ペーパークラフトの四季−秋

ペーパークラフトと子供たち

畑野 光男



 最初は、息子の通う小学校の「親子触れ合い造形教室」でペーパークラフトを頼まれたことからでした。
 子供たちにモノ作りの楽しさを体験してもらうためのクラフトは、また違った難しさも有り、そういう面からも興味を持ち、引き受けることにしました。
 1年生から6年生まで、約50人の生徒さんを一度に、そして2時間以内に完成することなどの条件でクラフトを創作することになりました。
 紙を丸めたり折ったり曲げたりしながらアイデアを模索して出来たのが、丸・三角・四角を基本の形状にした動物たちでした。折り数の少ない順に紙を丸めた形の「恐竜」、三角に折った「鳥」、四角の「犬」を出来るだけシンプルな造形にして、それぞれの動物に動きを与えて完成させました。
 作り易くするため、色画用紙に展開図と作り方をプリントしたものを用意しました。
 いよいよ当日、沢山の子供達が集まってくれました。低学年生は親と一緒に作ることとし、美術の先生と父兄の方々にお手伝いしてもらいスタートしました。制作進行は、ハサミで切り抜き、折り筋を入れ、ボンドで貼り合わせて完成させる工程です。
 まず、紙の特性や取り扱い方を説明し、子供達に作りたい動物を選んでもらい、ハサミで切り抜くことから始まりました。
 初めは順調に行きそうに見えましたが、時間が進むにつれて早い子と遅い子の差が大きく広がり、折り筋、組み立てが同時進行出来なくなりました。結局、一人一人に説明が必要となってしまい、先生方のサポートでも処理出来ず、時間内に終わることが出来ませんでした。作品が未完成な子供も出てしまい、あらゆる面で勉強させてもらいました。

* * * * *

 この造形教室で嬉しかったのは、子供たちがこのペーパークラフトに対して眼を輝かし夢中になって工作している姿でした。そして「別の動物たちを家で作りたい」と持ち帰ってくれたことでした。
 今の時代、TVゲーム等のバーチャルな世界の中で遊んでいる子供が多いとマスコミなどで報道されていますが、そのようなことはないと私は信じています。
 手を使って何かを作るということは、本来人間の持つ本能でもあり、私たち大人はこういった機会を子供たちに多く作ってあげなければいけないのです。
 これをきっかけに、続けて造形教室を開かせてもらい、中学校でも美術の先生のお力添えで毎年1年生を対象に「ゆとり教育」の一環としてクラフト教室を続けています。
 おかげさまで子供向けの作品も増え、民間のカルチャースクールで、小学生向けの教室を受け持たせてもらっています。
 子供たちの創作力は無限大です。最初は簡単に見えるペーパークラフトかも知れませんが、楽しかった気持やモノ作りの達成感を心にとどめて、将来の大きな夢につなげてほしいと思います。
(グラフィックデザイナー)



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