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歩く・見る・聞く――知のネットワーク42
京都大学総合博物館
佐伯かおる
京都では現在、特色ある大学博物館が次々に設立され話題を集めている。京都市と京都精華大学の共同運営のもと、昭和初期の小学校校舎を生かして昨年11月にオープンしたばかりの「京都国際マンガミュージアム」や、2005年にリニューアルし、日清戦争からイラク戦争までを対象として戦争と平和の歩みを描く「立命館大学国際平和ミュージアム」などである。そのなかで「京都大学総合博物館」は「社会に開かれた大学の窓口」をめざし、「日本初の本格的ユニバーシティ・ミュージアム」(博物館パンフレットより)として1997年に発足し、この機運に先鞭をつけた大学博物館である。
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草創期の京都大学で使用されていた実験器具。触れて仕組みを知ることもできる。
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マレーシアの熱帯雨林ランビルの森の一部と研究用の吊り橋を実物大で再現。
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写真のランビルの森と実験器具は、常設展示の展示風景である。京都大学での研究成果と、その過程で収集された資料が、本博物館の収蔵品と展示の中心であり、文化史・自然史・技術史の三本柱に加えて「探検大学」と呼ばれた京都大学らしく、海外遠征関係資料のスペースが設けられている。
さらに毎年、春季・秋季の2度の企画展を定期に、特別展を随時開催している。2007年前半は、特別展「京都大学所蔵 近代教育掛図展(仮)」(2月7日〜3月18日)と、春季企画展「地図の刷新! 出版地図の400年(仮)」(4月4日〜5月6日)を開催予定である。なお、訪問当日は、京都大学による「湯川秀樹・朝永振一郎博士 生誕百年記念事業」の一環として、平成18年秋季企画展「湯川秀樹・朝永振一郎生誕百年記念展 素粒子の世界を拓く」が開催中で、多くの入場者を集めていた(京都大学学術出版会からも関連して学術選書『素粒子の世界を拓く:湯川秀樹・朝永振一郎の人と時代』を刊行している)。これらの展覧会も京都大学で行われた研究や所蔵資料を活用したものである。
さて、本博物館の課題について、今回の訪問で気づいたことを観覧者の立場からいくつか述べてみたい。「湯川・朝永生誕百年展」の会期中にはまだ翌2月・4月の特別展・企画展が広報されておらず、次回以降の展示情報が得られない。学外への窓口として格好のミュージアムショップや後述の「週末子ども博物館」の会場が有料エリア内にあるため、気軽にアクセスすることができない。『京都大学総合博物館年報 平成一七年度』には自己評価や今後の課題といった項目がなく、博物館の今後の活動方針が見えてこない、といった点である。そして、冒頭で述べた立命館大学や京都精華大学の、いかにも大学の「顔」が見える博物館運営に比べると、調査・研究といった内向きにはともかく、社会に対して本博物館が京都大学の窓口となっているとは言い難い。学外へ向けての大学の紹介という点では、学徒出陣についての調査・展示が話題となった学内の他部局「京都大学大学文書館」の存在感がむしろ高い。
そういった状況下で博物館スタッフがとくに力を入れているのは、研究者による一般向け・子ども向け公開講座である。昨年夏には「夏休み学習教室」として望遠鏡での月観察、竹笛づくり、三葉虫を調べる、野菜からの紙づくりなど5日間で12の子ども向けプログラムが行われた。これらはつねに定員を上回る申し込みがある。そして、学内外の大学院生など有志によるサポートを得て、博物館ロビーで工作を楽しむ「週末子ども博物館」を毎週土日に開催している。このように、大学からの博物館の方向付けが今ひとつ見えないまま、現場の教官・スタッフの尽力によって対外的活動が行われていると言っていいのではないか。
総合大学の総合博物館という立場では一つの切り口に集中して特徴を打ち出すことは簡単ではないが、たとえば京都大学は戦争での焼失を免れているため、草創期の実験器具など技術史部門の資料は高い歴史的価値を有しているはずである。そして250万点を超える学術標本など豊富な収蔵品を生かし、名実ともに「社会に開かれた大学の窓口」として京都大学の顔として、今後の日本の大学博物館運営をリードするモデルとなることを期待している。
佐伯かおる(京都大学学術出版会)
所在地 〒606-8501 京都市左京区吉田本町
(百万遍交差点を南下、左手に入り口あり。京大本部構内)
京都市バス「百万遍」下車(系統番号3、17、31、201、203、206)徒歩約1分
あるいは京阪電車「出町柳」下車、徒歩約15分。
開館時間 9:30〜16:30(入館は16:00まで)
休館日 月・火曜日(平日・祝日にかかわらず)、12月28日〜1月4日
観覧料 一般400円、高校・大学生300円、小・中学生200円
(20名以上は団体割引あり。
70歳以上あるいは身体障害者手帳をお持ちの方は無料)
電 話 075-753-3272
FAX 075-753-3277
URL
http://www.museum.kyoto-u.ac.jp/indexj.html
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