『時間の前で──美術史とイメージのアナクロニズム』

[hanmoto isbn=”978-4-588-00975-4″ type=”osusume”]

 近年、そのめざましい執筆活動によって、美術史学の分野を超えて世界的に注
目されるディディ=ユベルマンの画期作。二十世紀前半、二度の大戦という〈歴
史〉の破局のなかで、ユダヤ系知識人を中心に出現した知の星座──ヴァルター
・ベンヤミン、カール・アインシュタイン、アビ・ヴァールブルク等々──が思
想にもたらした革新とはどのようなものだったのか? この系譜の相続人たる著
者は、既成の学問によって整合的なパースペクティブへと押し込められた芸術の
歴史をいったん解体し、時間を流動化させ、まなざしを真の意味で弁証法化しよ
うと試みる。アナクロニズムと批判される危険を恐れず、むしろ時間の渦巻きと
再構成のなかでしか捉えられない歴史の「徴候」「モンタージュ」「残存」のリ
アリティを認めようとする。──プリニウスの古代ローマからバーネット・ニュ
ーマンのモダニズムまでを往還し、旧来の美術史の前提をゆるがす「イメージの
人類学」を実践する本書は、歴史がいま・ここの日常にもたらすさまざまなしる
しを読み解くための有効な手段を提供してくれます。小局既刊『イメージの前で』
の姉妹編であり、ディディ=ユベルマン入門としても最適の一冊です。