AJUPオピニオン
思うこと
「今私は、今日のことをやっている。明日のこともある。明後日のことやそのあとのことは、今のプランを実現してこそ語れる」「官僚的な会社はルールがプロセスより優先する。ルールがあり、プロセスがあり、ゴールとなる。ゴールは何かが大切。ルールが優先しては良い商品は生まれにくい」と、あのカルロス・ゴーン氏はいう(「car情報」)。これをわが大学で考えればどうか。とかく会議が多い、そして長い、理屈が多い。それが何になるんだと、ゴーン氏の声が聞こえてきそうだ。
出版物で研究教育の成果を世に問うのが、大学出版の使命だろう。その過程は、つらいものがある。普及啓蒙という使命もあるが、現実はペイするかが問題。
何を基準に、刊行しているのかと問われると簡単には伝えられないもどかしさがある。著者と版元の意志疎通が大切だし、経験による判断が優先している。ゴーン氏の実践哲学、日本でいう「成せば成る成さねば成らぬ何事も成らぬは人の成さぬなり」の古の諺も耳に痛い。
袖山松夫(東京農業大学出版会)
縁の下の力持ち
放送大学は自前の放送局を持つという世界でも例のないユニークな通信制大学である。使用する教材には「放送教材」と「印刷教材」とがある。
その印刷教材を編集・発行するのが放送大学教育振興会の主な役割である。だが、制作条件は恐ろしく厳しい。9月末の原稿締め切りから約半年で本を作りあげるのである。4月には放送授業が始まるから3月刊行は至上命令だ。
原稿が予定通りに入ってくればいい。なにしろ執筆陣は各分野で一流の先生がたばかりだ。学会に講演会にと毎日飛び回っている。原稿執筆の時間などなかなかとれないのだ。そこへ朝駆け夜討ちをかけつつ、三拝九拝して書いていただく。やっといただいた原稿にも書きなぐりで不完全なものが多い。それを編集者がカバーしてなんとか綻びが見えないくらいまでに仕上げるのだ。もしミスがあれば直ちに正誤表を発行する。質問には速やかに回答する。縁の下の力持ちたちは今日も頑張っている。
阿部孝郎(放送大学教育振興会)
経営の信念
『ドラッカー名言集――仕事の哲学』をゆっくり、楽しみながら読んでいる。『現代の経営』や『マネジメント』は読んだが、もう一つ頭に残らなかった。こうして抜き出した名言には、うなずくことばかりである。
私は、多くの経営書を読む必要はないと思っている。自分の経営信念を創り、支えてくれるものがあれば、たとえ一冊でも十分かも知れない。
私の経営の信念について影響を与えた書物の著者を列記すれば、松下幸之助、稲盛和夫、船井幸雄ということになる。特に、前二者は製造業の創業者として成功された方で、その言葉は大変に重いものがある。
小会は財団法人組織であり、私個人のものではない。しかし、個人としての経営責任は、当然のことだが常に問われている。しかも、「良い経営」であることが求められている。そのためには、小さな経営体であっても、“信念”を持ち続けなければならないと思う。
伊藤八郎(名古屋大学出版会)
関西支部だより
メディア発信基地をめざして
大学出版部協会関西支部の設置が2003年度の通常総会において決議された。この支部の設置にいたるまでの経緯については、これまでの関係者各位の並々ならぬご努力の賜物であると思う。
早速、本誌第57号には、小野利家初代支部長(京都大学学術出版会)が運営構想など抱負をご執筆されていて、今後の発展が期待される。
ところで、顧みると、この関西支部設置構想の嚆矢に当たるとは思わないが、本協会25周年記念行事の関係会議の席上で、関西大学出版部に意見を求められた際に、「現在、関西からは本学のみの協会加入になっているが、すでに他大学出版部も存在し、また、出版部(会)設立の動きも3、4大学にあるので、近い将来には組織強化のため関西支部の設置も意義深い」と開陳したことがある旨、当時の担当者から伝承している。
それから15年経過した現在では、協会加入出版部(会)が16大学から27大学に増加し、関西地区からは5大学が加入している。一方、知り得る限りでは、関西地区には未加入大学出版部(会)が3大学、また出版部(会)設立の動きがある大学が2、3あると聞く。大学における研究成果の発表は、今日、社会が求めている「大学の評価」に深く関わるため、これからも大学出版部(会)の設立は必至だと思われる。
国立大学の独立行政法人化、また、少子化進行の問題、そして大学そのものの発展に多大の影響を及ぼすことは十二分に予測できるし、他方、わが国の経済情勢、出版業界の動向などを勘案すれば、われわれ大学出版部(会)自体にも当然ながら潮流の影響を受けることになろう。
このような状況を踏まえて、関西支部として組織の強化、情報交換、親睦団体にとどまらず、歴史と伝統文化を大切にする、特色のある関西地区のメディア発信基地となればと思う。
荒木紀忠(関西大学出版部)
編集後記
札幌での研修会の後、網走の「数学ワンダーランド」と紋別の「流氷科学センター」を訪ねた。
想像より狭かった…。千歳〜女満別の国内最後のYS−11。もちろんスチュワーデスの前の席はリクエストできない。
想像より広かった…。オホーツクの湖。レンタカーで10分も走らないうちに、その広さを思い知らされた。同行のM氏は、「網走から紋別まで1時間で着くよ」と出発前に言っていたが、フェラーリでも借りるつもりだったのだろうか?
……*……
日本大学出版部協会は、出版を通して様々な国際交流を行っており、殊に韓国・中国との交流は継続的・発展的に行われ、成果を上げています。『大学出版59号』では、札幌で開催された第7回日・韓・中大学出版部協会合同セミナーでの発表を中心に特集を組みました。
ここでは、「指示を待つ」、「注文を待つ」という消極的姿勢はもはや見られず、積極的な働きかけを行っている姿勢がうかがえます。編集部会もこういった積極性を見習いたいものです。
小野朋昭(東海大学出版会・『大学出版』編集長)
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