近代日本と経済学 慶應義塾の経済学者たち
価格:4,840円 (消費税:440円)
ISBN978-4-7664-2244-3 C3033
奥付の初版発行年月:2015年09月 / 発売日:2015年09月中旬
▼研究と教育に生涯を捧げた経済学者たちの足跡から近代日本経済学の水脈を辿る
本書は、慶應義塾で経済学を講じた学者たちを取り上げている。福沢諭吉をはじめ慶應義塾ゆかりの主だった学者たちは、義塾における教育と研究にとどまらず、近代日本における経済学の発展にどのような足跡をのこしたのだろうか。
彼らの学問と主張を辿ることで、あらためて経済学の多様性を明らかにし、経済学がどのように発展をとげてきたか、また近代日本と経済学はどのようにかかわってきたのかを考察する。
(※〔 〕は担当章)
【編著者】
池田幸弘(いけだ ゆきひろ)〔はじめに、第3章、第5章訳、第7章、あとがき〕
慶應義塾大学経済学部教授
小室正紀(こむろ まさき)〔序章、第1章〕
慶應義塾大学名誉教授
【執筆者】
西澤直子(にしざわ なおこ)〔第2章〕
慶應義塾福沢研究センター教授
上久保敏(かみくぼ さとし)〔第4章〕
大阪工業大学工学部教授
ギュンター・ディステルラート(Günther Distelrath)〔第5章〕
ボン大学講師
西沢保(にしざわ たもつ)〔第6章〕
帝京大学経済学部教授 / 一橋大学名誉教授
武藤秀太郎(むとう しゅうたろう)〔第8章〕
新潟大学経済学部准教授
平野隆(ひらの たかし)〔第9章〕
慶應義塾大学商学部教授
斎藤修(さいとう おさむ)〔第10章〕
一橋大学名誉教授 / 日本学士院会員
原田哲史(はらだ てつし)〔第11章〕
関西学院大学経済学部教授
柳澤治(やなぎさわ おさむ)〔第12章〕
首都大学東京名誉教授
川俣雅弘(かわまた まさひろ)〔第13章〕
慶應義塾大学経済学部教授
宮内環(みやうち たまき)〔第14章〕
慶應義塾大学経済学部准教授
目次
はじめに
序 章(小室正紀)
1 本書の課題
2 教育組織の変遷
3 大学部開設以降の学科担当者の変遷
4 大学部以降の科目内容・人事体制・研究団体・機関誌
5 本書の読み方
第1章 福沢諭吉の経済思想 ―― その時論と理想と思想(小室正紀)
1 はじめに
2 福沢諭吉の経済理論をどう考えるか
3 松方財政批判の時論に見る経済思想
4 むすび ―― なぜ完全雇用を重視したか
第2章 近代化における小幡篤次郎の役割(西澤直子)
1 はじめに
2 生涯
3 経済書の翻訳
4 近代化における小幡篤次郎の役割
5 おわりに
第3章 ギャレット・ドロッパーズとドイツ経済思想(池田幸弘)
1 はじめに
2 ドロッパーズ「財政学講義」の編別構成
3 イギリス古典派、ドイツ経済思想とドロッパーズ
4 鉄道は民営化すべきか、国営化すべきか
5 最適な課税
6 むすびに代えて
第4章 堀江帰一の人物像・学説・思想(上久保敏)
1 はじめに
2 堀江帰一とはどういう人物か
3 教育者・研究者としての堀江帰一
4 実践家としての堀江帰一
5 日本経済学史における堀江帰一 ―― むすびに代えて
第5章 気賀勘重とオイゲン・フォン・フィリッポヴィッチ(ギュン
ター・ディステルラート、池田幸弘訳)
1 はじめに
2 気賀勘重の履歴 ―― ドイツに行くまで
3 気賀勘重のドイツでの足跡とドイツ人教授たち
4 日本人がドイツ語で発表した経済学の博士論文
5 気賀勘重の博士論文
6 ドイツでの収穫 ―― 気賀勘重の翻訳・解説
7 気賀勘重はなぜ『フィリッポヴィッチ氏経済原論』と『経済政策』
を研究や翻訳のために選んだのか
8 フィリッポヴィッチの経歴
9 フィリッポヴィッチの著作
10 フィリッポヴィッチの立場
11 気賀勘重の著作
12 慶應義塾大学と気賀、政治家としての気賀
13 気賀勘重の立場
第6章 福田徳三の経済思想 ―― 厚生経済研究と福祉国家(西沢保)
1 はじめに
2 小泉信三の評価 ―― 福田と慶應義塾
3 資本主義と社会主義の狭間で
4 生存権の社会政策 ―― 国民的最低限:福祉国家
5 厚生経済研究
6 おわりに
第7章 小泉信三と理論経済学の確立 ―― 福田徳三との対比を中心に(池田幸弘)
1 はじめに
2 経済現象の歴史性と超歴史性、そしてロビンソン・クルーソー経済
の前提
3 経済の主要法則
4 価値と富
5 時間の経過の中での経済活動 ―― 生産期間の長期化
6 経済循環
7 総合的社会科学の構築者としての福田と小泉 ―― むすびに代えて
第8章 高橋誠一郎の経済学史研究(武藤秀太郎)
1 はじめに
2 学生時代の高橋誠一郎
3 協同主義と浮世絵
4 連続する「文化国家」の理念
5 おわりに
第9章 商学の成立と向井鹿松(平野隆)
1 はじめに
2 向井鹿松の経歴
3 向井鹿松の商学の特徴
4 商学部分離問題
5 おわりに
第10章 野村兼太郎と黎明期の経済史学(斎藤修)
1 はじめに
2 慶應義塾における経済史家の誕生
3 日本経済史へ
4 野村経済史学
5 野村以後への展望
第11章 忘れ去られた経済学者 ―― 加田哲二とドイツ経済思想史
(原田哲史)
1 はじめに
2 加田の生涯と著作 ―― 1931年に至るまでそして戦時体制下で
3 加田『独逸経済思想史』の大構想とその難点および独自性
4 むすび
第12章 激動の時代の経済学 ―― 自由放任主義の終焉と国家の経済介入(柳澤治)
1 はじめに
2 向井鹿松の統制経済論 ―― 「合理化」・「統制」と「企業改造」
3 加田哲二の時代認識 ―― 昭和研究会と経済新体制問題の中で
4 武村忠雄と戦争経済
5 おわりに
第13章 新古典派の台頭と経済学の制度化・国際化(川俣雅弘)
1 新古典派経済学とは
2 新古典派経済学の展開
3 戦前の研究
4 経済学の制度化と国際化
5 基礎理論の確立と経済諸問題への応用
6 新古典派の台頭とマルクス経済学の衰退
7 大学の学問的アイデンティティ
第14章 三田の計量経済学(宮内環)
1 はじめに
2 三田の計量経済学 ―― 市場の科学としての経済学
3 統計学と三田の計量経済学
4 海外の学会と三田の計量経済学
5 おわりに
あとがき
索引