叢書・ウニベルシタス987
根源悪の系譜 カントからアーレントまで
価格:4,950円 (消費税:450円)
ISBN978-4-588-00987-7 C1310
奥付の初版発行年月:2013年01月 / 発売日:2013年01月下旬
二十世紀の歴史に癒しえぬ傷を残した数々の大量虐殺のあとで、哲学は「悪」をどう語りうるのか。カントが創出した「根源悪」の概念を軸に、人間が罪悪を犯す生来の可能性や必然性を熟考した思想家の系譜──ヘーゲル、シェリング、ニーチェ、フロイト、レヴィナス、ヨーナス、アーレント──を鋭く一望する。弁神論による「悪」の正当化が困難な今日、倫理の根源を問い質す碩学の労作。
リチャード・J.バーンスタイン(バーンスタイン リチャード ジェイコブ)
(Richard J. Bernstein)
1932年生まれ。ペンシルヴァニア大学、マサチューセッツ工科大学などを経て現在はニュー・スクール・フォー・ソーシャル・リサーチに所属。主としてプラグマティズムを研究するが、ヨーロッパ大陸の哲学にも造詣が深い。今は亡きリチャード・ローティの思想的盟友としても知られる。単著に『ジョン・デューイ』、『実践と行為』、『科学・解釈学・実践』(邦訳、岩波書店)、『手すりなき思考』(邦訳、産業図書)、『ハーバーマスとモダニティ』、『ハンナ・アーレントとユダヤ人問題』、『フロイトとモーゼ神話』、『悪の濫用』および『プラグマティズム的転回』がある。
阿部 ふく子(アベ フクコ)
1981年生まれ。日本学術振興会特別研究員(新潟大学)。共著書に『ヘーゲル体系の見直し』(理想社)、論文に「哲学と人間形成──ニートハンマーとシェリングの教養形成論をめぐって」(『シェリング年報』第19号)ほか。
後藤 正英(ゴトウ マサヒデ)
1974年生まれ。佐賀大学准教授。共著書に『ユダヤ人と国民国家──「政教分離」を再考する』(岩波書店)、『ドイツ観念論を学ぶ人のために』(世界思想社)、共訳書に『シェリング著作集 (1b) 自然哲学』(燈影舎)ほか。
齋藤 直樹(サイトウ ナオキ)
1970年生まれ。盛岡大学准教授。共著書に『21世紀の哲学史』(昭和堂)、共訳書にブプナー『美的経験』(法政大学出版局)、論文に「ツァラトゥストラの「言語」──情動的言語使用の音楽的基礎」『理想』(第684号)ほか。
菅原 潤(スガワラ ジュン)
1963年生まれ。長崎大学大学院教授。著書に『環境倫理学入門──風景論からのアプローチ』(昭和堂)、『「近代の超克」再考』(晃洋書房)、『昭和思想史とシェリング──哲学と文学の間』(萌書房)ほか。
田口 茂(タグチ シゲル)
1967年生まれ。北海道大学大学院准教授。著書に『フッサールにおける〈原自我〉の問題』(法政大学出版局)、論文に「「私」の定義としての「身代わり」──主体の唯一性と留保なき普遍性をめぐって」『現代思想 総特集・レヴィナス』(40巻3号)ほか。
上記内容は本書刊行時のものです。
目次
序
緒論
第一部 悪、意志、自由
第一章 根源悪──自分自身と戦うカント
悪しき格率
根源悪
悪魔的な悪
無制約的な道徳的責任
第二章 ヘーゲル──〈精神〉の治癒?
有限者と無限者
悪と有限性
アダムの堕罪
悪の必然性と正当化?
ヘーゲル対ヘーゲル
第三章 シェリング──悪の形而上学
実在的な悪
根拠と実存
我意と闇の原理
悪の道徳心理学
間奏曲
第二部 悪の道徳心理学
第四章 ニーチェ──善悪の彼岸
「よいとわるい」対「善と悪」
弁証法的アイロニスト
悪とルサンチマン
善悪の彼岸
悪についてニーチェから学ぶもの
第五章 フロイト──根絶不可能な悪と両価性
一群の兄弟たちが経験する両価性
欲動論
ニーチェとフロイト
悪に対する責任
第三部 アウシュヴィッツ以後
プロローグ
第六章 レヴィナス──悪と弁神論の誘惑
弁神論の終焉
悪の現象学
無限の責任
第七章 ヨーナス──新しい責任の倫理
ニヒリズムに対する応答
悪とわれわれの黙示録的状況
ヨーナスの神話を「脱神話化する」
ヨーナスとレヴィナス
第八章 アーレント──根源悪と悪の陳腐さ
余計さ、自発性、複数性
悪の意図と動機?
アイヒマン──人間的な、あまりに人間的な
結論
原注
訳者あとがき
文献一覧
人名索引