大学出版部協会30大学出版部
マニフェスト



■ 北海道大学出版会

未知へのAmbition――自然と人の新しい関係を探る

 「北海道における創造的地方文化の発掘に努力し、以て文化の向上に寄与し、さらに一般教養書、学術書等の刊行を通して、教育の普及、学術の振興を計る」。この発足時の精神は、今も脈々と小会の出版物に受け継がれている。この象徴的な出版物を2冊紹介しよう。
●ユニークな編集で知られる「ウォッチング図鑑」
 花の色や葉っぱの形で引く特徴ある編集で『北海道の花』と『北海道の樹』は読者の高い支持を得て版を重ねている。今春でた『札幌の昆虫』は、池内紀さんが毎日新聞「今週の本棚」で大きく紹介してくれたように、昆虫学発祥の地である札幌という地域性、単なる図鑑を超えるものを作りたいと志す著者と出版社、それを敏感に感じ取ってくれる読者との幸せな関係によって、1か月で重版した。
●「スラブ・ユーラシア学の構築」を目指して
 『国境・誰がこの線を引いたのか』も小会らしい本である。本書は北大スラブ研究センターの21世紀COE成果「スラブ・ユーラシア叢書」の第一回刊行物である。本書では、日本を取り巻く三つの国境問題、尖閣・竹島・北方領土の問題解決の方途を、ユーラシアおよび隣接地域を中心に広い視野で学ぶべく、一般向けに優しく書かれている。
 このように、小会は北の大地にしっかりと根を張りつつ、アンテナを全方向に向け「未知へのAmbition」を発信し続けていく。今後も学術専門書の刊行を中心に据えつつも、研究成果の一般向け企画の刊行に努力していきたい。



■ 東北大学出版会

東北からの知の発信基地を目指す

●設立から10年 一層の飛躍を目指す東北大学出版会
 東北大学出版会は、本年11月で創立10周年を迎える。この間、約130点の書物を刊行、最近は年間20点のペースで出版している。幸い、多くの方々から出版の問い合わせをいただいている。また、若手研究者を対象とした出版助成も軌道に乗りつつある。10周年を記念して、会報誌「宙(おおぞら)」を編集し、合本を刊行することにした。本出版会は、カラー写真が多く見た目にも美しいしかも廉価な本の出版を心掛けている。田中英道監修『西洋美術への招待』(日本図書館協会選定図書、407頁、2000円)、若山映子著『システィーナ礼拝堂天井画』(2分冊箱入、4830円)はこの例である。また中山至大他著『日本植物種子図鑑』(日本図書館協会選定図書、21000円)も好評をいただいている。
 本出版会の抱える今後の課題は、(1)編集業務の充実、(2)著者負担の軽減、(3)出版会独自の企画出版、(4)営業の強化、であるが、今後とも地道に、東北地方をはじめとする我が国の学術・文化の振興に寄与してゆきたいと考えている。
●おすすめ本
 『東北―その歴史と文化を探る』(四六判・180頁・1575円)「みやぎ県民大学」での一連の講演を収録。カラー図版を多く取り入れ、親しみやすい書物となっている。『プラトン形而上学の探求『ソフィステス』のディアレクティケーと秘教』(A5判・248頁・3150円)プラトンの秘教を探求し、プラトンが最も大切にしていたことを明らかにする。/近刊『学校を考えるっておもしろい』(A5判・1890円)、『アスベスト―ミクロンサイズの静かな時限爆弾―』(A5判・1155円)、ジェンダー法・政策研究叢書第5巻『セクシュアリティと法』(A5判・2310円)



■ 流通経済大学出版会

先端的学術研究の成果を、平易に、社会に発信する

●出版の理念
 母体である流通経済大学の建学の趣旨は、「流通問題の学術的研究と実学的教育を以って広く国家・社会の発展に寄与する」ことであります。
 小会もこの趣旨の実現のために、社会科学領域の先端的学術研究の成果を、平易に、社会に向けて発信することを出版の理念としております。上掲の「最近の刊行図書」もこの理念の元に最近刊行した、あるいは刊行予定の図書であります。是非ご一読をお願いする次第であります。
●刊行図書のご注文・お問い合わせ
▼全国の有名書店でお求めいただけます。品切れの場合は、その書店にご注文ください。
▼直接小会にご注文くださる場合は、左記までお願い致します。その際は、5冊までは定価のほかに梱包・送料として500円を申し受けますのでご了承ください。それ以上は梱包・送料は当方で負担いたします。
 所在地  〒301-8555 茨城県龍ヶ崎市120
 電  話 0297-64-0001
 FAX  0297-60-1165
 郵便振替 00130-9-88616



■ 聖学院大学出版会

新しい大学の理念を表明する

 「新しい時代の新しい大学」をめざして聖学院大学が設立され、20年になろうとしている。数多くの大学がすでに存在する中で、しかも総合大学が林立する関東圏で、新たに大学を設置する意味は何かから検討され、人文学を基礎としたリベラルアーツ・カレッジの特色をもった大学づくりが目標とされた。大学出版部が設立されたのも、学生数三千人あまりの小さな大学がその教育と研究の特色を出版活動によってmake publicすることであった。この出版部も設立15年を経過した。
 この間の出版方針は、第一に建学の精神であるキリスト教思想関係の書籍を出版することである。特に、近代社会の成立、また人権思想の確立とキリスト教の関わりを主題とした出版物である。第二に研究の成果を公開し、大学の性格を明確にすることである。第三に教科書、参考書を出版し大学の教育を出版物によって開放することである。
 第一の方針のもとでは、F・W・グラーフ『トレルチと文化プロテスタンティズム』、『トレルチ、ヴェーバー、イェリネック――ハイデルベルクにおけるアングロサクソン研究の伝統』、W・パネンベルク『近代世界とキリスト教』、などを出版してきた。
 この夏に大木英夫著『ピューリタン――近代化の精神構造』を出版する。この本は中公新書として長く読み続けられてきたものであるが、このたび注記をつけ、また松岡正剛氏の「千夜千冊」の解説文「移住する会議者の宗教」を付して、新版として刊行するものである。
 この本が主題とするピューリタンは、17世紀のイギリスに登場した歴史的な群像であるが、その歴史的場は現代におよぶ基本的人権と寛容思想の源流であり、「集会の意識」を生み出した近代民主主義思想の源泉である。
 聖学院大学出版会は、大学が目指す近代的な価値の継承という理念を、出版物を通して表明しているのである。



