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歩く・見る・聞く――知のネットワーク23
物流博物館
加治紀男
JR品川駅で降りて高輪口を出ると目の前を第一京浜が走っている。それを横切ると緩やかな坂道に差しかかる、これが通称「ざくろ坂」である。この坂を上り詰め左折するとすぐ左手に煉瓦色の、小振りながら瀟洒な落ち着いた佇まいの二階建の建物が目に入る。これが今回ご紹介する「物流博物館」である。駅からの所用時間は、パンフレットによれば7分となっているが私の足でも10分程度であった。足の便は大変良い。
「物流博物館」は財団法人利用運送振興会によって設立され、開館は平成10年8月11日と比較的新しいがその前身は、昭和33年に日本通運株式会社本社内に設立された「通運史料室」に遡ると言うからもう半世紀近い歴史を有することになる。そういう事から、ここに収蔵されている資料の大半は日本通運株式会社の所有で、学術的にも評価の高いものが少なくないと言われている。
「財団法人利用運送振興会によって設立された日本で初めての物流専門の博物館であり、現代における物流の役割やしくみ、また、今日に至る物流の歴史について、こどもたちをはじめ広く一般の人々に紹介することを大きな目的としている。とくに、現代の物流産業の概要をわかりやすく展示し、社会における物流に対する理解の促進を図ることが大きな使命である。」と、パンフレットに設立の趣旨が述べられている。
同館は地下2階、地上2階の構造になっており、「現代の物流」展示室と「物流の歴史」展示室、映像展示室の3つの展示室がある。観覧の順路として、先ず1階の「物流の歴史」展示室で物流の歴史の概略を理解されることをお勧めしたい。ここには、江戸時代以降の物流の歴史について館蔵資料が展示されている他、旧石器時代から現代までの物流史が年表にまとめられている。
次に、地下1階の「現代の物流」展示室に進む。先に設立の趣旨でご紹介したようにこの展示室が物流博物館の中心である。ここで観覧者の目を引きつけるのが巨大なジオラマ模型である。陸海空の物流の結節点が実在する施設の模型で立体的に構成されおり、観覧者は、センサーの作動により物流現場の24時間をダイナミックに鳥瞰することができるようになっている。この他、見たい映像を自由に選べるビデオコーナー、物流クイズ、日本から世界各地に貨物を運ぶ物流ゲーム、物流関係の企業や団体にリンクが張られているインターネット等観覧者にとって興味深い展示物が盛り沢山である。
2階の映像展示室では大画面でビデオや16ミリの映像を見ることができる。現在は新しく制作した物流関係の映像作品を、毎日11時と15時の2回定時に放映している。しかし、団体での入館者がない場合等は、受付で申し込めばこの時間以外でも鑑賞できるそうである。この隣に、物流に関する図書や資料が閲覧できる図書コーナーがある。
ところで、筆者が訪ねたときは丁度「収蔵資料展 ― 京都馬借・鉄道錦絵コレクション」と銘打った特別展を開催中であった。同館は開館後歴史が浅いこともあってか知名度を高めるために精力的に活動を展開している。今年はこれ以外に、大人向けの催し物として「美術品梱包講座」、「産業映画上映会」、「物流講演会」、「古文書講座」、等が計画されている。ただし日程、時間等は未定なので受講を希望する向きは事前に照会頂きたいとのことであった。
同館は小学生の見学者が多いのが特色の一つだそうである。これは、平成4年から小学校5年の社会科で物流が大きく取り上げられるようになったためであるらしい。そのため夏休み期間中には、「お宝を包んでみよう」とか「ひっこし大作戦」、「ダンボール工作」等の子供向けの催し物が企画されている。
このような事もあってか「物流博物館」は、観覧者に人の温もりを感じさせる博物館である。交通の便も良い所に立地しているので、ご家族連れで足を運んでみられてはいかがであろうか。
(流通経済大学出版会)
物流博物館
URL:http://www.lmuse.or.jp
〒108-0074 東京都港区高輪4-7-15
TEL 03-3280-1616
品川駅(JR・京浜急行)下車 徒歩7分
高輪台駅(都営浅草線)下車 徒歩6分
開館時間:午前10時〜午後5時(入館は4時30分まで)
休館日:毎週月曜日(但し月曜日が祝日・振替休日の場合は、その翌日)
毎月第4火曜日、祝日の翌日
年末年始(12月28日〜1月4日)
入館料:大人 200円(高校生以上)
小・中学生 100円(第2・第4土曜日は無料)
団体 20名以上半額
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