大学出版部協会

 

人と出会い、問いを立てる民俗学 ヴァナキュラー編

民俗学 ヴァナキュラー編 人と出会い、問いを立てる

A5判 256ページ 並製
価格:1,760円 (消費税:160円)
ISBN978-4-86463-128-0 C3039
奥付の初版発行年月:2021年11月 / 発売日:2021年11月中旬

内容紹介

日々の暮らしの「あたりまえ」を問い直し
独特の造形・行為を見出す行為から
新しい民俗学がはじまる!

ヴァナキュラーとは「人々の生活から育まれた」固有な文化である。現代を生きるわたしたちは、いくつもの小さなコミュニティを同時に生きている。学校や職場、地域社会や家族、ネットの世界にも、人の営みはあらゆるレベルでヴァナキュラーを生み出し続け、そこには素朴な問いが潜んでいる。みずから問いを見出し、それと付き合い続けるのが、本当の意味でのフィールドワークであり、ここに民俗学をまなぶ意義がある。

著者プロフィール

加藤 幸治(カトウ コウジ)

1973年、静岡県浜松市生まれ。武蔵野美術大学教養文化・学芸員課程教授。和歌山県立紀伊風土記の丘学芸員(民俗担当)、東北学院大学文学部歴史学科教授(同大学博物館学芸員兼任)を経て、2019年より現職。博士(文学)。専門は民俗学、博物館学。
近著に『津波とクジラとペンギンと―東日本大震災年、牡鹿半島・鮎川の地域文化』(社会評論社、2021年)、『渋沢敬三とアチック・ミューゼアム―知の共鳴が創り上げた人文学の理想郷』(勉誠出版、2020年)、『文化遺産シェア時代―価値を深掘る“ずらし”の視角』(社会評論社、2018年)、『復興キュレーション―語りのオーナーシップで作り伝える“くじらまち”』(社会評論社、2017年)ほかがある。

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

はじめに 
ヴァナキュラーとフィールドワーク/民俗学をまなぶ意義/
あるく みる きく + つくり つたえる


経験主義―今こそフィールドワークへ
「ヴァナキュラー」へのまなざし
民俗学の輪郭/現代生活のヴァナキュラー/美術史とヴァナキュラー/日常の風景から

「文化」の概念の大転換
古典的な文化観/文化観の転換/文化を理解することの不可能さ/
文化における人間中心主義を超えて/文化が資源化する時代/
「文化を生きる」とは/重層的な文化観

「生活」こそが最前線
民俗学は近代という時代の産物/「野」の学問の二つの意味/
〝あたりまえ〟を問い直すことの不可能性/〝あたりまえ〟との付き合い方/
文化の客体化の二つの方法/再帰性とは/問いにつながる課題設定・問題発見/
民俗誌と記述の不可能性

「フィールドワーク」の技法
民俗学のフィールドワーク/調査の現場で大切にしたいこと/
「お守り言葉」を超えて/アーティストのフィールドワーク/
エスノグラフィの思考/ローカルな知の魅力/ナラティヴ(語り)の位相/
語りにおける共感と沈黙/語りのオーナーシップ


フィールドで問いをどう立てるか
女王バチの目線―遊び仕事と誇りと自慢
アインシュタインの蜂/都市とミツバチ/ヨーロッパで発達した養蜂学/
ハチの狩猟とご馳走/山野に遊ぶ/ハチの巣別れ:分封/里山とミツバチ:採蜜/
養蜂箱のゴーラ/独自な共生の思考/「養蜂道」の伝統/
ミツバチ飼いとしての評価
研究のことば【遊び仕事】/ヴァナキュラーを見出すトレーニング(1)

山まかせの思想―暗黙知と自然への理解
遊ぶ人/山の人たち/民俗学にとっての山村/山村性と民俗技術/
備長炭が育んだ森/世界一硬い炭/二次林での狩猟/木の実の採集/
川での漁撈/山の幸を与える山の神/「山まかせ」の思考
研究のことば【暗黙知】/ヴァナキュラーを見出すトレーニング(2)

