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台湾・旧南洋群島における外来政権の重層化と脱植民地化帝国日本の記憶

帝国日本の記憶 台湾・旧南洋群島における外来政権の重層化と脱植民地化

A5判 320ページ 上製
価格:6,600円 (消費税:600円)
ISBN978-4-7664-2359-4 C3039
奥付の初版発行年月:2016年10月 / 発売日:2016年10月中旬

内容紹介

▼ポストコロニアルな歴史人類学の可能性をひらく。

帝国日本に統治された台湾と旧南洋群島。そこに生きた人々の、「日本化」から脱植民地化への道のりをたどり、彼ら / 彼女らの歴史認識と「日本」認識の形成過程と変容とを明らかにする。

今日、日本人は、「親日」的に見える旧植民地の人々と出会ったときに、彼らの好意的な発言の背後に隠された旧植民地の人々の「脱植民地化」の苦悩への想像力を持てなくなってしまい、ノスタルジーに浸り、自らに心地よい解釈に酔うという落とし穴にはまってしまいがちになったのではないか。……私たちに求められているのは、彼らの声に耳を傾けることによる今更ながらの自らの「脱帝国化」ではないだろうか。 ―― 本書三尾裕子論文より


【編者】
三尾裕子(みお ゆうこ)
慶應義塾大学文学部教授。文化人類学、東アジア研究。

遠藤 央(えんどう ひさし)
京都文教大学総合社会学部・大学院文化人類学研究科教授。社会人類学、オセアニア研究、グローバル・ガバナンス論。

植野弘子(うえの ひろこ)
東洋大学社会学部教授。社会人類学。

【執筆者】(掲載順)
松金公正(まつかね きみまさ)
宇都宮大学国際学部教授。中国・台湾宗教社会史、植民地史。
1967年生まれ。筑波大学大学院歴史・人類学研究科博士課程単位取得退学。
主な業績に、「植民地台湾における日本仏教に関する研究の回顧と展望」(『近代仏教』21、2014年、pp.44-64)、『交錯する台湾社会』(共著、アジア経済研究所、2012年)、『現代アジア事典』(共編、文眞堂、2009年)、などがある。

林 虹瑛(りん こうえい Lin, Hongying)
神田外国語大学非常勤講師。台湾語、中国語語学教育。
東京外国語大学大学院アジア第一言語文化研究科博士課程単位取得満期退学。博士(言語学)。
主な業績に、『台湾語中級』(編者(三尾裕子監修)、東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所、2014年3月)、『台湾語入門』(三尾裕子・蔡承維・陳麗君との共著、東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所、2012年8月)、「遠隔講義システムを用いたコミュニカティブアプローチ語学教授法による各学習活動の実現と比較」(林俊成との共著、『東京外国語大学コーパスに基づく言語学教育研究報告』 6:91-103、東京外国語大学大学院総合国際学研究院、2011年3月)、「日台会話新歌 ―― 台湾俗文学における日台混交文歌謡冊子」(『アジア・アフリカ文法研究』 33:61-98、東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所、2005年3月)、などがある。

三田 牧(みた まき)
神戸学院大学人文学部准教授。文化人類学。
1972年生まれ。京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程研究指導認定退学。博士(人間・環境学)。
主な業績に、『海を読み、魚を語る ―― 沖縄県糸満における海の記憶の民族誌』(コモンズ、2015年)、Palauan Children under Japanese Rule: Their Oral Histories (Senri Ethnological Reports 87, National Museum of Ethnology, 2009)、「想起される植民地経験 ―― 「島民」と「皇民」をめぐるパラオ人の語り」(『国立民族学博物館研究報告』 33(1) : 81-133、2008年)、などがある。

藤野陽平(ふじの ようへい)
北海道大学大学院メディア・コミュニケーション研究院准教授。文化人類学。
1978年生まれ。慶應義塾大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。博士(社会学)。
主な業績に、『台湾における民衆キリスト教の人類学 ―― 社会的文脈と癒しの実践』(風響社、2013年)、「ユネスコ非加盟国の台湾の世界遺産登録に向けた動き ―― 社会的文脈によって揺れる文化遺産」(河合洋尚・飯田卓編『中国地域の文化遺産 ―― 人類学の視点から』(国立民族学博物館調査報告136、国立民族学博物館、2016年)、「旧植民地にて日本語で礼拝する ―― 台湾基督長老教会国際日語教会の事例から」(鈴木正崇編『森羅万像のささやき ―― 民俗宗教研究の諸相』風響社、2015年)、「東方地中海への / からのマリア信仰 ―― 九州北部の事例にみるグローカルな展開」(野村伸一編『東アジア海域文化の生成と展開 ―― 〈東方地中海〉としての理解』風響社、2015年)、などがある。