■ 聖徳大学出版会

出版はIT革命の中にあっても人間を育成する機能を失わない

 聖徳大学出版会は文字を読み考え実践するという姿勢を絶えず構築することを目的として、本作り、出版のシステム作りに専心してまいりました。
 時代は転変するが、文字を読むという行為は創造しつづける人間の本来の力を根源的に支えるものを与えてくれます。聖徳大学出版会は、書籍を媒介として学内外にものを創造する知恵とエネルギーを提供する役割を担って、今後とも前向きに出版にとりくんでいく所存です。
 世界中が熱狂したドイツワールドカップも終わり、次は2年後の2008年に北京オリンピックがやってきます。既に予告いたしておりますように、オリンピック選手の心理面のアドバイザーでもある、花沢成一・永島正紀著による「心と身体の癒しシリーズ」の第三巻「こころとスポーツ」が予定より遅れていますが、現在執筆進行中であります。昨今、スポーツ選手にとってメンタル面の重要性が叫ばれるようになってきました。著者の長年の研究による、様々な具体例を取り上げ、心と体の関係を科学的に、かつ具体的に解明していきます。本書によってオリンピックをはじめ様々なスポーツの、今までとは違った見方ができると思います。
 そして「心と身体の癒しシリーズ」の第四巻として、日本の家族心理界の第一人者であると同時に、本学の臨床心理学研究科長でもある岡堂哲雄教授による「家族心理臨床入門」=家族力の回復にむけて=が現在執筆進行中であります。
 『今日の混沌として悲惨な事件の多発している背景には、家族関係の大きな変貌があると著者は指摘する。
 かつて家族は人間の生存と子孫の養育のため必須の制度と言われたが、現在は必ずしも「家族を持つ必要が無い」状況になっている。しかし人間にとって「子どもが健康に成長するには母子の絆」と「父親を含む親子の絆」が健全な発達に不可欠と強調し、家族力の回復にとって父親の存在が重要なポイントの一つであることを臨床心理学の視点から論究した注目の内容となっている。』どうぞご期待ください。



■ 麗澤大学出版会

エトヴァス・ノイエス

 校名の「麗澤(れいたく)」という語は、中国の古典『易経』の「象曰。麗澤兌。君子以朋友講習」という言葉に由来する。本学の創立者廣池千九郎(法学博士・1866〜1938)は、その精神を「麗澤は、太陽天に懸りて、万物を恵み潤し育つる義なり」と説明している。我が麗澤大学出版会の出版理念が、この「麗澤の精神」の発揚にあることは言を俟たない。
 一方、日々の出版活動に勤しみつつ想起することがある。「山椒は小粒で……」という言いまわしがある。我らが麗澤大学出版会のスケールは、たしかに決して大きくはない。ゆえに「小」なればこそできることを地道にやり遂げたい。「ぴりりと辛い」かはともかくも、渋くて、味のある、しかも「噛めば噛むほど味の出る」ような、価値持続性(お断りしておくが、造語である)の高い出版を目指したいと願う今日この頃である。
●最新刊5冊
▼由水常雄著『天皇のものさし――正倉院撥鏤尺の謎』(2100円)。天皇しか持つことを許されなかった、知られざる美術品・撥鏤尺の歴史と謎に迫る極上の歴史ミステリー。
▼ロバート・ハイルブローナー著/宮川公男訳『企業文明の没落』(1890円)。米国を代表する優れた経済史家が語る資本主義と企業文明の未来像。
▼吉田和男著『現代に甦る陽明学』(2310円)。気鋭の社会科学者が、現代に通じる警世・実践の書として、『伝習録』を評釈する。
▼我妻和男著『タゴール――詩・思想・生涯』(3360円)。タゴール研究の第一人者による、「現代のルネッサンス人」タゴールの全体像を描いた画期的評伝。
▼入江隆則著『衰亡か再生か 岐路に立つ日本』(2415円)。戦後論争に決着をつける力作評論集。



■ 慶應義塾大学出版会

21世紀における文明の継承を目指して

●創立60年から、慶應義塾創立150年へ
 当社は、本年の11月をもって創立60年を迎えます。同時に、1996年の社名変更以来(旧社名「慶應通信」)、ちょうど10年となります。
 この10年間で、新刊の刊行点数が年間100点を超えるまでに伸長し、この間、サントリー学芸賞、日経・経済図書優秀賞、労働関係図書優秀賞、大平正芳記念賞、和辻哲郎文化賞、山本健吉文学賞などの受賞の光栄に浴しました。
 2年後、2008年には、日本最古の私学である慶應義塾が創立150年を迎えます。この大きな節目を機に、当社では、慶應義塾の知的創造、文明の継承活動の成果発信に、さらに微力を尽くしてまいります。
●新刊のご案内
▼『「福翁自傳」の研究 本文編・註釈編』(本文編=佐志傳編著・註釈編=河北展生編著/B5判、本文編352頁・註釈編428頁、定価28,350円)福澤諭吉最晩年の代表著作に厳密な考証による本文校訂と註釈を施した研究者必携の書。
▼『セイヴィング キャピタリズム』(R・ラジャン L・ジンガレス著、堀内昭義ほか訳/定価3675円)「資本家から資本主義を救う」には? 資本市場がしばしば政治的に歪められてしまう原因を明らかにする啓蒙的経済書。
▼『歴史学と社会理論』(P・バーク著、佐藤公彦訳/定価6090円)「社会理論」は歴史研究にとって何の役に立つのか? この問いに文化史研究の第一人者が明快に答えた名著の本邦初訳。
▼『日本の英語教育に必要なこと 小学校英語と英語教育政策』(大津由紀雄編著/1890円)日本の英語教育政策を多彩に論じる「小学校英語」第3弾。



■ Cambridge University Press
 (ケンブリッジ大学出版局)


