第4回IPA国際著作権シンポジウム

植村 八潮

 国際出版連合(IPA)の第4回シンポジウムが、1月22日(木)から24日(土)までの3日間、東京国際ブックフェア会場に隣接する東京国際会議場で開催された。

 ベルヌ条約百年を記念して始まったこの国際著作権シンポジウムは、今回初めてヨーロッパを離れアジアの会場で行われた。参加登録者は、出版者、著作者、法学者、図書館、関連団体の著作権担当者など国内162名、海外146名に加え、会議参加のみの聴講参加者50名であった。

 初日は開会式に引き続き、斉藤博筑波大学教授(著作権法学会会長)およびウルフ・フォン=ルシアス国際出版者著作権者協議会議長による基調講演が行われた。今回のテーマである「変化する市場における出版者」を受けて、デジタル化、ネットワーク化によって大きく出版環境が変わる中でも、出版者が文化の伝達者として創造的役割を発揮する必要性が強調された。さらに法的保護について議論を深めることが提案された。

 八つのセッションは、それぞれ「出版者の権利−出版者の創造的役割の法的位置付け」「電子的著作権管理システム(ECMS)」「ネットワークの価値革新」「パートナーとの提携と展望」「アジアの経験」「著作権管理システムによる国際的取引」「権利の執行」「決議・勧告」である。さらに会場ではECMSのデモンストレーション等が行われた。なかでもアメリカ出版協会が中心となって開発し、IPAも支持を表明しているDOI(デジタル著作物識別子)システムや、北川善太郎京都大学名誉教授が提唱する著作権のマーケットモデルであるコピーマートに関しては、講演で参加者の反応もよくデモも注目を集めた。

最終セッションでは次の四つの決議が採択された。

■出版者の権利ならびにデータベースに対する排他的権利に関する決議
■デジタル環境における著作権管理技術に関する決議
■著作権をめぐるパートナー間の協力に関する決議
■著作権の遵守に関する決議

 特に第一決議では、日本における著作者隣接権としての「出版者の権利」立法の推進をIPAとして支持する表明があった。
(東京電機大学出版局)


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