歩く・見る・聞く――知のネットワーク27
玉川大學教育博物館
高野 修司
東京都町田市、神奈川県横浜市・川崎市にまたがる玉川学園。58万平方メートルにも及ぶ広大なキャンパスの一角に教育博物館はある。最近では、NHKで「シュヴァイツァー関係資料」、『カレッジマネジメント』(リクルート)で「パイプオルガン」が取り上げられるなど、メディアの取材も増えている。
そもそもこの教育博物館のルーツは、「子どもにホンモノを見せたい」という創設者・小原國芳の教育方針で集められた教育資料にある。初めから教育博物館をつくるという夢をもちながら収集したコレクションは、いまでも教育実践のなかで利用されている。「たとえば貴重な江戸時代の教科書でも、博物館から借りていって、授業で実物を子どもたちに見せるんです。『これがホンモノだ』と。そうしたら子どもたちは声を上げて喜びますよ。ホンモノが一番です」と以前に小学部教諭の経験がある博物館の白柳弘幸学芸員は目を輝かせて語った。また、学部学生と通信教育部学生に向けて開講されている学芸員養成課程で、博物館実習の場としても利用している。教育現場の教材として役立つミュージアム――いまでも、創設者の理念は生きているのだ。
玉川大學教育博物館は、昭和44(1969)年、学園創立40周年記念展のおりに、玉川大学図書館内に開室した「教育博物資料室」を前身とする。さらに内容の充実を図り昭和62(1987)年に「玉川学園教育博物館」として現在地に開館し、開館10周年を機に大学附置機関に移行した。ユニバーシティ・ミュージアムは、欧米の大学ではあって当たり前の存在だが、日本でも文部科学省により設置を強く要望されているものなので、大学関係者の来訪も多いという。
3万5000点を超える収蔵品のなかから、常設展示の教育史資料と企画展示の美術資料という二つの空間が学芸員の手によって演出されている。
第一展示室には、江戸時代の藩校・私塾・寺子屋から、近代学校制度が生まれた明治期、大正の新教育運動へと続く日本教育史の流れにまつわる資料が並ぶ。明治の小学校検定教科書、国定教科書、墨ぬり教科書、暫定教科書と教科書が多いのが特徴といえよう。なかでも今回初公開に踏み切ったという「旧外地教科書(旧植民地教科書)」は逸品。台湾からの訪問客もあるほどの貴重な資料である。
第二展示室は、イコンなどの宗教画(『神秘を彩るイコン』玉川大学出版部より好評発売中)を中心に贅沢なスペースをとり、落ち着いた雰囲気の美術館といった趣き。館蔵資料には玉川学園の卒業生・父母・教職員、さらには玉川学園の教育に賛同される篤志家から寄贈を受けたものが多数あるという。全人教育で知られる玉川学園も、学校と家庭を結ぶコンピュータ・ネットワーク「CHaT Net」(Children Homes and Teachers Network)のネーミングに表現されているように、新たに「三位一体の教育」という方針も掲げている。博物館にもそのコンセプトが生かされているといってよかろう。
ひととおり館内をまわって受付に戻ると、「『グールド鳥類図譜』デジタルライブラリー」(CD-ROM『“鳥人”―ジョン・グールドの世界』玉川大学出版部より絶賛発売中)という看板と1台の端末が目に飛び込んできた。その場に立っていた山口高弘館長代理に尋ねてみると、これがこの博物館の最大の目玉だという。「2946画面を鮮明な色で再現しているデジタルアーカイブです。これは世界で唯一ここでしかみられませんから、ぜひ足を運んでください」。
学校全体にしろ出版部にしろ、世間のイメージは「教育の玉川」である。そのなかにある教育博物館は、玉川学園のイメージを最大限に表現している。学園にいらっしゃった折りには、ぜひ立ち寄ってみてはいかがでしょうか。一見の価値あり!
なお、出版部発行の月刊教育雑誌『全人』にて、教育博物館の「館蔵資料紹介」を連載している。ご関心の向きは、ぜひご一読を。
(玉川大学出版部)
所在地 〒194-8610 東京都町田市玉川学園 6-1-1
小田急線玉川学園前駅より徒歩15分
※お車での来館はご遠慮ください。
開館時間 月〜金曜日 9:00〜17:00
(ただし、入館は閉館の30分前まで)
休館日 土曜日・日曜日・祝休日
玉川大学が定めた休日(夏期休暇・年末年始休暇ほか)
その他、展示替えなどのため臨時に休館することもございますので、ご来場の際は電話にてご確認ください。
入館料 無 料
電 話 042-739-8656
FAX 042-739-8654
http://www.tamagawa.ac.jp/sisetu/hakubutu/
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