洋書・和書の垣根を越えた活動へ――世界最古の出版社

 Cambridge University Press(ケンブリッジ大学出版局)は、イギリス国王ヘンリ18世の勅許状を受け、1534年に創立された世界最古の歴史を誇る出版社である。「あらゆる分野における知識の取得、向上、保存、普及」を目的し、年間約2500点の書籍及び約200点のジャーナルを出版、世界各国にオフィスを設け、販売活動を展開している。
 日本においては、学術書・英語教育教材(ELT)・スクールテキストの販売促進を行うマーケティングオフィスとして活動をしている。2006年には版権業務が本社から移管され、翻訳権の販売も開始。今後は和書の市場にも目を向け、日本向けの出版事業等を通し活動範囲を広げていく予定である。大学出版部協会の加盟を機に、「大学出版部」として共通点を活かしながら、今後、洋書と和書の垣根を越えた活動に貢献していきたいと考えている。以下に当出版局のコアとなる二つの出版分野を紹介する。
▼学術書−人文・社会・自然科学の全ての分野において、テキストブックから専門書まで幅広く出版を行っている。日本においては、言語学、数学、地球科学の分野でニーズが高い。近年は法律、工学、医学における出版点数を増やし、学術世界のみならず、プロフェッショナルの世界にも読者を広げている。さらに今年に入り、オンライン商品の販売も始めている。▽The Historical Statistics of the United States 5 Volume Set(2006 ISBN : 0521817919)▽A History of the English Language(2006 ISBN : 0521662273)▽Wireless Communications(2005 ISBN : 0521837162)
▼英語教育教材(ELT)−コースブック、セルフスタディ、教師向け指導書など、英語教育に関わる出版物全体を扱っている。この分野ではすでに日本向けにバイリンガル版や和書の出版を手がけている。▽Cambridge Grammar of English Paperback with CD ROM(2006ISBN : 0521674395)▽マーフィーのケンブリッジ英文法中級編(2005 ISBN : 4902290057)



■ 産業能率大学出版部

確かな理論とたゆまぬ実践に裏打ちされた
“真に機能するマネジメント”の啓蒙を目指す


 産業能率大学出版部の母胎である産業能率大学の淵源は、昭和16年日本における最初のマネジメントコンサルタントと称される上野陽一が日本能率学校を設立したのに始まります。その後、昭和25年に産業能率短期大学を設立し学校法人となり、昭和53年に産業能率大学(4年制)開校の運びとなり、平成3年には大学院も開設されました。マネジメントコンサルティング機関からの生い立ち故に、産学協同の理念の下、マネジメントの理論研究(学校)と実践(コンサルティング・企業人教育)を両輪に据えたユニークな活動を展開してまいりました。この活動の成果を社会に還元し、少しでも多くの個人や組織体に役立てていただくことを意図して設立されたのが当出版部です。
 出版部の正式の発足は昭和40年ですが、その前身は昭和30年に発行を始めた「能率ガイド」の編集・出版に遡ります。31年に誌名を「マネジメントガイド」(現在、休刊)と変え、当時としては数少ない総合経営月刊誌としてスタートしました。その後、雑誌の刊行を続け、昭和40年にこれらの伝統を生かし、経営・管理(マネジメント)を中心とした単行本の編集発行を続けてまいりました。
▼SANNOマネジメントコンセプトシリーズ
(学)産業能率大学TM研究会編著「テクノロジー・マーケティング―技術が市場を創出する―」(2625円)
(学)産業能率大学総合研究所編著「チェンジエージェントが組織を変える組織変革実践ガイド」・「産能大式機能する成果主義人事実践ガイド」(各2520円)
▼矢田龍生・矢田晶紀共著「ザ・フィンランド・システム」(2310円)日本再生の鍵は、フィンランドにある。
▼大貫章著「二宮尊徳に学ぶ経営の知恵」(1800円)600の村を救済した“報徳手法”とは。



■ 専修大学出版局

ひろく学術・研究活動に寄与することと、
社会にインパクトをあたえる出版をめざす


 小局は大学関連法人の一部局であることから、株式会社の「民」と、大学関連サービス部門連合体という、両面の性格を合わせ持っている。当初は大学学長のエッセイや、明治期の建学精神解説書などが刊行された。その後、本学図書館蔵の古典籍を、料紙や織を鎌倉・室町期の原本に忠実に復刻した『古典籍影印叢刊』を出版。そういった大学主導の流れは今、刊行助成制度の形で継続している。この出版に厳しい折柄、多くの本を刊行助成に頼る傾向はやむをえず、また局員の減少もあって、多くの読者が想定されうる、良質の教養書に向かう気持ちもあるが、実行は簡単ではない。なかなか理想の場所に行き着かないのが実感だが、ともかく一歩ずつ前に進むしかないようである。
▼最近の若者たちが見えにくい、として企画されたのが香山リカ、芹沢俊介、他著『はんらんする身体』(200ページ・1890円)である。「はんらん」の意味は、反乱であり、かたや氾濫でもある。香山氏が、若者が抱えている生きづらさと、その結果表出される目に見える言動=パフォーマンスについて分析。芹沢氏が若者の身体性の基軸はすでに非身体的身体性に移行していると指摘しているのは興味深い。▼少子化の将来についてはさまざまな憶測があるが、統計図表を駆使して表題テーマに迫ったのが江崎雄治著『首都圏人口の将来像』(2940円)。さびれていく郊外風景の中で、地域作りや暮らしの構築の大切さを訴える。
▼他に、専修大学出版企画委員会編『知のツールボックス』(630円)、高齢者の自助精神、遺言、年金・福祉、葬送の個人化などを概説した、高木侃編、山折哲雄、他著『老いの相生』(2310円)がある。



■ 大正大学出版会

広い心(寛容)と思いやり(慈悲)を

 本学は、仏教精神を建学の理念として設立された大学であり、また複数の伝統教団がその設立の母体となっているユニークな大学です。仏教学、宗教学の分野においては永年の研究成果の蓄積があり、出版の中心になるものと考えています。そして、仏教の精神は、他の学問分野においても生かされており、社会福祉学、国文学、史学等、及びその周辺領域においても、他とは異なった個性ある成果を公刊ができるのではないかと考えています。
 「大正大学出版会」と改称し新たにスタートして、5年目を迎えます。学術研究成果の公開としての質の高い学術書の刊行を目指すとともに、学生・一般読者を対象としたTU選書(啓蒙・教養書)についても継続的に刊行できるよう努めていきます。
●お薦めの新刊
『対話する宗教――戦争から平和へ――』星川啓慈著
 宗教の排他性や戦争に加担する側面を冷静に見つめながらも、それらをいかに乗り越え、世界平和を構築するかを論じる。四六判 196頁 定価1995円
『現代における宗教者の育成』(財)国際宗教研究所編・弓山達也責任編集
 宗教者の宗教性、スピリチュアリティを一定のレベルで持続させ、どう高めてゆくかということは宗教教団の最も深刻な問題である。次世代の信仰の担い手の育成についての諸問題を論じる。A5判 208頁 定価2520円
『梵文維摩経』(大正大学綜合仏教研究所編)B5判 156頁 定価5250円
『釈浄土群疑論の研究』(金子寛哉著)B5判 648頁 定価13650円



