新版 子どもの教育の歴史 その生活と社会背景をみつめて
価格:3,080円 (消費税:280円)
ISBN978-4-8158-0586-9 C3037
奥付の初版発行年月:2008年03月 / 発売日:2008年03月下旬
偉大な教育思想家や教育制度の変遷ではなく、子どもの実態に焦点をあて、近代への移行期から現代に至る教育の歴史を、近年の社会史の成果も踏まえて解説する。外国編と日本編に分けて記述し、グローバリゼーションのもと著しく変化する現在の教育の姿も盛り込んだ好評テキストの新版。
今から4半世紀も前に、私は編者の一人として『子どもの生活と教育の歴史』(川島書店、1966年)という著作を公にしたことがある。それはテキストをめざした総勢21名から成る共同著作であり、若手研究者の仕事として未熟な点も多く含まれていたが、比較的好評裡に世に迎えられ、数次の版を重ねた。その「まえがき」で、私は「…現代社会において子どもは真に守られているであろうか。…社会における子どもの育成・擁護は未だ不充分としか思われない。…現代の教育研究は、テクノロジーの発達と国際的視野の拡大とによるめざましい〈教育爆発〉の時代のかげにおかれている疎外された子どもたちの生活と教育とを真摯にとりあげなければなるまい。」と述べ、従来、偉大な教育思想家・実践家や教育制度改革のかげにおかれがちであった子どもの姿を教育史の主軸に据えて、まさに「子どもによって充たされた教育史」の叙述をめざそうとしたものであった。しかし、その志向や意図に比べて実質が充分に伴わなかったことをあらためて今認めざるをえない。
その後25年の歳月の間に、わが国で子どもの教育や風俗をめぐる社会史的アプローチが積極的に展開されてきたことは周知の通りである。その展開過程にあたって、フィリップ・アリエス(Philippe Ariès)のL'Enfant et la vie familiale sous l'Ancien Régime, Plon, 1960(訳書名『〈子供〉の誕生――アンシァン・レジーム期の子供と家族生活――』杉山光信・杉山恵美子訳、みすず書房、1980年)の公刊・普及などが強力な導火線になっているように思われる。その後同じアリエスの『〈教育〉の誕生』(中内敏夫等共編訳、新評論、1983年)が世に出、さらに中内氏を中心に『叢書・産育と教育の社会史』(全5巻、新評論、1983~85年)等々が相次いで刊行され、子どもの教育史への社会史的・構造史的アプローチの可能性が切り拓かれつつある。
本書は名古屋大学教育史研究会のメンバー32名による共同著作であり、最近の研究成果を視野に入れながら、子どもの教育の歴史をその社会背景と生活……
[「まえがき(初版)」冒頭より]
江藤 恭二(エトウ キョウジ)
元名古屋大学教授
篠田 弘(シノダ ヒロシ)
名古屋大学名誉教授
鈴木 正幸(スズキ マサユキ)
神戸大学名誉教授
加藤 詔士(カトウ ショウジ)
名古屋大学名誉教授
吉川 卓治(ヨシカワ タクジ)
名古屋大学大学院教授
上記内容は本書刊行時のものです。
目次
まえがき
外国編
第1章 中世から近代へ
――資本主義成立以前
1 子どもをとりまく社会の近代化
2 市民階級の子どもの生活の変化と教育思想
3 学校教育と子育ての実態
Column(1) 古代ギリシャの教育
第2章 資本主義の成立・展開と子どもの生活
1 イギリス
2 フランス
3 ドイツ
4 アメリカ
5 ロシア=ソビエト
6 中国
Column(2) パブリック・スクール
Column(3) 点字の考案と視覚障害児教育の発展
第3章 現代の教育
1 20世紀の世界と子ども
2 20世紀の子ども観と教育改革――近代教育思想の発展と動揺
3 現代の育児と教育の実態
4 新時代の教育
Column(4) 現代の教育改革
日本編
第1章 近代国家への歩みと生活・教育の動向
1 近世の子ども
2 明治維新と近代学校の成立
3 文明開化と子どもの生活
Column(5) 家訓にみる子育て
Column(6) 女子教育――津田梅子の奮闘
Column(7) ある青年教師の明治維新
第2章 資本主義の成立・展開と生活・教育の変化
1 天皇制国家体制の確立と展開
2 教育の制度と実態の展開
3 資本主義と子どもの生活・文化
4 戦時下の子どもの生活と教育
Column(8) 学歴社会の誕生
Column(9) 近代家族の登場と子育て
第3章 戦後復興と生活・教育の再出発
1 新しい教育の理念と制度
2 新教育の実施
3 戦後の子どもの生活と文化
Column(10) 戦後の幼児教育
第4章 経済の成長・停滞と生活・教育の変容
1 経済成長と教育
2 子どもの生活と教育の変化――高度成長から低成長の時代へ
3 グローバリゼーションのなかの生活と教育
あとがき
年 表
図表一覧
人名索引
事項索引
執筆者紹介