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「新常態」への政治と経済の揺らぎ中成長を模索する中国

慶應義塾大学東アジア研究所叢書
中成長を模索する中国 「新常態」への政治と経済の揺らぎ

A5判 200ページ 上製
価格:3,300円 (消費税:300円)
ISBN978-4-7664-2342-6 C3333
奥付の初版発行年月:2016年05月 / 発売日:2016年05月下旬

内容紹介

▼習近平改革の狙いとゆくえを読み解く。

安定した「中成長国」に向けて根本的な社会構造の転換を迫られ、模索を続ける中国。
歴史的発展過程の中で習近平改革を捉え直し、独自の調査と分析手法で2030年代の中国経済を見通しつつ、その意図と意義を明らかにする。


【編著者】
大西  広(おおにし ひろし)
慶應義塾大学経済学部教授
1985年京都大学大学院経済学研究科博士後期課程単位取得退学。経済学博士。立命館大学助教授、京都大学経済学部助教授、同教授を経て現職。京都大学名誉教授。World Association for Political Economy副会長、北東アジア学会会長。

【執筆者】(掲載順)
瀬戸  宏(せと ひろし)
摂南大学外国語学部教授
1982年早稲田大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学。博士(文学)。長崎総合科学大学工学部専任講師などを経て現職。日本現代中国学会理事、社会主義理論学会委員。
主な著書に、『中国の同時代演劇』(好文出版、1991年)、『中国演劇の二十世紀 中国話劇史概況』(東方書店、1999年)、『中国話劇成立史研究』(東方書店、2005年、2006年度日本演劇学会河竹賞授賞)、『中国話劇成立史研究』(中国語版、陳凌虹訳、厦門大学出版社、2015年)、『中国のシェイクスピア』(松本工房、2016年)など。

徐 一睿(じょ いちえい)
専修大学経済学部准教授
2009年慶應義塾大学大学院経済学研究科博士課程修了。博士(経済学)。慶應義塾大学経済学部助教、嘉悦大学経営経済学部専任講師などを経て現職。
主な著書に、『中国の財政調整制度の新展開 ―― 「調和の取れた社会」に向けて』(日本僑報社、2010年、第8回華人学術賞・第11回日本地方財政学会佐藤賞受賞)、『中国の経済成長と土地・債務問題 ―― 政府間財政システムによる「競争」と「調整」』(慶應義塾大学出版会、2014年)、訳書に、于建嶸『移行期における中国郷村政治構造の変遷』(日本僑報社、2012年)など。

澤田 英司(さわだ えいじ)
九州産業大学経済学部講師
2010年慶應義塾大学大学院経済学研究科博士課程修了。博士(経済学)。慶應義塾大学経済学部助教、早稲田大学理工学研究所招聘研究員などを経て現職。
主な著書に、The Economics of Waste Management in East Asia (共著)(Routledge, 2016)、『資源を未来につなぐ(シリーズ 環境政策の新地平 第5巻)』(共著、岩波書店、2015年)など。

房 建(ぼう けん)
南京安生外国語専修学校経済学講師
2014年慶應義塾大学大学院経済学研究科修士課程修了。修士(経済学)。

駒形 哲哉(こまがた てつや)
慶應義塾大学経済学部教授
1997年慶應義塾大学大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。博士(経済学)。1989~90年南開大学(中国)留学。財団法人霞山会職員、獨協大学経済学部専任講師、慶應義塾大学経済学部専任講師、准教授を経て現職。中国経済経営学会理事、日本中小企業学会理事。
主な著書に、『移行期中国の中小企業論』(税務経理協会、2005 年、平成17年度中小企業研究奨励賞経済部門本賞受賞)、『中国の自転車産業 ―― 「改革・開放」と経済発展』(慶應義塾大学出版会、2011 年、2012年度慶應義塾賞・第7回樫山純三賞受賞)、『中国産業論の帰納法的展開』(共編著、同友館、2014 年)など。

白石 麻保(しらいし まほ)
北九州市立大学外国語学部教授
2004年京都大学大学院経済学研究科博士後期課程修了。博士(経済学)。姫路獨協大学講師、北九州市立大学外国語学部准教授などを経て現職。
主な著書に、『中国経済の数量分析』(共著、世界思想社、2003年)、『中国農家の公正と効率』(共著、多賀出版、2005年)、『躍動する中国と回復するロシア ―― 体制転換の実像と理論を探る』(共著、高菅出版、2005年)など。