■ 玉川大学出版部

高度なリベラルアーツの発信を目指す

●知の再編成に向けて
 学問の専門化、細分化が進む一方、知の広さと深さが求められている。玉川大学では2007年4月に向け、リベラルアーツ学部の開設を計画しているが、リベラルアーツとは、人文科学から社会科学、自然科学にわたる広範な学問領域のなかでの総合的な知の結集を図るものである。
 当出版部でも、従来のジャンルにとらわれず、高度なリベラルアーツを広める出版活動を展開している。最近では、今春完結した『金田一春彦著作集』(全十二巻、別巻一)、近世庶民の必読書であった浄瑠璃正本を再現する『義太夫節浄瑠璃未翻刻作品集成』(第一期、全十二巻)などの大型企画のほか、今年生誕250年を迎えたモーツァルトを多角的にとらえる『モーツァルト スタディーズ』など、幅広い分野での書籍を刊行し、時代に要請される知の枠組みの構築に挑戦している。
●教育書の充実
 また、「教育の玉川」として学界に絶えず多大な影響を与えてきた教育書にも引き続き力を入れ、今春には大学一年次教育のテキスト『大学生活ナビ』を刊行。秋には『増補改訂版 ペスタロッチー・フレーベル事典』の出版も予定している。さらに『玉川児童百科大辞典』以来の伝統をもつテーマ「こども」もひとつの柱とし、谷川俊太郎・和田誠『ともだち』、和久洋三『遊びの創造共育法』(全七巻)などにも取り組んでいる。
 玉川大学出版部は知を横断的かつ包括的にとらえ直し、最先端の出版活動をおこなう。そして、リベラルアーツの観点から、読者に多くの刺激的な視座を提供することを目指している。



■ 中央大学出版部

学術出版の明日を担う

●草創期の出版
 本学は明治18年、英吉利法律学校設立の当初から、英米の法律書の翻刻出版や、広く学問を志す人々のための校外生制度を設けて講義録を発行した。後に大審院判決録や行政裁判所判決録の編集を委託され、逐次「判決録」を刊行するとともに、法律書を中心に有為な出版を続けてきた歴史を有する。第二次大戦中は出版事業を中断せざるをえなかったが、昭和23年にいち早く立ちあがり、出版部を創設し、学内の学術機関誌・叢書等の編集発行業務を受託するなど幅広く精力的な出版活動を展開してきた。
●将来の展望
 昭和53年の多摩移転を契機に、充実した学術書刊行の機運が一層高まり、学術の振興並びにわが国の文化の向上に寄与する良書の刊行を目的する出版助成制度も整備され、大学の積極的な協力を得ながら、法律書をはじめ社会科学、人文科学、自然科学にわたる幅広い出版活動をつづけ知的生産機関としての責務を果たしてきた。
 緑豊かな多摩に移転して既に28年を経たが、この間、大学は学部・学科の新増設をはじめ研究所の充実、大学院改革などに取り組み飛躍的な発展をみた。また教育・研究環境の整備・充実にもあげて取り組んできた。出版部はこうした学内外の学術・文化の進展に呼応して学術書、専門書をはじめ多様な学術誌を刊行し、学術研究の成果を積極的に発信する役割を果たしてきたが、急速な国際化、情報化、学問の学際化の時代を迎え、出版の環境も大きく変わろうとしている。学術文化の発信という重大な社会的責務を一層自覚し、積極的な出版活動の担い手たり得たいと念じている。



■ 東京大学出版会

ユニヴァーシティ・パブリッシングを目指す

 1951年に国立大学のもとでは初めて設立された本会は、これまで六千余点にのぼる新刊書籍を刊行してきた東アジア有数の大学出版部である。執筆陣も東大関係者・日本国籍者を越えて広く世界に求めてきた。そして、その書籍は、(1)基礎的かつ開拓的な学術研究を体現する学術書・専門書、(2)基本的かつ先端的な高等教育を支える教科書・教材、{3}通時的かつ同時的な主題に取り組んだ教養書・一般書、(4)シリーズ・講座など、まさにユニヴァーシティ(総合大学)にふさわしい多種多様なもので構成されている。今後、変化する状況を見通しつつ、パブリックな行為としての出版部活動を東大キャンパスを基点にユニヴァーサルに展開していきたい。
▼東京大学の新しい英語教科書『On Campus』『Campus Wide』が誕生! ベストセラー「ユニヴァース」シリーズから「読んで面白いテクスト」「詳細な注によるナビゲーション」を継承、今回の全面改訂では日本人が英語で情報発信する場面も意識。2冊で文・理計28の、現代を語るテーマを網羅。(B5判・各約200頁・定価1785円)
▼シリーズ「都市・建築・歴史」全10巻 完結
 場所が喚起する力は絶大である。人びとの営み・思想・文化、そして時代背景は、彼らがつくり出し、そのなかで生きてきた、都市・建築に如実にあらわれている。
 本シリーズでは、建築史の関連分野(建築学・都市設計学・土木工学ならびに各国史・考古学・美術史・技術史)の第一人者が集結し、各時代の性格を明らかにするテーマに沿って、多彩な地域・対象を取り上げて個性的に論じる。
 時代軸以外の魅力的な切り口がいくつも見つかる、空前のコラボレーション。「場」と対話しつつ味わいたい。(A5判・各約400頁・定価各巻3990〜4830円)



■ 東京電機大学出版局

科学技術と教育を出版からサポートする

 初代学長の「技術は人なり」という技術教育に対する精神を踏まえ、「教育・研究の成果を元に新しい情報を世に送り、学術・知識の普及に努める」の理念を掲げて出版活動を行っている。今後も同様に、科学技術の発展と大学教育の変革に対応しつつ、出版活動を通して次代を担う想像力と意欲に満ちあふれた読者を支援していきたい。また、eラーニングやデジタルコンテンツなどに対応した21世紀の新しい教科書の開発にも積極的に取り組んでいる。そのためには、読者・著者・書店等との情報交換を一層活発化させることが必要と考えている。
 また、本学創立100周年を来年に迎えるにあたって、記念出版を計画している。これを機に、次の100年においてもよりよき出版活動を進めていきたい。
▼根日屋英之・小川真紀著『ワイヤレスブロードバンド技術』(A5判、192頁、2310円)情報通信はブロードバンド(高速大容量伝送通信)の時代に突入し、有線通信はADSLからFTTHへと進化した。さらに移動通信を主体として、有線ブロードバンドとワイヤレスブロードバンドの融合が試みられている。本書では無線LANと第4世代携帯電話を中心として、その最先端の技術を解説した。
▼日本イーラーニングコンソーシアム編『eラーニング白書2006/2007年版』(B5変型、452頁、3675円)経済産業省報告書「平成一七年度情報経済基盤整備(アジアIT人材育成)」をもとに編纂されたeラーニングに関する唯一の白書。eラーニングの最新動向と豊富な活用事例を企業・高等教育・ビジネス・システム・政策等の観点からそれぞれ分析。eラーニング関係者必携の一冊。



