AJUPオピニオン
新生国際部会のテーマと取り組みかた
これまで6回にわたる日韓中合同セミナーの運営など、協会のなかで国際関連活動を担ってきたのが国際専門小委員会で、このたびその役割が強化・拡張されたものとして、新しい国際部会がスタートした。
思えば日韓から日韓中へと広がる四半世紀にも及ぶセミナー交流史に、昨今のグローバル化現象を重ねあわせると、これはもう協会組織にあって必然的な誕生かもしれない…、という手前ミソな自信の一方で、さて何からどう手をつけたらいいのかという広漠感がないわけでもない。当面の活動の柱は、合同セミナーの企画と運営になるだろう。これは揺るがせにできない仕事である。また過去のセミナーの中身を検証して、版権ビジネスなど「出版の国際化」を意識しながら、各出版部にもフィードバックできる業務モデルのようなものが模索できればよいとも考えている。
次にもう少し将来の話としては、三国以外のアジアの大学出版部や、AAUPなど欧米の大学出版部との交流の土壌作りをどうしていくか、がある。それも基本は、人間の交流にとどまらず、版権など「出版の交易」を意識すべきであろう。もちろん目的物はたやすく樹上から落ちて手に入るとは思われぬ。が、新生国際部会の「国際」の意味は、抽象的なものではなく、実質の形が見えるようにしてこそ、新時代に相応しい役柄となるはずである。以上、第一回国際部会に提示された「2003年度国際部会活動計画(案)」に沿ってまとめてみた。
笹岡五郎
(専修大学出版局・国際部会副部会長)
電子部会のめざすこと
日本大学出版部協会では、この4月にウェブサイト運営委員会を発展解消して、電子部会を新たに構成した。IT部会、電子出版部会、などいくつか名称の候補は挙がったが、なかなか決まらず、電子部会となった。この名称の落ち着きのなさが、電子部会の扱う課題の拡がりを示している。
日本大学出版部協会ウェブサイトを立ち上げたのが、1998年である。その当時は、まだウェブサイトは八大学出版部でしか開設されていなかった。いまやウェブサイトなしには学術出版の営業販売は考えられなくなっている。しかし、一方で欧米の動向を見ると、学術コミュニケーションの形態が、紙の本から電子媒体に大きく変わりつつある。日本においても、学術出版のあり方を再検討する必要に迫られている。そこで電子部会の第一の活動目標はEbookなど電子メディアによる学術出版の実験を開始することである。
さらにインターネットが教育環境、方法を大きく変えつつある現状がある。これまで大学などの講義録、教科書を出版活動の柱としてきた大学出版部のあり方を見直さなければならない。第二にEラーニングの実情と課題を研究し、インターネット環境での教科書のあり方を検討する。第三にメールマガジンの機能を有効に用いて、日本大学出版部協会の広報としての機能を強化する活動をすることである。
日本大学出版部協会のメールマガジンをぜひご購読いただき、電子部会の活動にも関心を持っていただければ幸いである。
山本俊明
(聖学院大学出版会・電子部会部会長)
関西支部の発足
先ごろ行われたAJUP2003年度通常総会で、関西支部の設置が正式にきまった。渡辺幹事長時代になって次々に打ち出された改革の一環というところだろう。あろうことか、私がその初代支部長に任じられた。その運営構想やいかに、というのがこのコラムの小稿に与えられたテーマである。
関西地区には、現在五大学出版部がある。当初、中部地区も含めて七大学出版部でのスタートが考えられていたらしいが、やはり地域的なまとまりということから、とりあえずは五大学出版部で始めたいと思う。中部二大学出版部には、課題などにより適宜オブザーバー参加をお願いしてはどうかと考えている。
まずは、現場でのお互いの顔を知ることからであろう。これまでは、それぞれが総会や年末懇親会で、あるいは夏期研修会で会っているだけであった。そこで、それぞれの大学出版部を訪ね合うことを一つの目標にして、巡回支部会を年三回程度やってみたい。少なくとも今年度は、「支部活動」らしき大風呂敷は広げず、お互いの足許を確かめ合う程度にしておきたい。
とりあえずは、AJUPが取り組むべきスタンダードな共通課題に、ささやかな事例や対応策をもちより、東京では「よう喋らん」レベルで親しく対話できればよいのではないか。
支部といってもたった五つである。「共同」するには、あまりにも規模が小さい。圧力を形成する力など最初からない。だからそういう目標を先送りしようというのではない。夢は夢として保持しておこう。
私が密かに思っている共通課題は、自らも含めて組織基盤の強化である。これは、経営そのものに絡むから、協会レベルをはるかに越えてしまう問題である。新しい出版会が関西に誕生することもうれしいが、より以上に現存の出版会の組織強化が望まれる。それが「喋り」で、突破口の一つや二つ開けられないものだろうか。
小野利家
(京都大学学術出版会)
成り行きにまかせて
2003年、大学出版部協会は「日本大学出版部協会」という名称で、40周年を迎える。個人的な経緯を言えば、最初は上司の命ずるままに協会夏季研修会の末席に連なり、つわもの先輩の難しい議論を遠巻きに聞きながら、1982年からは「日本生命財団出版助成」の担当者として参加して原価計算と申請書類作りに悪戦苦闘し、1998年からは国際担当幹事として三カ国セミナーの運営に四苦八苦、いつの間にか大学出版部協会とは20年の関係ができたことになる。単なる成り行きで、何故20年間も協会との関わりが保てたのか我ながら不思議である。
知り得る範囲で振り返えれば、大学出版部協会は、各部会、幹事会共に単なる集合体であるように見えてそうであったことは一度もなく、常に意志と方向性を持った運動体として機能してきたことに気がつく。営業部会の「図書館納本制度」「国際ブックフェア」、刊行助成部会の「全国私立大学助成制度調査」、編集部会の機関誌「大学出版」の編集、ウェブサイト委員会の「協会ウェブサイト」などはその目に見える成果であり、大学出版部協会の意思力と方向性の中で「成り行きの20年間が過ぎたのだ」という至極単純な理由があったことに気が付く。
21世紀の協会活動はその意思力と方向性がより明確化して加速度を増しそうな気配である。渡辺幹事長に至っては「バーチャルな、しかしあり得る近未来」という文章で「五〇大学出版部によるAJUP年次総会」を描いている。その赫々たる戦果は「維持的活動」と「創造的活動」の積み重ねによって実現するらしい。遠大であるが「あり得る近未来」はそこから始まるのだろう。新設国際部会の部会長としては「成り行きの奥を深めて」国際部会の「意思力と方向性」を「創造的活動」まで高めてみるか、と、またもや成り行きに乗ってしまいそうだ。
三浦義博
(東海大学出版会・日本大学出版部協会国際部会長)
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