明治期熊本の洋風建築史
価格:6,930円 (消費税:630円)
ISBN978-4-7985-0321-9 C3052
奥付の初版発行年月:2022年01月 / 発売日:2022年01月中旬
本書は、明治時代に熊本県内で造られた近代化遺産を含む洋風建築について網羅的に調査した結果を、時代背景も含めながら叙述し、明治期熊本における洋風建築の歴史を明らかにするものである。日本の建築物は明治期に洋風化されたが、この外来の洋風建築は長崎と東京から熊本へ伝わった。その後、時代を経るにつれて、長崎から伝わった建築の系譜は東京からのそれに飲み込まれてしまうのである。このような熊本における洋風建築流入の系譜を体系的に網羅して通史として提供するとともに、東京に依存せず、自らの意思で東京以外の文化を導入しようとした熊本の地方レベルの建築活動の実態を明らかにする。
磯田 桂史(イソダ ケイシ)
1947年、熊本県玉名市生まれ。1972年、京都大学大学院修士課程(建築学専攻)修了、同年建設省入省。1999年、熊本工業大学(現崇城大学)助教授。2012年より熊本大学五高記念館客員教授。博士(工学、熊本大学)
『肥薩線の近代化遺産』(共著)熊本産業遺産研究会編、弦書房、2009年
『熊本の近代化遺産(上)(下)』(共著)熊本産業遺産研究会+熊本まちなみトラスト編、弦書房、2013年/2014年
『九州・熊本の産業遺産と水俣』(共著)中地重晴・花田昌宣編、熊本日日新聞社、2016年
目次
はじめに
第1章 明治期熊本における洋風建築の導入普及過程
第2章 明治初期の洋風建築(長崎ルート、東京ルート)
第1 節 明治最初期長崎ルートの洋風建築
1 建物の概要
(1)医学校兼病院
(2)洋学校
2 長崎ルートの洋風建築
3 シャルトル聖パウロ修道院
4 付記
第2 節 東京ルートの陸軍建築
1 明治初期の様相
2 歩兵第十三連隊兵舎建築の始まり
3 歩兵第十三連隊の兵舎
4 兵舎の設計者
5 全国の現存例
6 西南戦争前後の様相
7 鎮台病院
8 明治10 年代の様相
9 明治20 年代以降の様相
第3 節 東京ルートの逓信建築
1 郵便の始まり
2 電信の始まり
3 明治10 年代の様相
(1)明治11 年竣工の電信分局
(2)明治11 年竣工の郵便局
(3)明治16 年竣工の郵便局
第4 節 病院、医学校
1 西南戦争前の病院、医学校
2 明治10 年代の病院、医学校
第5 節 裁判所
1 明治初期のわが国の裁判制度
2 明治11 年竣工の熊本裁判所庁舎
第6 節 県の学校
1 師範学校
2 熊本中学校
第7 節 県の施設
明治11 年の県会議事堂
第3章 明治20年頃登場した本格的洋風建築
第1 節 熊本県庁
1 廃藩置県以降の熊本県庁の位置
2 熊本県庁の建設経緯
(1)県庁移転問題
(2)県庁内の移転対策体制
(3)船越欽哉の赴任
(4)県民の寄付
(5)6 月県会と船越の答弁
(6)工事着工
(7)完成
3 熊本県庁の建築的特徴
第2 節 第五高等中学校
1 明治期前半の中学校制度
2 第五高等中学校の熊本設置
3 校舎完成まで
4 建物の概要
5 設計者
第3 節 熊本郵便電信局
明治23 年竣工の熊本郵便電信局
第4章 明治20年代以降各方面に普及した洋風建築
第1 節 国の建築
1 学校建築
(1)第五高等学校工学部
(2)熊本高等工業学校
2 逓信建築
(1)明治31 年竣工の郵便電信局等
(2)明治34 年竣工の電話交換局
(3)県下の郵便局
(4)明治44 年竣工の逓信管理局
3 裁判所
(1)明治28 年竣工の御船区裁判所
(2)明治41 年竣工の熊本地方裁判所
4 煙草関係施設
(1)葉煙草取扱所
(2)専売局熊本製造所
5 種馬所
内閣馬政局熊本種馬所
第2 節 県の建築
1 学校建築
(1)私立熊本医学専門学校
(2)師範学校
(3)済々黌
(4)工業学校
(5)農業学校
(6)商業学校
(7)熊本中学校等
2 県の施設
(1)明治22 年竣工の県会議事堂
(2)観聚館
(3)明治34 年竣工の県立病院
(4)宇土郡役所
第3 節 国及び県以外の建築
1 鉄道建築
(1)概説
(2)網田駅舎
(3)肥薩線の各駅舎
(4)上熊本駅舎
2 工場建築
(1)岡崎酒類醸造場
(2)日本セメント(株)八代工場
(3)熊本紡績(株)
(4)東肥製紙(株)
(5)九州製紙(株)鮎帰発電所
(6)日本窒素肥料(株)石灰窒素製造工場
3 病院建築
中村小児科医院
4 宗教建築
第5章 明治期熊本の洋風建築
ジェーンズ邸/熊本県庁/第五高等中学校/
済々黌、熊本県立病院/熊本高等工業学校/
熊本地方裁判所/煙草専売局熊本製造所
図版出典一覧
謝 辞
索 引