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大学との連携協力の在り方について
― 大阪大学出版会の試み ―
岩谷 美也子
大阪大学出版会は1993年に財団法人大阪大学後援会の一事業部として設立され、今年で15年目を迎える。大阪大学が国立大学法人化や大阪外国語大学との統合などによりダイナミックな改革を推進しつつある現在、当会が大学や社会のニーズを的確に把握し、出版を通じて大学の文化活動の柱として貢献するためには、大学との連携協力体制はいかにあるべきか。年間刊行点数20点程度の大学規模に比してあまりにも小規模な当会の取り組みは緒についたばかりであるが、ケーススタディの一事例として紹介し、関係諸氏のご指導を仰ぎたい。
(1)企画面での連携
出版企画は、編集者が人的なつながりを生かしつつ、相互の連携のなかで企画を考え、具体化してゆくのが本来の姿である。そのためには出版部と研究者が日常的に接触し、対話する場が必要であり、分野ごとにしかるべき担当者が対応するのが理想である。しかし10学部15研究科をはじめとする多様な教育・研究組織を擁する総合大学に相応しい良書の企画を模索するには、小さな出版部では自ずと限界がある。そこで、大学の協力を得て組織的に計画的・体系的な企画の掘り起こしを行うため、昨年、大学の先生方を構成員とする2つの組織が設置された。
教養書企画WG
教科書出版は、大学の教育活動への貢献となるのみならず、財政基盤の安定にも大いに資する。そこで大学の教育・情報室に「大阪大学教養書企画WG」を設置し、「大阪大学が擁する多彩な分野の研究者のなかから、大阪大学や他大学の教養教育や専門教育向け、あるいは一般読書界向けの質の高い教科書や教養書の執筆者を発掘し、そのような執筆者による教養書を体系的に大阪大学出版会から刊行することによって、大阪大学出版会の事業を支援し、大阪大学の教育の充実をはかること」となった。メンバーは教育・情報室室員、大学教育実践センター長をはじめ教育・情報室長が指名した各分野の教育情報に精通した教授8人から構成される。本年度はすでに3回企画会議が開催され、大学統合に伴う機構やカリキュラムの再編成を踏まえた意欲的な企画が多数採択されている。
また、本WGでは、現行の教科書シリーズ「大阪大学新世紀レクチャー」(平成15年創刊)のなかに、教養書として人気を博した書目もあったことなどから、総合大学発信の教養書として相応しい「社会、歴史、文学、科学などについて、基礎的知識と豊かな教養を提供し、世界と人間の見方を鍛える」、「これまでの学問の区分にとらわれず、現代文明が要請するさまざまな重要テーマに取り組む」ことを特徴とする新たなシリーズ「阪大リーブル(HANDAI Livre)」を創刊することが決定され、今春の第1回配本に向け、準備を進めているところである。
出版企画部
当会では、3年計画で編集部門の強化を中心とした組織の拡充整備を実施している。これにより、編集者が情報を収集し、研究者との対話の中で学術書の出版企画を練るというケースも増えつつある。同時に、当会の編集企画部門と大学の研究者が意見交換しつつ、出版事業の基本構想や具体的企画を立案する機動的な組織として、当会会長のもとに「出版企画部」が設置された。メンバーは会長および会長が指名した学内の教授の8人で、公的資金による各種プログラムやeラーニングなどの大学の事業展開も踏まえた有益な提言をいただいている。
(2)管理運営面での連携
当会は当然独立採算を基本としているが、安定した事業を継続するためには、独立採算制をただ消極的に維持するだけでなく、積極的に事業展開して収益を上げていく必要があり、事業規模の拡大や事業計画に相応した組織の基盤整備が不可欠である。当会は、大阪大学総長を常務理事とする財団法人大阪大学後援会の組織であることからも、このような管理・運営面での事業計画、将来構想について、大学運営の観点から指導・支援していただくため、後援会の事業計画策定委員会に当会担当委員がおかれた。また、同委員会が、財政面をふくむ出版事業全体の実質的な責任主体であることが確認されている。
以上のとおり、大学との連携協力のもと、大阪大学がモットーとする「地域に生き 世界に伸びる」教育研究活動の成果を広く発信するとともに、大阪大学が教育目標として掲げる「教養」「デザイン力」「国際性」を鍛える、多彩な良書を出版しうる実力を備えた出版部を目指していきたい。
(大阪大学出版会編集長)
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