矢野 剛(やの ごう)
京都大学大学院経済学研究科准教授
2001年京都大学大学院経済学研究科博士後期課程修了。博士(経済学)。徳島大学総合科学部専任講師、准教授を経て現職。
主な著書に、『中国経済の数量分析』(共編、世界思想社、2003年)、『中国農家の公正と効率』(共著、多賀出版、2005年)、『中国の企業間信用 ―― 経済発展とオルタナティブ金融』(京都大学学術出版会、2015年)など。

目次

序章 高成長から中成長への移行に伴う中国の模索(大西 広)
 1 薄熙来と習近平
 2 政治の揺らぎの背景にある経済の揺らぎ
 3 予想を超えて進行するかもしれない「中成長化」の試練
 4 「国家資本主義」か「私的資本主義」か

 第Ⅰ部 胡錦濤から習近平への中国政治の揺らぎ

第1章 薄煕来の「重慶モデル」とその失脚をどう評価するか(瀬戸 宏)
 1 はじめに
 2 薄煕来の経歴
 3 重慶モデル出現の背景と基本内容
 4 重慶モデルの特徴Ⅰ ―― 民衆生活重視
 5 重慶モデルの特徴Ⅱ ―― “唱紅”と“打黒”
 6 重慶モデルと薄煕来評価
 7 薄煕来が失脚しても否定できない重慶モデルの内容
 8 薄煕来事件、重慶モデルは何を示したか

第2章 地方統制
―― 政治選抜トーナメント方式について(徐 一睿・澤田英司)
 1 はじめに
 2 財政改革と地方統制の変化
 3 アクセルとブレーキの役割を果たす二元的統制
 4 政治選抜トーナメント方式の限界と一票否決の導入
 5 おわりに

第3章 地方財政の土地開発利益依存と脱却への模索(徐 一睿)
 1 はじめに
 2 土地使用権譲渡に依存した地方財政システム
 3 土地使用権譲渡収入による都市間地方政府収入格差の実態
 4 脱土地依存への模索
 5 おわりに

 第Ⅱ部 高成長から中成長への中国経済の模索

第4章 企業内賃金格差の是正が課題となる時代へ
―― 労働者の賃金観の変化に関するいくつかの調査結果(大西 広・
房 建)
 1 はじめに
 2 労働争議件数の増加と労使関係の変容
 3 賃金水準は企業業績に影響する
 4 過大な賃金格差は企業業績を悪化させる
 5 賃金格差は労働意欲を減退させる
 6 おわりに

第5章 中国「社会主義市場経済」の性格と構造
―― 工作機械産業における競争的国有企業の役割に注目して
(駒形哲哉)
 1 はじめに
 2 国家資本主義と社会主義市場経済
  2.1 改革開放から社会主義市場経済へ
  2.2 中国の「国のかたち」
  2.3 社会主義市場経済の持続性
 3 社会主義市場経済における国有工作機械産業の役割
  3.1 制度改革と工作機械産業
  3.2 中国の工作機械産業の展開
  3.3 藩陽機床集団の例
 4 おわりに――「社会主義市場経済」の模索と競争的国有企業の行方

第6章 投資依存型経済からの脱却と「中所得国の罠」
―― 2部門最適成長モデルによる分析と予測(大西 広)
 1 はじめに
 2 マルクス派最適成長モデルの基本構造
 3 モデルの推計について
 4 減価償却率と時間選好率の計算について
 5 定常状態の予測
 6 中国経済のゼロ成長化は何年先か

第7章 BRICsが模索する新しい国際秩序(大西 広)
 1 はじめに
 2 人口規模の経済メリット
 3 新興経済大国の台頭としてのAIIB開設の衝撃
 4 国際的経済力の拡大は国際的政治力の拡大を導く
 5 “国際政治の揺らぎ”はまだまだ続く

補論 中国計画経済システム下での企業行動の特徴
―― 分権的意思決定に関する実証分析(大西 広・白石麻保・矢野 剛)
 1 はじめに
 2 分析枠組
 3 推定方法および推定結果
 4 結論

索 引
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