支援から共生への道 Ⅱ 希望を共有する精神医療を求めて
価格:1,980円 (消費税:180円)
ISBN978-4-7664-2375-4 C0037
奥付の初版発行年月:2016年10月 / 発売日:2016年10月下旬
僕は、キミにきちんと向き合えていますか?
日々の臨床の中で、関わることの難しさ、面接という出会いに込める思いを綴る。
対人援助職の方々、保護者の方々に、心の糧となる書。
▼全国の保護者から絶大な人気を誇る児童精神科医が臨床への真摯な思いをぶつけた随筆集第2弾!
雑誌『教育と医学』での連載を書籍化。大学教授から子どもの精神科クリニックの院長となり、新たな精神科臨床の取組みを行っている著者が、面接や診療を通して得た「心とは何か」「育ちとは何か」を綴る。子どもだけでなく、家族も含めた診療の様子も紹介。
僕のめざす臨床は、「発達障害」と呼ばれる特性をもちながら、日々の社会生活を送るなかに生まれる生活のしづらさ・生きづらさにどう向き合うか、そしてできる工夫を考え、日々無理なくできることをとりあえずやってみようと思えるように応援することです。
そして、今を頑張って生きていることが肯定できるように、明確に、しっかりと自覚してもらえるよう、現状に光を当てたいと思っています。(著者より)
田中 康雄(タナカ ヤスオ)
こころとそだちのクリニック むすびめ院長。北海道大学名誉教授。
児童精神科医師。臨床心理士。
1958年栃木県生まれ。獨協医科大学医学部卒業。旭川医科大学精神科神経科外来医長、北海道緑ヶ丘病院医長、国立精神・神経センター精神保健研究所児童・思春期精神保健部児童期精神保健研究室長、北海道大学大学院教育学研究院教授を経て2012年より現職。
著書に『軽度発達障害』(金剛出版、2008年)、『支援から共生への道』(慶應義塾大学出版会、2009年)、『発達支援のむこうとこちら』(日本評論社、2011年)、『児童生活臨床と社会的養護』(編著、金剛出版、2012年)、『「大人の発達障害」をうまく生きる、うまく活かす』(共著、小学館新書、2014年)、『生活障害として診る発達障害臨床』(中山書店、2016年)ほか翻訳書など多数。
目次
前口上
Act 1 春を迎えて
出立と別れの刻 /〝そだつ〟ということ / 発達障害とは挑戦であ
る / 春を迎えて
Act 2 五月病
Aくんの休暇制度 / 僕の脱走 / 期待と失望のなかで / 自分の身の丈
を知ることの難しさ / ほどほどの折り合いに向けて
Act 3 梅雨時に想う
祖母のこと / 母に手紙を書き続ける / 気持ちがうまく伝えられな
い / 疲れ果てる母親 / ハラハラする子 / みんな一生懸命のなか
で / ふたたび祖母のこと
Act 4 不登校を考える(1)
登校したいけれど登校できない子ども / 登校したいけれど登校できな
い子どもの親 / 登校したいけれど登校できない子どもたちの心を応援
する
Act 5 不登校を考える(2)
学校生活に〝許せなさ〟を抱えている子ども / 子どもたちの〝許せな
さ〟/〝許せなさ〟の背景 /〝許せなさ〟と孤立 / それでも〝許せな
さ〟から登校を拒否する子どもたちの心を応援する
Act 6 秋になると
決定的にできないこと /〝恥の記憶〟と心の傷
Act 7 精神科診断の難しさ(1)
DSM-5の刊行 / 診立てに入るために / まずは外因から / 診断名が
どうして増えるのだろう / 共同作業としての医療
Act 8 精神科診断の難しさ(2)
DSM-5の連続性 / 二つの島と臨床
Act 9 気遣う人の存在
何気ない言葉による痛み / 不思議な先生 / みんなの責任ではないだ
ろうか / いつもと違うぞ / 僕も精神障害になる可能性がある / 気遣
う人になる
Act 10 希望を探し、共有する営み
クリニックに話をしに来てくれる方々と / 心の糸
Act 11 生きている意味がわからない
諦めをもった笑顔 /〝取り戻す〟ことへの疑問 /〝意味のある人生〟
とは / 生きがいの欠落 /〝生きづらさ〟とは
Act 12 面接のなかに生まれる言葉(1)
言葉に出会う / 何気ない言葉の力 / 頭を下げ、詫びる / 言葉が生ま
れるとき
Act 13 面接のなかに生まれる言葉(2)
言葉が飲み込めない / つい話してしまいました / 生きづらさのなか
にある力を見つける / 夫婦の齟齬 / 生きづらさと付き合う前に、生
きる力に光を当てる
Act 14 人の前で話すということ
講演などをお受けするときの思い / 来てくださった方への思い / 質
問してくださった方への思い /〝丁寧に生きる〟ことへの思い
Act 15 僕の「子どもと家族の」精神医療―今昔(1)
総合病院での経験 / 精神病院での経験 / 大学教育学部での思い /
〝むすびめ〟を求めて
Act 16 僕の「子どもと家族の」精神医療―今昔(2)
発達障害から生活障害へ / 生活障害への応援は生活相談 / 相談が広
がり家族を個々に診る
Act 17 母として・娘として・妻としての悩み
悩みのパターン / 母として / 娘として / 時を薬に / 妻として /
カサンドラ症候群とは / 新しく折り合いをつけた生活を
Act 18 対話から生まれるもの
次回への適切な時期を探る意味 / スタッフ間での対話 / 患者さんと
二人きりではない対話 / 患者さんとの対話が生まれるとき / 対話が
苦手な方との対話
Act 19 終わりのない道
変わらない現実の中で / ねぎらいを伝える / 過程を共有する / 光が
さすとき
Act 20 医学的判断をもとに生活を応援すること
診断の役割 / 現場への後方支援の役割 / 現場を訪れる理由 / 医学的
対応と生活支援の狭間で
Act 21 面接について(1)
顔色をうかがう / うまく伝えられない思いと、すくいとれないという
思い / 未来に耐える力、不確実性に耐える力 / 安定した関係と
面接
Act 22 面接について(2)
最初の出会い / 気づきと働きかけ / 僕自身を差し出す / 一期一会の
舞台
Act 23 僕へ
初心のキミへ / 立ち止まりそうなキミへ / 明日に向かって
Act 24 キミヘ
尊いことだからこそ / 苦しいからこそ / ささやかに、細々と
納め口上