■ 東京農業大学出版会

21世紀の農学を人類へ発信し続ける

 東京農業大学出版会は、初代学長横井時敬博士の「大学教育の民主化運動」に呼応して、大正13年に東京農業大学出版部として設立され、『東京農業大学講義』『農大甲種講義』を刊行、当時の農業教育に貢献してきました。
 以来、東京農業大学刊行会を経て東京農業大学出版会へと発展し、80年を越える長い歴史と伝統の中で、時代の農学をわかりやすい出版物を通して社会へ伝える役割を担っています。
 現在東京農業大学では、全世界的な課題となっている「食料・環境・健康・資源エネルギー」について、あらゆる可能性に挑戦し、最先端の農学によってこれらの課題に取り組んでいます。一方で自然や動植物は、私たちの日常生活には欠かせない身近な存在になっており、里山が見直されるなど、人間と自然や動植物との共生が重要視されてきました。
 この様に農学のあり方や求められ方が多様化している中で、当出版会は常に社会のニーズに対応し、東京農業大学と社会における文化・教育活動を結ぶ役割と使命を認識しつつ、継続した出版事業を展開していきます。
●好評!刊行物のご案内
▼東京農大の原点である「実学」をテーマにした
 『実学の森』シリーズ
▼国内のキャンパスほか、海外の姉妹大学や研究調査地などをリアルな写真集にまとめた
 『100の素顔』シリーズ
●新刊書のご案内
▼『森を歩き 森を学び 森を楽しむ』河原輝彦 著 税込価格:2205円
▼『新世紀の食と農と環境を考える』
 第5回世界学生サミットから/東京農業大学 編 税込価格:2310円



■ 法政大学出版局

西洋の知を紹介し、日本の伝統を探り、
そしていま、東アジア文化圏へ――


 小局は1948年12月、法政大学創立70周年事業の一環として設立され、以来58年間にわたって、およそ三千点におよぶ専門研究書、教科書、一般教養書を刊行してまいりました。
 とりわけ翻訳シリーズ《叢書・ウニベルシタス》は、現在850点に達し、主として西洋の知を網羅的に紹介する「書物による大学」として、高い評価を得ております。最近では、H・アーレント/青木隆嘉訳『思索日記・I II』、J・アーリ/吉原直樹監訳『社会を越える社会学』などが各紙誌で紹介され、話題をよびました。
 一方、書き下ろしのシリーズ《ものと人間の文化史》は、「もの」をその根源から問い直し、「もの」とのかかわりで営々と築かれてきた暮しの具体相を通じて歴史を捉えます。一般読者の熱い支持を得て、『結び』『筆』『臼』『藁』『和船』『野良着』『食具』『道』『捕鯨』『もののけ』など134点を数えます。スタートしてから40年近くを経て、今なお多くが版を重ねています。
 また近年、東アジア関連の著作の翻訳・紹介にも力を入れています。とくに《韓国の学術と文化》全30巻(既刊、兪弘濬『私の文化遺産踏査記』など24点)は、西欧偏重の学界・読書界に一石を投じたものと自負しております。単行書では、李英美『韓国司法制度と梅謙次郎』、丸山直起『太平洋戦争と上海のユダヤ難民』、任展慧『日本における朝鮮人の文学の歴史』、呂元明/西田勝訳『中国語で残された日本文学』、銭存訓/宇津木・沢谷・他訳『中国古代書籍史』なども話題となりました。銭存訓/久米康生訳『中国の紙と印刷の文化史』を鋭意制作中です。
 今秋には、松岡未紗『衣(ころも)風土記・I〜IV』の刊行を開始します。日本人の衣服の原点を求め、失われた日本人の心を再発見する旅の記録です。ご期待下さい。



■ 武蔵野大学出版会

市民の生涯学習に貢献する

 武蔵野大学出版会は、設立が2005年4月、大学出版部協会加盟が2006年5月である。今まさに「初心」の最中にいる。「初心忘るべからず」と言える日はまだ遠いが、初心の新鮮さをむしろ強みに変えていきたい。
 当出版会の使命は、武蔵野大学教員の研究成果の発表の場の創出と、一般の人にも享受できる形での社会への還元である。この両方のバランスのとれた刊行を心がけたい。
 武蔵野大学は、多数の公開講座や通信教育部などにより、在学生の教育と併せて市民の生涯学習を支援する活動にも熱心である。それを受けて当出版会も教養書の出版を通じて市民の生涯学習に貢献することを特徴の一つとしていきたいと考えている。
 研究成果の発表については、大学の図書出版助成制度により、年間2〜3点の学術書の出版費用が助成され、「武蔵野大学シリーズ」として当出版会が刊行している。
 ―武蔵野大学シリーズより―
▼佐藤晴雄著『メアリランドへ行こう―フレデリック・ダグラスとその時代』(2625円)1838年アメリカ、一人の黒人青年がボルチモアから汽車に乗った。自らも奴隷出身の奴隷解放論者F・ダグラスの足跡を現地にたどる。
▼本多周爾著『発展と開発のコミュニケーション政策』(2625円)インフラ整備の容易化のために通信衛星を選択した東南アジア諸国。衛星放送による外国文化の流入の前に、メディアによる国民統制の思惑ははずれ…。
▼菅富美枝著『法と支援型社会―他者指向的な自由主義へ』(2625円)危難に遭った人を助けないと罪に問われる強制社会でもよいのか? 人助けをしたいのも人の本性。ならばそれを容易にする仕組みを作るのも法の役割。



