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部会だより(電子部会)
ウェブサイトの10年と電子部会の課題
大学出版部協会でウェブサイトを立ち上げたのは98年であった。そのころはまだ9大学出版部しかウェブサイトを開設していなかった。いまは28の大学出版部がそれぞれウェブサイトをもつにいたった。この10年でインターネットの環境は劇的に進展し、ウェブサイトの役割も大きく変化した。
変化のひとつは、ウェブサイトが協会の広報的な機能を果たすことから、情報発信型を目指すことになったことである。毎月メールマガジンを発行し新刊案内を発信している。またTFMインタラクティブのインターネット放送で協会出版部が発行する書籍の紹介番組iiV Book Loungeの制作に協力している。これまでに紹介した書籍は100点を越えた。ウェブサイトはウェブサーファーを迎えることから、検索エンジンで書籍を探す方向へと大きく変わった。ウェブサイトはこれまでより書籍の販売に直接結びつく性格を持っている。
さらにウェブ上を学術情報が流通する量が爆発的に増えている。国立情報学研究所が推進する紀要論文の電子化プロジェクトが進められているし、また学会誌の電子版がJ-STAGEで300以上公開されている。学術情報を書籍として出版してきた大学出版部もこの状況の中で、どのような働きが可能かを模索する必要に迫られている。
電子部会の事業計画
法人化した協会の事業計画として、電子部会は、インターネット環境の大きな変化の中で3つの事業を進める。
第1は、協会ウェブサイトによる大学出版部の書籍の紹介である。アメリカ大学出版部協会ではBooks for Understandingという現代の課題に答える書籍の紹介をしているように現代の日本の課題に取り組む書籍の紹介をする。現在、20の主題が検討されている。
第2は、検索エンジンの機能を利用したウェブ上のブックフェアと販売である。インターネット書店と協力し、検索語で関連書籍が上位に表示され、読者が書籍を見つけ、購入しやすくなる方法を研究する。
第3は、学術書の電子化の可能性を研究し実験することである。
インターネット環境は日進月歩であり、新しい機能の開発は留まることがない。電子部会は学術情報の流通という定点を持っているが、さまざまに試行錯誤していくことになる。
関西支部だより
関西大学図書館所蔵 大阪の文藝資料――関西の文庫4
爾来、大阪は文化、出版、藝術、藝能の表舞台となった――。
織田作之助は『西鶴新論』を「西鶴は大阪の人である。大阪で生まれ、大阪で育ち、大阪で書き、大阪で死に、その墓も大阪にある」というフレーズで書き始めているが、近代文学の柱の一つとなったのは、井原西鶴らの浮世草子を中核とする町人文学であり、それは大阪の地で育ち、大きく花開いた。このことは、改めて文藝史を紐解くまでもない周知の事実である。
明治19年に大阪西区で呱々の声を上げ、今なお大阪に立地する大学の使命として、関西大学図書館は、大阪の文藝、絵画、演劇に関する資料の蒐集に努めてきた。これら一連の「大阪の文藝資料」は「近世絵画」「近世小説」「近世演劇」「近代絵画」「近代文藝」の分野からなり、平成18年4月現在で2万点に喃々とする資料が登録されている。
「近世絵画」の中には、大阪における文化サロンの主宰者ともなった木村蒹葭堂の作品や月岡雪鼎、雪斎らの美人風俗画、戯画で有名な耳鳥斎などの絵が、また「近世小説」の分野では、井原西鶴を筆頭とする浮世草子や上方読本の特徴である絵本読本などがコレクションされている。「近代演劇」では、人形浄瑠璃や歌舞伎に関する資料が多数蒐集され、明治以降の「近代絵画」では、大阪を代表する日本画家、菅楯彦をはじめ、生田花朝や菅真人ほかの作品が所蔵されている。しかし、その中核をなすのは、何といっても明治から昭和期に至る「近代文藝」資料の数かずであろう。このなかには書物だけでなく、北條秀司や今東光、難波利三、藤沢恒夫、織田作之助など、大阪と深い関わりをもった作家たちの直筆原稿も多数収められている。
現在、関西大学図書館は、所蔵資料のうち、普段公開されることのない貴重資料をホームページの「電子展示室」でデジタル画像により順次、学内外に紹介している。関西大学の誇る「大阪の文藝資料」も、近い将来、そうした新しい形態により手軽に閲覧できるようになるに違いない。
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