民衆たちの嘆願 ヘレニズム期エジプトの社会秩序
価格:4,950円 (消費税:450円)
ISBN978-4-87259-757-8 C3022
奥付の初版発行年月:2022年09月 / 発売日:2022年10月上旬
ギリシア語およびデモティック(民衆文字)で書かれたパピルス文書から、古代の多文化社会の秩序を明らかにする。
ヘレニズム時代のエジプト社会では、民族的にも文化的にも混淆を深め、様々な法や紛争解決手段が並存していた。本書では、従来の研究で主に扱われてきたギリシア語嘆願書だけでなくデモティック嘆願書や和解宣誓書、各言語の裁判記録など、紛争解決に関連する740点余の法的資料を包括的に活用・分析し、多様な方策を戦略的に利用しながら紛争解決を目指す民衆たちの姿を明らかにする。同時に、古代エジプト社会がヘレニズムという文化・社会現象をとおして、いかなる変容を遂げたのかを示す。
巻末付録として、プトレマイオス朝期エジプトの嘆願書一覧を収録。西洋古代史研究者、エジプト史研究者必携。
石田 真衣(イシダ マイ)
大阪大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得退学(博士(文学))。現在、大阪大学大学院人文学研究科特任研究員、招聘研究員、大阪大学ほか非常勤講師。
主要論文:「プトレマイオス朝期テーベ地方における紛争処理と社会変容─ 嘆願と和解を中心に」(『西洋史学』256、2015年)「プトレマイオス朝期エジプトにおける在地勢力の再編─嘆願書を手がかりに(『西洋古典学研究』66、2018年)、「ヘレニズム期エジプトにおける嘆願と社会関係─ファイユームの事例から」(『待兼山論叢』54、2020年)。
目次
序章
古代エジプトの「民衆」と「嘆願」
古代エジプトの「ヘレニズム」
第1章 パピルス史料とエジプト社会
第1節 法制度史研究の射程と課題
第2節 環境的差異と社会像
第3節 史料と社会像
第2章 プトレマイオス朝エジプトの歴史像と実態
はじめに
第1節 プトレマイオス朝の歴史像
第2節 在地社会におけるコミュニケーション—エドフの事例から
第3節 在地社会における権力者
第3章 嘆願
はじめに
第1節 嘆願処理の制度的側面
第2節 嘆願書の史料的性格と特徴
第3節 嘆願と救済
第4章 嘆願ネットワーク
はじめに
第1節 官僚制組織と嘆願
第2節 村落コミュニティ──ケルケオシリスの事例から
第3節 神殿コミュニティ──ソクノパイウ・ネソスの事例から
小括
第5章 嘆願と秩序維持
はじめに
第1節 ギリシア語による嘆願
第2節 神への宣誓と紛争解決
第3節 嘆願と裁き──ヘルミアスとコアキュタイの係争
第4節 調停と和解
小括
第6章 在地社会の再編
はじめに
第1節 嘆願と王の慈悲
第2節 協働の秩序維持──在地勢力の連携
第3節 民衆の戦略──多様な社会関係のなかで
小括
終章 民衆たちのヘレニズム
付録 プトレマイオス朝期エジプトの嘆願書一覧
参考文献/略語一覧/図版一覧/索引