■ 武蔵野美術大学出版局

アートと社会をむすぶ

●美大ならではの視座
 生涯学習社会における美術、デザインの専門教育にとりくむため、武蔵野美術大学は2002年に造形学部通信教育課程を開設、オリジナル教科書を一挙に刊行しました。アートと社会をむすぶ機関として、美術、デザイン、学術文化にかかわる広範な分野の出版を行っています。
●新正卓写真集『黙示』
 ある再会が写真家・新正卓を「社会派」に転じさせた。1970年代、華やかなコマーシャル・フォトの世界にいた彼が、90年に『私は誰ですか』という簡素な写真集を上梓する。電話帳のような重量。彼らの親探しのために無償で行われた撮影である。新正はどこにでも八×一〇(エイトバイテン)を担いでゆく。八×一〇の重装備で、彼は南米移民一世をひとりずつ訊ね歩き、肖像を撮る。同時にブラジルの娼婦の笑顔をとらえ、つぎには滅びゆく民ネイティブ・アメリカンの現実をつかむ。シベリアの日本人捕虜収容所の跡地にその痕跡を求めたかと思えば、アメリカの強制収容所にまなざしをむけ、眠りつづけた50年の封印をといた。彼が「移民」「棄民」にこれほどとらわれるのは、自身が九歳で満州(中国東北部)の地で敗戦をむかえ、そこで別れた乳母と数十年を経て再会をはたしたからばかりではあるまい。大地への思い、名も無き人びとへの思いは、彼自身のなかにある――日本人とは何だろう――希求にほかならない。
 その新正がピンホールカメラで「さくら」を、そして境界をテーマに「海」をとらえた。新旧9つの写真集アンソロジー『黙示』は、われわれに何を見せるのだろう。



■ 明星大学出版部

開かれた大学で生涯教育をめざす

 1975(昭和50)年7月、「教育の機会均等、門戸開放」の基本理念によって、「開かれた大学で生涯教育をめざす」という大学拡張の方策に応え、出版、放送、公開講座の実現が具体化され、その一環として株式会社めいせい出版が設立されました。
 1979(昭和54)年4月、社名を株式会社明星大学出版部と変更し、学術書、啓蒙書、テキスト等を出版する本格的な活動を始めました。
●出版方針
(1)講義テキスト、教授資料の発行
(2)研究開発の結果としての専門学術書の発行
(3)学術的啓蒙書の発行
(4)一般の読者を対象とした教養書の発行
 昭和51年、学生・社会人を対象に「めいせい教養選書」シリーズ、通信教育課程のテキストシリーズとして「大学講座」「小学校教職講座」を刊行、また同年『明星ものがたり』を出版、これは戦中戦後の私学教育の証言でもあります。
 以後、CIE関係の資料を含む「占領教育文書」シリーズ、『資料文政審議会』「明星図書館学講座」など。
 近年は、教員養成科目のテキストを中心に、『子どもの発達と環境』『総合演習』『初等社会科教育法』『五線譜の約束』(初等音楽教育)、またコンピュータ学習の『情報リテラシー』などがあり、平成18年は、初等教育、教育の実践と方法、教育行財政をテーマとする教育学関連の書目を予定しています。



■ 早稲田大学出版部

ユニバーシティ・エクステンション

これまで――早稲田大学出版部の前身、東京専門学校出版局は、1886(明治19)年に発足した。ふと気づくと創立120年を迎えようとしている。
 現在刊行中のシリーズを挙げると、年頭に刊行した『グローバル・コミュニティ』が第四巻目になる「アジア太平洋研究選書」、比較家族史学会監修「シリーズ比較家族」(第I期全10巻完結、第II期全5巻完結、第III期刊行中[既刊3巻])、「叢書ワセダ・リブリ・ムンディ」(既刊36巻)ほか、併せて5本ある。そして今春、「比較政治叢書」の刊行を開始し、第一巻『民主主義アイデンティティ』は高い評価を得た。シリーズを中心にして著者の窓口が広がっている。
 単行本では、早稲田大学のCOEプログラムの成果として『明るい鏡 ルネ・クレールの逆説』『現代演劇と文化の混淆』を刊行した。また、大学のプロジェクト研究所からは『世界のNPO』がまとまり、所属を異にする著者の集結によって『ヨーロッパ・デモクラシーの新世紀』が生れた。ぜひ書店で手にとっていただきたい。版元の現在は刊行書目が語っている。
これから――当部の定款では、事業の目的の一つとして、早稲田大学の目的達成に寄与するための事業を行うことと定めている。研究・教育・啓蒙という大学の三つの機能に対応する専門書・教科書・啓蒙書を中心とする出版活動は、今後も従来どおり続ける。また、早稲田大学は来年、創立125周年を迎えるに当って「独創的な先端研究への挑戦」「全学の生涯学習機関化」「地球市民の育成」の三つの目標を立てている。こうした大学の改革に即して、学術性と市場性のバランスの取れた出版活動を展開していきたい。



■ 東海大学出版会

そろそろ創立45周年

●元気な分野
 東海大学出版会の創立は1962年。そろそろ45周年を迎える。社会人ならさしずめ「脂の乗り切った年齢」であるが、現実はそんなに甘くない。「絶好調」という言葉の意味合いは何時の間にか忘れつつあり、伸び切らない売上を横目に「そんなに悪いわけではない」という曖昧表現を多用して久しい。しかしすべてがそうでもなく、なぜか、生物・生態関連書の「調子が良い」。この他に、『虚数の情緒』や『光学の原理』(全三巻)などの理工学書も加えなければならないだろう。東海大学出版会が『日本産魚類大図鑑』を刊行したのが1984年。以来その成果は『日本産魚類検索(第二版)』(2000年、英文版は2002年)に継承されて魚類学の定本となり、2005年には『日本産水生昆虫』が刊行されて完売した。この1〜2年を見ても「国立科学博物館叢書」、「海洋生命系のダイナミクスシリーズ」、『藻類30億年の自然史』、『魚類環境生態学入門』、『魚のつぶやき』、『生と死の自然史』、『美ら島の自然史』などがある。
●遺伝と進化
 さて、全体状況が今一なのに、なぜ特定分野の「調子が良い」のか。この現象の理由は意外とシンプルなのかも知れない。生物・生態分野の編集者が3世代、25年間この分野の編集活動を継承している。人的継承だけで事がうまくゆくものではなく、そこには「編集者の資質」が大きな要素を占めることはいうまでもないが、生物学的モデルを適用すれば「遺伝と進化という現象が組織内で起きている」ということになろうか。
 これは案外人の出入りの激しい大学出版部の「組織運営論」に通ずる話かもしれない。