飯髙伸五(いいたか しんご)
高知県立大学文化学部准教授。社会人類学、オセアニア研究。
1974年生まれ。東京都立大学大学院社会科学研究科博士課程単位取得退学。博士(社会人類学)。
主な業績に、“Remembering Nan'yō from Okinawa: Deconstructing the Former Empire of Japan through Memorial Practices.”(History and Memory Vol.27 No. 2, pp. 126-151, 2015),“Conflicting Discourses on Colonial Assimilation: A Palauan Cultural Tour to Japan, 1915.”(Pacific Asia Inquiry Vol. 2, No. 1, pp. 85-102, 2011),「南洋庁下の民族学的研究の展開 ―― 嘱託研究と南洋群島文化協会を中心に」(山路勝彦(編)『日本の人類学 ―― 植民地主義、異文化研究、学術調査の歴史』関西学院大学出版会、175-208頁、2011年)、などがある。

石垣 直(いしがき なおき)
沖縄国際大学総合文化学部教授。社会人類学、台湾地域研究、沖縄地域研究。
1975年生まれ。東京都立大学大学院社会科学研究科博士課程単位取得退学。博士(社会人類学)。
主な業績に、『現代台湾を生きる原住民 ―― ブヌンの土地と権利回復運動の人類学』(風響社、2011年)、「祭り・年中行事にみる沖縄文化の歴史と現在 ―― ハーリー、綱引き、エイサー」(沖縄国際大学宜野湾の会編『大学的沖縄ガイド ―― こだわりの歩き方』昭和堂、2016年)、「土地をめぐる複ゲーム状況 ―― 台湾・ブヌン社会の事例から」(杉島敬志編『複ゲーム状況の人類学 ―― 東南アジアにおける構想と実践』風響社、2014年)、「先住民族運動と琉球・沖縄 ―― 歴史的経緯と様々な取り組み」(沖縄国際大学公開講座委員会編『世変わりの後で復帰40年を考える』東洋企画、2013年)、などがある。

上水流久彦(かみづる ひさひこ)
県立広島大学地域連携センター准教授。社会人類学。
1968年生まれ。広島大学大学院社会科学研究科博士課程後期修了。博士(学術)。
主な業績に、『台湾漢民族のネットワーク構築の原理』(渓水社、2005年)、『境域の人類学』(編著、風響社、近刊)、『交渉する東アジア 近代から現代まで』(編著、風響社、2010年)、などがある。

目次

 まえがき   遠藤 央

台湾と旧南洋群島におけるポストコロニアルな歴史人類学の可能性   三尾裕子
―― 重層する外来政権のもとでの脱植民地化と歴史認識 ――

 第1部 日本の植民地支配と国際環境
委任統治・信託統治と「日本」   遠藤 央
―― 戦後の始まりあるいは記憶と忘却のずれについて ――
台湾における日本仏教の社会事業   松金公正
―― 一八九五~一九三七 ――
言語接触と植民地    林 虹瑛
―― 最初の官製「日本語‐台湾語」教科書『新日本語言集』を中心
に ――

 第2部 複数の文明・政権を跨ぐ記憶
パラオの語りにみる植民地経験のリアリティ   三田 牧
植民地台湾の生活世界の「日本化」とその後    植野弘子
―― 旧南洋群島を視野にいれて ――
台湾における「日本語」によるキリスト教的高齢者ケア   藤野陽平
―― 社団法人台北市松年福祉会玉蘭荘の機関誌分析より ――
 
 第3部 脱植民地化の試み
パラオ・サクラカイ   飯髙伸五
―― 「ニッケイ」と親日言説に関する考察 ――
交錯する「植民地経験」   石垣 直
―― 台湾原住民・ブヌンと「日本」との衝突・接触・邂逅 ――
台湾の植民地経験の多相化に関する脱植民地主義的研究   上水流久彦
―― 台湾の植民地期建築物を事例に ――

あとがき   植野弘子
編者・執筆者紹介
索引


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