東京国際ブックフェア'98
秋田 公士
東京国際ブックフェア'98が、本年1月22日(木)から25日(日)までの4日間にわたって、昨年同様有明の国際展示場「東京ビッグサイト」で開催された。
大学出版部協会は、これも昨年同様、7つに区分された専門分野の中で、「人文・社会科学書フェア」にブースを設け、全23大学出版部の刊行図書の中から、804点を展示・販売した。
今回の出展社総数は40か国・地域からの全450社に及んだ。年に一度の出版界最大のイヴェントの名に恥じない規模といえるだろう。それだけに、決して大所帯とはいいがたい大学出版部協会にとっては、参加すること自体容易なことではない。とりわけ、実務を担当された営業部会諸氏の苦労は大変なものがあったことだろう。まず、そのことに対して感謝の意を表したい。
協会ブースの入場者は、総計3957人を数えた。これも、決して小さな数字ではない。協会のブースを目的に来場した人もあるだろうが、今回初めて、大学出版部協会の存在、各出版部の存在を知った人も多いだろう。その意義は、書籍の売上金額だけでは計れないものがある。
しかし同時に、「ブックフェアとは何だろう」という疑問も涌いてきた。編集部会長としての公式見解ではないことを明記した上で、個人的な感想を記してみたい。
ブックフェアの来場者は、何を目的に足を運んだのだろうか。ふだん目にすることの少ない本を求めて? それも一つの目的ではあるだろう。しかし、あの広い会場の、一つひとつのブースを丹念に見てまわるのは相当に疲れる。フェアのために上京してきた人もあるだろうが、本を探すだけなら、神田近辺の書店を歩きまわる方が楽だ。
いうまでもなく、フェア(Fair)は展示会であり見本市だが、お祭りであり、縁日でもある。いわゆる「ハレ」の場として、日常的な書店探訪とは違うものを、入場者は求め、期待しているのではないだろうか。同時に開催された各種のセミナー、サイン会、洋書のバーゲン、造本装幀コンクール展などには、そうした要素も含まれているが、協会としては参加していない。最近では協会加盟出版部の中にも、CD―ROMなどによる電子出版を手がけるところが増えてきたが、そのデモンストレーションがあるわけでもない。
思いつきにすぎないが、本は展示せず目録にとどめ、協会の意義や目的を訴えるパネル展示をすることも、一つの参加の仕方ではあるだろう。ブースに直角にパネルを並べれば、全加盟出版部の簡単な紹介も可能だ。入場者がパネルを見ている間は、エンドレステープで耳からもメッセージを送り込む。
現在、編集部会では協会のホームページを作成中だが、これが完成すれば、何台かのパソコンを置いて、入場者にアクセスしてもらうといいだろう。関心を持った人には、大学出版部の本はどうすれば検索できるのか、どんな購入方法があるかを記したリーフレットを渡せばよい。
本は中身が生命(いのち)――「質の高い本を並べることこそ最高・最大の普及活動である」という考え方が間違っているとは思わないが、それだけではお祭り(フェア)にはならない。
書店型の展示とはひと味違う何かを来年以降のブックフェアには期待したい。
(法政大学出版局)
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