■ 名古屋大学出版会

丁寧で質の高い本作りを続ける

●中日文化賞の受賞
 小会では、このたび第59回中日文化賞を受賞いたしました。「学術分野における先駆的出版活動」を評価されてのことです。ローカルな賞だと思われるかもしれませんが、出版社がいただいたことに意義があると考えております。これも日頃ご支援くださっている大学出版部協会はじめ関係者の皆様のおかげです。ご報告とあわせて、喜びを分かち合いたいと存じます。
●一冊一冊の本が目指すものを大切に
 このように小会は中部圏に軸足を置きながら、開かれた大学出版会の実現をはかっております。
 とはいえ、なにか特別のことをしようとしているわけではなく、当たり前のことを手を抜かずにする――具体的には、価値ある研究に積極的に働きかけて出版企画を作り、原稿にたいしては粘りづよく構えてレベルを下げず、しっかりと読んだうえで一冊一冊丁寧に本をつくる、そしてもちろん、一人でも多くの読者に読んでいただけるようアクティブに販売する、といったことです。当たり前のことをきちんとするのはなかなかたいへんですから、それ以外に特に大きな目標を掲げることはしておりませんが、一冊一冊の本が目指しているものが大きければ、それで十分だと思っております。
●シリーズ現代中国経済
 ちなみにこの6月末、『シリーズ現代中国経済』全8巻を完結させることができました。この領域の新しい水準を画したと言われる好評のシリーズです。ぜひ御一読ください。



■ 三重大学出版会

もっと人生・仕事・愛…

経営の現状 2005年度7点の図書を出版し、出版点数通算、90点。常勤従業員1名
今年の目標 出版10点、販売各700冊
ミッション 小社は「伊勢文化」を社風とする出版会です。「伊勢講」「伊勢暦」で連帯する「伊勢文化システム」は、神官が開拓した通商型のシステムです。庶民を相手にすること、使命感を持つこと、広く世間を知ること、お買い得な商品を提供することを実行します。
近刊 上島亮著『世界猿文化紀行』四六判340頁(本体2400円+税)
1章 日本文化圏/猿と信仰/猿と芸能/猿と医療/猿と文化
2章 中国文化圏/北京原人/チベットの猿神/孫悟空/道教の白雲館/中国の猿玩具職人/敦煌の猿神
3章 インド文化圏/ハヌマン/猿の仏教説話/インドの猿玩具/アジャンターの猿神
4章 インドシナ文化圏/バリ島の猿/ボロブドールの猿神/アンコールワットの猿神
5章 南アメリカ文化圏/ナスカの猿絵/マヤ文明の猿神
6章 ヨーロッパ文化圏/マイセンの猿楽団/西洋絵画の中の猿
7章 エジプト文化圏/考古学博物館の猿神/ルクソールの猿神トト/ヘルモポリス・マグナの猿神トト
8章 まとめ
近刊 広瀬英一著『ドス・パソスを読む』A5判 200頁(本体1800円+税)



■ 京都大学学術出版会

21世紀の学術コミュニケーションの核を目指す

 日本が誇る価値ある研究を英文で刊行する――この点で当会は、我が国の学術出版の先頭を切っていると自ら信じることが出来る。そのために、シンガポール、オーストラリア等の大学出版部・学術版元と提携し、質の高い英語編集態勢と確実な販路を確保しているが、このようにコストをかけ、日本語で刊行する場合に比べ数分の一の利益に甘んじているのは、ひとえに、成果の国際的評価が求められている今日の研究状況を真摯に受け止めるからである。
 当会が、『生態学』に象徴される領域包括的な本格的概説書の刊行を意識的に進めるのも、同様の立場からである。すなわち、研究が高度化する一方で、細分化の弊害が指摘される今日、隣接する領域をつなぐover reviewは、創造的研究の基礎となる。こうした本格的概説書は、欧米の学術版元は積極的に取り組んでいるにもかかわらず、我が国においては、大量流通を前提にした市場に適合的でないという理由から等閑視されてきた。当会はあえてこの分野に挑戦することで、むしろ大きな利益を上げている。『西洋古典叢書』『東洋史研究叢刊』『地域研究叢書』等、当会は設立以来、それぞれの領域を代表する良質の研究を逐次刊行するよう意識してきた。これらも、ややもすると近視眼化しがちな今日の研究状況の中で、新しい発想や方法の源に接するものとして歓迎されている。さらに昨秋からは、「科学離れ」を克服し科学の裾野を広げるべく、一般向けのシリーズ『学術選書』の刊行を開始した。
 このように、学術出版を「学術コミュニケーション」の環の中で意識することが、当会の基本的発想である。今後は学術情報の電子化に対応する成果公開方法を開発することも含め、「21世紀の学術コミュニケーションとは何か」、模索しつつ、その核となれるよう、いっそう精進したい。



■ 大阪経済法科大学出版部

アジアと地域を結ぶ

●小部の特色
 小部の母体である大阪経済法科大学は、1971年に「経済学と法学の統合的な教育」を基本的な教育理念とし、「国際化・情報化時代に対応する産業界の即戦力となる人材を育成」することをめざして創立された経済学部と法学部を擁する大学である。そのような理念のもとに、アジアを中心に国際交流の促進や地域・社会との協力を目指している。
 このような流れは小部刊行物の分野においても脈々と息づき、アジアとの連帯・共生、地域社会への貢献を二大テーマとして掲げている。アジア関係の政治・経済・歴史を中心とした学術書を刊行し、その中心をしめるアジア研究所研究叢書は一二巻まで刊行されている。
 また大阪・河内という地域をもとに研究成果の情報発信・刊行にも力を入れていきたい。
●近刊案内
『満州事変前夜における在間島日本総領事館文書(下)』大阪経済法科大学間島史料研究会編(A5判・函入り・980頁・予定価格26250円)
 本書は中国各地の領事館に勤務した外務書記生・伊地知吉次が収集し、帰国後も保管していた関係諸文書を項目別に分類整理し、解説を加えたものである。
 資料は伊地知が勤務した在間島総領事館文書を中心に、鉄嶺事件・間島朝鮮人武装蜂起等の激動の地|鉄嶺・間島領事館、広東総領事館文書等、明治初期から彼が勤務した昭和初期の満州事変前夜の数カ月前までにおよぶ。
 領事館の消失や敗戦時の外交文書の散逸や消失や押収などがあり、貴重な資料でしめられている。



