「大学と社会を結ぶ知のネットワーク」という設立の原点にたって,大学出版部協会では,昨年から市民公開シンポジウムを5回取り組んでいます。 「専門領域の研究を専門外ととの対話によって深め,市民との対話によって広げる」取り組みは,主催者や講演者の当初の予想を超えた形で,新しい知 のネットワークを拓いてます。このたび,その内容の一部(2回分)が,日本生命財団様のご援助によって,ブックレットになりました。
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東日本大震災後の社会を、これまで通り細分化した個別科学の高度化によって構築しようという議論は少なくありません。実際、日本列島の沿岸を巨大な堤防で覆うというプランも大真面目に議論されています。もしこのようなことが実現すれば、陸と海の物質・生物循環は大きな影響を受け、いわば 日本列島自体が「諫早湾化」する恐れさえあります。自然・社会環境を、百年、千年という単位で見直すことが出来て初めて、再生のための知が構築出 来るのではないか?哲学、生態学、地震学の対話というユニークな構成で答えを探ろうというのが『防災と復興の知』です。
一方『心の多様性』では、「ヒトの、健常な、大人の心」を中心に考えがちな教育観、社会観を問い直します。たとえば「いじめはあってはならな い」と捉えてしまうと、それを隠す、目をつぶる、という対応になりがちです。むしろ、「ヒトの心は多様である」(攻撃的な部分もある)と知ったう えで、それをどう制御するかという対応が求められるべきでしょう。最近の心理学・認知科学は、心には多様な形があることを解明しています。
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■『防災と復興の知 3・11 以後を生きる』座小田 豊・田中 克・川崎一朗 著/本体価格1000 円+税
■『心の多様性 脳は世界をいかに捉えているか』中村哲之・渡辺 茂・開 一夫・藤田和生 著/本体価格1000 円+税
いずれも発行:大学出版部協会,発売:東京大学出版会(03-6407-1069)
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