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グローバリズムと租税国家の危機タックス・ヘイヴンの経済学

タックス・ヘイヴンの経済学 グローバリズムと租税国家の危機

A5判 338ページ
価格:4,400円 (消費税:400円)
ISBN978-4-8140-0302-0 C3033
奥付の初版発行年月:2021年02月 / 発売日:2021年02月上旬
発行:京都大学学術出版会  
発売:京都大学学術出版会
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在庫あり

内容紹介

「パナマ文書」が世界に突き付けた租税国家の抜け穴。IT化によって多国籍企業の経済活動は見えにくくなり、タックス・ヘイヴンによる世界の税収ロスはOECDの試算で2400億ドルを突破した。税逃れに国家はどう対抗するのか。GAFAに代表される多国籍企業への課税実態に迫ることで、新たな国際租税制度の可能性を論じる。

著者プロフィール

中村 雅秀(ナカムラ マサヒデ)

立命館大学名誉教授.京都大学大学院経済学研究科博士課程単位取得満期退学,博士(経済学).阪南大学,立命館大学,金沢星稜大学教授を歴任,一橋大学, British Columbia University で兼任教授を務めた.専門は国際経済学.主な著作に,『多国籍企業と国際税制』(東洋経済新報社,1995年),『アジアの新工業化と日本』(青木書店,1997年),『開発と世界経済』(ミネルヴァ書房,2000年),『国際移転価格の経営学』(清文社,2006年),『多国籍企業とアメリカ租税政策』(岩波書店,2010年(第11回租税資料館賞受賞)),他多数.共訳書に『多国籍企業と企業内貿易』 (G. K. ヘライナー著,共訳,ミネルヴァ書房,1982年)がある.

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

はじめに

序章

第1章 タックス・ヘイヴンの起源と定義
(1) タックス・ヘイヴンの起源
  起源1:多国籍企業(人)と2つの住所
  起源2:スイスと銀行守秘法
(2) グローバライゼーションとタックス・ヘイヴン
  タックス・ヘイヴン・リスト
  ブラック・リストから共通報告基準(CRS) へ
  タックス・ヘイヴン事業体と「郵便箱会社」
  『パナマ文書』と『パラダイス文書』

第2章 直接投資の「幻影化」とオフショア事業体
(1) 直接投資とタックス・ヘイヴン
  世界の直接投資とタックス・ヘイヴン
  U.S.のタックス・ヘイヴン直接投資
  U.S.のTH投資と金融化,サービス化
(2) タックス・ヘイヴンと導管事業体
  導管事業体
  導管投資基地(1)=オランダ
  導管投資基地(2)=香港
  導管投資基地(3)=モーリシャス

第3章 アメリカ多国籍企業のタックス・ヘイヴン利用
(1) MOFA(CFC)の事業活動とタックス・ヘイヴン
  US MOFA の地域別・産業別経営指標
  タックス・ヘイヴン MOFA の実態と利益移転
(2) タックス・ヘイヴン子会社利用の実態
  タックス・ヘイヴン子会社の爆発的急増
  オフショア金融資産と税
  租税回避18ケース

第4章 アップル・アイルランドの租税回避とU.S.法
(1) アップルの租税回避スキーム
  ダブル・オランダ・アイリッシュ・サンドイッチ
  アップルの租税回避スキーム
(2) アップルの所得移転とループホール
  所得移転と租税回避
  コスト・シェアリング契約と費用の移転
  サブパートFとチェック・ザ・ボックス
  アップルによるループホールの利用

第5章 ウルトラM&A, HNWI, オフショア・バンキング脱税
(1) メガ・マージャーとタックス・ヘイヴン
  巨大多国籍企業の富
  多国籍企業とメガ・マージャー
  M&Aとタックス・ヘイヴン
(2) HNWI(超富裕人)のオフショア金融
  プライベート・バンクのオフショア保有資産
  HNWI のオフショア金融資産
  ビリオネアと極端な経済格差
  富の国際的偏在と所得格差
(3) オフショア・バンキングと「脱税」
  グローバル・タックス・スキャンダル
  LGTケース
  UBSケース:「脱税請負人」=プライベート・バンカー
  HNWI の「脱税」とUS税収ロス推計

第6章 サービス貿易とタックス・ヘイヴン
(1) サービス貿易と多国籍企業
  サービス貿易の膨張的増加
  サービス貿易の4モード
  US MNC の第3モード貿易
  ヨーロッパMNC の第3モード貿易
(2) サービス貿易の拠点,タックス・ヘイヴン
  タックス・ヘイヴンのサービス貿易
  「その他ビジネス・サービス」貿易
  「その他ビジネス・サービス」貿易と導管サービス
(3)「その他サービス」多国籍企業
  キャプティブ保険
  多国籍コンサルティング

第7章 「デジタル・エコノミー」とヨーロッパDSM戦略
(1) デジタル・エコノミーとデータ独占
  デジタル・エコノミーとUS経済
  グローバル・データフローと『マッキンゼー報告書』
(2) EUデジタル単一市場(DSM)とデジタル税制
  EUデジタル単一市場論
  『I-DESI(経済・社会デジタル化)最終報告書』
  IT企業と「データ独占」
  プラットフォーマー規制とデジタル課税

第8章 知財化,R&D とパテント・ボックス税制
(1) 知財化,R&D と「企業技術優位」
  グローバライゼーションと知財化
  特許と市場独占
  パテント・ファミリーと企業技術優位
  US MOFA の R&D 寄与率とタックス・ヘイヴン
(2) 知財貿易,移転特許,パテント・ボックス税制
  IP使用料と知財貿易
  移転特許とタックス・ヘイヴン
  各国のR&D 優遇税制
  ヨーロッパ・パテント・ボックス税制の展開

第9章 「シャドー・エコノミー」,タックス・ギャップとBEPS
(1) 財政赤字と「シャドー・エコノミー」
  主要国の財政赤字
  シャドー・エコノミーと税収ロス
  合衆国2016年『タックス・ギャップ報告書』
  クロスボーダー・タックス・ギャップ
  移転価格と税収ロス
  U.S.クロスボーダー税収ロスの推計
(2) 多国籍企業のBEPS と税収ロス
  MNC のタックス・ヘイヴン利用と所得移転
  US MNC の所得移転と税収ロス
  US MNC と外国税負担
  子会社利益とGDP
  Global 2000 の BEPS と税収ロス

第10章 租税国家の「退場」から「逆襲」へ? :合衆国の場合
(1) コンプライアンス政策の展開
  OVDPプログラムの展開
  2013年『GAO 報告書』
(2) インバージョン規制税制の展開
  インバージョン型M&A
  インバージョンの波
  「2004年改革法」
  「2014年ストップ・インバージョン改革法」
  アーニング・ストリッピング規制税制

第11章 国際租税摩擦と「国家の逆襲」:ヨーロッパの場合
(1)ヨーロッパ税金戦線
  ヨーロッパ税金戦線
  欧州委員会の対応:国家補助裁定とデジタル税
  U.S.政府の対応
(2) 租税回避ケース・スタディ
  世論,欧州委 vs スターバックス
  欧州委 vs アマゾン
  欧州委 vs イケア
  豪華ヨットとHNWIの脱税

終章 BEPS(税源侵食・利益移転)の経済学と税制の国際的調整
(1) OECD『BEPS 最終報告書』
  「BEPS」の政治経済的意義
  BEPS の経済学:6つの指標
(2) 税制の国際的調整と「アクション・プラン15」
  アクション・プラン15
  CFC税制とタックス・ヘイヴン

おわりに
参考文献
図表一覧
索  引


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