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黒船来航と琉球王国

黒船来航と琉球王国

A5判 370ページ 上製
価格:6,930円 (消費税:630円)
ISBN978-4-8158-0995-9 C3021
奥付の初版発行年月:2020年08月 / 発売日:2020年08月上旬

内容紹介

ペリーはまず沖縄にやって来た。――19世紀、次々と現れる列強の、布教をふくむ開国要求にさらされ、「鎖国」の防波堤とされた琉球の人々。彼らはいかに対応したのか。幕府や薩摩藩の姿勢は? 東アジアの変動のなか、外圧と内圧の狭間におかれた〈境域〉の経験から、琉球と欧米との交渉過程を初めてトータルに描く。浦賀中心では見えない、新たな開国史。

前書きなど

本章の末尾に掲げた表1は、一八世紀末から一九世紀半ば過ぎにかけての琉球への外艦渡来事件について、琉球王府の記録『球陽(きゅうよう)』から拾い上げ、同記録に記載のない事件については他の史料・論著から補って作成したものである。

この表を見ると、一九世紀になって、琉球近海での異国船の出没頻度がにわかに増している。わけても琉球側が濃密な接触をすることになったのはイギリス船であることがうかがえる。一七九七年(寛政九・嘉慶二)のプロヴィデンス号(ブロートン艦長)の那覇寄港を皮切りに、一八二〇年代まではほぼ一〇年おきに、一八三〇年代以降になると、一八三二年(天保三・道光十二)のロード・アマースト号と三七年のモリソン号の来航の間に五年の間隔があるが、それ以降一八四〇年代にかけては、一、二年間隔の頻度で渡来していることがわかる。

一七九七年のプロヴィデンス号は、台湾を出港したところで五月十七日宮古島付近で座礁、島民に助けられて七月十日に那覇にいたったものである。琉球では制止をふりきって上陸した艦長ブロートンと部下らを、一軒の大きな家に招き入れ、茶や煙草を振る舞って、体よく出帆させている。ブロートンはわずか二日間の滞在にもかかわらず、宮古島での食料の無償供与、那覇港での住民の懇切な対応にいたく感動した。

プロヴィデンス号が去った後、九年目にして渡来したのはアルセスト号・ライラ号である。イギリスは清国との通商を開くために特使としてアマースト卿を派遣することになり、その護送にあたると同時に、朝鮮半島沿岸や琉……

[「序章」冒頭より/注は省略]

著者プロフィール

上原 兼善(ウエハラ ケンゼン)

1944年 沖縄県に生まれる
1974年 九州大学大学院文学研究科博士課程後期歴史学専攻中退
現 在 岡山大学名誉教授、博士(文学)
主 著 『近世琉球貿易史の研究』(岩田書院、2016年、日経・経済図書文化賞/角川源義賞/徳川賞)
    『「名君」の支配論理と藩社会――池田光政とその時代』(清文堂、2012年)
    『島津氏の琉球侵略――もう一つの慶長の役』(榕樹書林、2009年)
    『幕藩制形成期の琉球支配』(吉川弘文館、2001年)
    『鎖国と藩貿易――薩摩藩の琉球密貿易』(八重岳書房、1981年)

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

凡 例

序 章

第I部 布教の戦場

第1章 フランス船の来航
はじめに
1 フランス・インドシナ艦隊アルクメーヌ号の来航
2 フランス「総兵船」の来航

第2章 宣教師たちの滞留
はじめに
1 宣教師たちによる布教活動の展開
2 ベッテルハイムの処遇に苦慮する琉球王府

第3章 薩摩藩による琉球守備兵派遣の偽装工作
はじめに
1 偽りの第二次守備兵派遣
2 阿部正弘と調所笑左衛門・島津斉彬
3 第三次守備兵派遣

第4章 布教をめぐる攻防
はじめに
1 フランス人宣教師の動静
2 ベッテルハイムの動静
3 苦闘やまず

第5章 ベッテルハイムの処遇と英国船艦長の首里城入城
はじめに
1 高まるイギリスの琉球への関心
2 ベッテルハイムに対する刀剣窃盗嫌疑事件
3 英船スフィンクス号の来航とシャドウェルの入城
4 薩摩藩政の動揺――島津斉興の隠居

第II部 ペリーの来航

第1章 新たな来訪者ペリー
はじめに
1 ペリーの琉球来航
2 ペリーとの交渉
3 四度目の琉球寄港

第2章 提督不在の琉球
はじめに
1 撹乱される琉球民衆の日常
2 ボアード殺害事件

第3章 琉米条約と新たな国際関係
はじめに
1 新たな国際関係へ
2 琉球王府の苦悩
3 条約締結国として

第4章 サーベルの下で結ばれた琉仏条約
はじめに
1 ゲラン提督との交渉
2 琉仏条約締結後の琉球の動向
3 条約の遵守へ

第5章 島津斉彬の構想と琉蘭条約
はじめに――市来正右衛門の琉球派遣
1 市来正右衛門の対琉球交渉
2 対オランダ交渉の経過

第6章 王府の内部抗争の展開
はじめに
1 座喜味親方の三司官罷免
2 対立の激化

終 章


あとがき
索 引


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