野

 障害される課題に共通する特徴

 遅延を含む課題からわかる前頭連合野の機能

 前頭連合野は記憶(短期記憶)に関わるか?

 前頭連合野とある種の記憶

第6章……ワーキングメモリと前頭連合野

 ワーキングメモリとは

 バデリーのワーキングメモリ

 ゴールドマン・ラキーチのワーキングメモリ

 前頭連合野とワーキングメモリ—前頭連合野に損傷のある人からの知見

 ウィスコンシン・カード分類テスト

 前頭連合野とワーキングメモリ—脳機能イメージングによる知見

 n—back課題

 ワーキングメモリ課題の実行と前頭連合野の活動増加

 前頭連合野と中央実行系

 ワーキングメモリをどのような神経システムと考えるか

 ワーキングメモリの神経機構に必要な構成要素 

 ワーキングメモリのための神経システム

第7章……ワーキングメモリで前頭連合野の機能を探る

 ワーキングメモリのしくみをどのように調べるか 

 行動生理学的研究とは

 動物の訓練

 記憶に関わる神経機構をどのように調べるか

 位置の再現を使って記憶の神経機構を調べる

 ODR課題

 ODR課題の訓練

 前頭連合野で観察されるニューロン活動

 注視に関連する前頭連合野のニューロン活動

 手がかり刺激呈示期に観察されるニューロン活動

 遅延期に観察されるニューロン活動

 反応期に観察されるニューロン活動

 報酬の出現に関連したニューロン活動

 遅延期間活動

 遅延期間活動の方向選択性

 遅延期間活動の出現は課題の成功・不成功と関係するか?

 遅延期間の長短により遅延期間活動に持続時間は変化するか?

 遅延期間活動は情報の一時的な保持に関わる

 遅延期間活動はどのような情報を保持しているのか?

 ODR課題とR—ODR課題

 他の課題でも観察される遅延期間活動

第8章……情報はどのようにして処理されるか?

 前頭連合野の運動関連活動

 サッケード後活動

 サッケード後活動は遅延期間活動の持続時間を制御する

 情報処理のモデルとしての視覚情報から運動情報への変換

 ニューロン集団の活動パターンに注目する

 ポピュレーション・ベクトル法

 前頭連合野のニューロン活動からポピュレーション・ベクトルを求める  171

 遅延期間中のポピュレーション・ベクトルの変化

 ポピュレーション・ベクトルで見る前頭連合野での情報処理

第9章……情報処理のしくみとしてのニューロン間の相互作用

 競合する複数の情報の保持

 位置の組み合わせや順序を反映するニューロン活動 

 記憶野

 近隣ニューロン間の相互作用による複雑な情報の表現

 前頭連合野の近隣ニューロン間の相互作用

 相互相関分析

 相互相関分析でみる前頭連合野ニューロン間の相互作用

 ニューロン間の相互作用の強さは時間とともに変化するか?

 j—PSTH法

 前頭連合野ニューロン間の相互作用のダイナミックな変化

 情報処理のしくみとしての相互作用のダイナミックな変化

 調節信号の役割

第10章……前頭連合野の働きとワーキングメモリ

 汎用なシステムとしてのワーキングメモリ

 実行制御

 実行制御とワーキングメモリ

 二種類のワーキングメモリ

 汎用ワーキングメモリによる制御

第11章……前頭連合野の残された謎

 前頭連合野は知性の座か?

 残された多くの謎

参考文献

あとがき


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