日常性への信頼―生活のリズムとはたらくこと
議論の中心としての周縁/あるフィールドワークのはじまり/
一軒の生活を成り立たせる道具類/傾斜地に生活空間を造り出す/
オモヤ(主屋)・ニワ(庭)/カド(門)・ハタケ(畑)・ヤマ(山)/
身についた体の使い方と道具/不便な山奥に住み続ける理由
研究のことば【仕事と稼ぎ】/ヴァナキュラーを見出すトレーニング(3)

良い仕事の定義―身体技法とものづくり
道具を見つつ、人を見る/地機との出会い/木綿以前のこと/
古い形式の道具が得た新たな役割/天秤腰機のフィールドワーク/
太布の用途と素材の特徴/コウゾの物性と機仕事/
機の身体技法/労働をめぐる固有な価値観
研究のことば【身体技法】/ヴァナキュラーを見出すトレーニング(4)

漁撈技術と知識―技術の変化と家庭の味
はたらく男の力飯/一攫千金、ハイリスク・ハイリターン/
震源地に最も近く、世界三大漁場に最も近い/半島の南側:表浜の漁業/
半島の北側:裏浜の漁業/「技術は常に北の南部から」/
漁業は経済と直結している/漁民は定住する
研究のことば【フォークターム】/ヴァナキュラーを見出すトレーニング(5)

復興のなかの創造―災害の歴史と技術継承
三陸らしい港町/復興期の日常と生活/スレート屋根葺き講習会/
震災後の民俗調査の再開/現代の硯の製作技術:アラボリ/
現代の硯の製作技術:ジサライ・シアゲ・ケショウ/
江戸時代から明治三陸津波、昭和三陸津波/
昭和三陸津波からチリ地震津波、東日本大震災/
復興のたびに生まれ変わってきた工芸品
研究のことば【正統的周辺参加】/ヴァナキュラーを見出すトレーニング(6)

記憶を担う造形―捕鯨文化と人生の誇り
三陸海岸最南端の牡鹿半島・鮎川/家族・隣人の歴史/見えてきた三陸の捕鯨文化/
「くじらトレジャー」に込められた人生の物語/クジラの町の誇りと部位標本/
玄関や居間に飾るペンギンの剥製/それぞれの「文化財」/鯨歯工芸と印鑑/
「メモリーオブジェクト」としてのくじらトレジャー/クジラミュージアムの伝統/
震災一〇年で甦った新たなクジラミュージアム
研究のことば【ヴァナキュラーアート】/ヴァナキュラーを見出すトレーニング(7)

必要は発明の母―職人技術の基礎と応用
杜の都:仙台名物を支える道具/カスタムメイドという戦略/
カスタムメイドの業務用・プロ用の金網製品/街宣車から野外ロック・フェスティバルまで/
規格化された道具を使いこなす/謎の紀州鍛冶/旅する鍛冶屋/
〝紀州鍛冶〟の器用な順応/職人の心意気
研究のことば【カスタマイズ】/ヴァナキュラーを見出すトレーニング(8)

非日常に生きる―祝祭空間のなかの日常
縁日市のワクワク感/祝祭性の魔力/市を取り仕切る市神さま/市神の迎え方/
市をめぐる「笠井のダルマ市」/市をめぐる「福岡県南部・熊本県各地の初市」/
市をめぐる「奈良県各地の初エビス」/縁日市のなかの日常と非日常
研究のことば【自由と平和】/ヴァナキュラーを見出すトレーニング(9)

わが道を生きる―擬制の家族と「一匹狼」
親・兄弟の契り/浮き沈みの激しい家系/「一匹狼」を生きる/
関係性のなかで自分の道を切り拓く
研究のことば【イノベーション】/ヴァナキュラーを見出すトレーニング(10)


あとがき
参考文献


一般社団法人 大学出版部協会 Phone 03-3511-2091 〒102-0073 東京都千代田区九段北1丁目14番13号 メゾン萬六403号室
このサイトにはどなたでも自由にリンクできます。掲載さ>れている文章・写真・イラストの著作権は、それぞれの著作者にあります。
当協会 スタッフによるもの、上記以外のものの著作権は一般社団法人大学出版部協会にあります 。