■ 大阪大学出版会

大学の文化事業の柱として

 大学の教育・研究および社会貢献を支援する文化事業として出版活動を位置付け、大学との連携を進めています。
 4つのミッションとして、(1)学術書の出版―とくにCOEなど国の助成研究の成果公表や基礎研究の発信、(2)科学や学問の最先端で何が起こっているかを市民にわかりやすく伝えること―「大阪大学新世紀セミナー」(全30巻)に続き、「大阪大学ライブラリー」シリーズの創刊、(3)教科書のスタンダードをつくること―「大阪大学新世紀レクチャー」シリーズの刊行、(4)新人の発掘を掲げ、質の高い、社会から評価される書籍の出版を目指しています。
▼泉万里『扇のなかの中世都市』
 大阪大学総合学術博物館叢書の第1弾。「月次つきなみ風俗図扇面流し屏風」に貼り付けられた24の扇面図は狩野元信の工房が、16世紀の京都とその郊外の名所や祇園祭や賀茂競馬などそこで暮らす人々の行事や祭礼などの営みを生き生きと描いたもの。本書では、各面をA4判カラー図で掲載し、新たな知見も加え、詳細に解説する。A4判・98頁(カラー26頁)・定価2100円
▼荒井弘毅著『独占禁止法と経済学』
 市場化と民営化が進む中で注目される独占禁止法の目的、構成、基礎概念、市場支配とは何かを豊富な事例を交え示すとともに、経済学の産業組織論を援用し、法と経済にまたがって考察する。A5判・252頁・定価2100円
▼野澤和男著「船―この巨大で力強い輸送システム」
 パピルスの船から現代の15万トン級豪華客船に至る船の歴史と役割を、豊富な写真や図版とともに紹介する。また、船のメカニズムや性能、理論についても詳説。船のすべてがわかる一冊。B5判・250頁 定価2520円



■ 関西大学出版部

知と学の創造工房

●出版活動および目指すもの
 関西大学出版部は、本学における研究成果の発表を助成・促進し、学術の振興に寄与することを目的に昭和22年6月に設置されました。以来、学校法人の事務組織の一部局として位置づけられ、その機能を果たしてきました。学術図書の積極的な刊行に取り組むとともに、教科書の刊行や本学教育職員の還暦、古希等の記念論文集の印刷経費の補助も行っています。
 本年、関西大学は創立120周年を迎えます。「学の実化」の学是に基づき、本学の知的生産物である研究成果を社会に公表し、さらに新しい出版制度の確立をはかり、大学の教育研究事業に参画することを目指し、あわせてわが国の文化の向上に寄与したいと考えています。
●最近の刊行物より
 『郵送調査法〔増補版〕』
   林 英夫著・A5判・定価4410円
 アカデミックとビジネスの両分野における郵送調査法に関する基礎的および実践的な研究過程で蓄積された内外の文献やデータを集約した、わが国で最初の本格的な専門書の増補版である。
 データ収集技法として郵送調査法を活用している学術研究者にも、市場調査や世論調査の実務家にも、その存在意義を再認識し、改善する手助けとなろう。
 増補版では、個人情報保護法の全面施行により困難化した郵送調査の実施環境を踏まえ、研究者や実務家が直面する諸問題を考察するとともに、多分野での郵送調査法の利用可能性が示唆されている。



■ 関西学院大学出版会

知の創造空間から発信する

●目的
 大学が社会との密接な関係を保ち、新たな知の創造のための開かれた場として機能していくために、さまざまな大学人の成果を広く社会に発信し、文化的貢献を行うことを目指しています。
●新刊
▼飯田収治編著・関西学院大学西洋史学研究室編
『西洋世界の歴史像を求めて』各主題別に歴史像を探る17本の論文を収録。(A5・376頁・定価4095円)
▼坂田博美著
『商人家族のエスノグラフィー|零細小売商における顧客関係と家族従業』商人家族や家族従業の実態を明らかにする。(A5並製・252頁・定価2835円)
▼長岡 徹・永田秀樹・松井幸夫著
K・Gりぶれっと『それぞれの9条』それぞれの立場から憲法9条の必要性を語る。(A5並製・90頁・定価840円)
▼日本キェルケゴール研究センター刊行・松木真一編著
『キェルケゴールとキリスト教神学の展望|〈人間が壊れる〉時代の中で』キェルケゴール研究を軸に神学的展望を探る。(A5上製・346頁・定価5460円)
▼関西学院大学法科大学院等専門職大学院形成支援プログラム第一回国際シンポジウム成果報告編集委員会編
『正義は教えられるか−法律家の社会的責任とロースクール教育』(A5並製・292頁・定価2625円)
▼市川文彦・■(方+鳥)澤 歩・藪下信幸他著
K・Gりぶれっと『史的に探るということ!−多様な時間軸から捉える国際市場システム』(A5並製・82頁・定価735円)



■ 九州大学出版会

世界に開かれた地域の学術出版拠点を目指して

●本会の概要
 本会は九州大学を中心とした西日本一帯の国公私立大学の共同学術書出版会という趣旨のもと1975年に発足しました。現在27校が加盟しており、総刊行点数は約920点で、近年は年間40点前後を精力的に刊行しています。地方の大学を取り巻く情勢が大きく変わりつつある現在、地域に根ざした出版会として各大学の特色ある企画を広く社会に発信していくことを目指しています。
●新刊案内
▼佐藤優著『患者に優しい病院をめざして』(A4変・1995円)病院デザインの先進的な事例をオールカラーで紹介。医療関係者と建築計画者の必読書。
▼朱雀成子著『愛と性の政治学―シェイクスピアをジェンダーで読む―』(四六判・2730円)シェイクスピア作品に登場する女のレッテル(娼婦・魔女・天使等)を解読し、家族・男女間に潜む権力関係に迫る。
▼小野友道・上野眞也編著『地域公共圏の構想 II 大学と地域形成』(A5判・3360円)地域課題の解決に寄与する政策提言という大学の新たな挑戦を紹介する。
▼徳永和喜著『薩摩藩対外交渉史の研究』(A5判・8400円)海難漂着民の送還体制や昆布流通ルートの解明などを通し、鎖国体制下の薩摩藩における対外政策の実態を解明する。第32回南日本出版文化賞受賞。
▼バロー&サラ-イ-マーティン/大住圭介訳『内生的経済成長論 第2版』I・II(A5判・各5880円)経済成長論に関する世界的ベストセラーの第2版。待望の邦訳。



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