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科学する目 3
足の数
青木淳一
動物の体を支え、歩行に用いる器官を「足」または「脚」という。「肢」という字を使うこともある。正確には、「肢」のうちで地面につく部分を「足」、それ以外の部分を「脚」というのだが、ここでは便宜上すべて「足」を使うことにする。
二本足
アオヤギなどの二枚貝の足を一本足と考えるかどうかを別にすれば、一番少ない足の数は二本である。私たち人間は二本足で歩くこと、つまり直立二足歩行を初めて行った動物のように思われているが、哺乳類のカンガルーだって後ろの二本足で移動しているし、多くの肉食恐竜も二足歩行をしていたようだ。その化石を見ると、前足は細く短く、一とても歩行には使えそうもない。もちろん、鳥類は全部二足歩行である。二足歩行の利点は歩行から解放された前足を他の用途、たとえば「手」や「羽」として使えるようになったことである。
四本足
三本足というのはないから、次は四本足である・哺乳類、爬虫類、両生類がこれにあたる。四足歩行の基本は、左前足と右後足を同時に前に出したあと、右前足と左後足を出すというやり方である。爬虫顆も同じだが、哺乳類と違って腹が地面に着いている。しかし、哺乳類が走るときは左右の前足、左右の後足をそれぞれ揃えて交互に前に出すし、カエルが急ぐときは、四足を同時に使って跳ねる。
六本足
昆虫類の六本足はもっとも理想的な足の数と考えられる。かれらの歩き方を見ると、まず左前足+右中足+左後足を同時に前へ出し、次に右前足+左中足+右後足を前へ出す。つまり、常に三本の足が移動し、他の三本の足が地面に着いている。カメラの三脚を見ても分かるとおり、三本足というのがもっとも安定して倒れにくい。昆虫類はこの原理を見事に使い、体を常に完全に安定させながら前進する方式を採用しているのである。
八本足
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図 A ザトウムシ
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クモ、ダニ、ザトウムシなどの蛛形頬になると、足はもう二本ふえて八本になる。さて、かれらは八本の足をどのように動かしているだろうか。よく観察すると、多くのクモやダニは一番前の一対の足に「探る」ような動きをさせ、歩行には二番目、三番目、四番目の六本の足を使っている。つまり、昆虫と違って触角を持ち合わせないかれらは一番前の足を触角の代わりに使い、残りの六本の足で昆虫のように歩くのである。不思議なことにザトウムシの場合は二番目の足が一番長く、これに触角の役目をさせ、一番目、三番目、四番日の六本の足で歩く(図A)。タコも「たこの八ちゃん」といわれるように八本足であるが、八本をバラバラに動かす。急いで泳ぐときだけ、八本を揃えて同時に動かす。
十本足
イカのなかまでは八本足に長い二本足が加わって、合計十本足になる。
多 足
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図 B ヤスデ
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つかまえても数えたことがないかもしれないが、ワラジムシやダンゴムシの足は十四本である。ゲジゲジの足は三〇本。ムカデは漢字で百足と書くが、実際には三〇本から三七〇本まで変化に富む。さわると渦巻きになるヤスデも足が多く、四十六本から三六〇本まである(図B)。
一体、神様はどうやって動物たちの足の数を決めたのだろうか? 私たちはたった二本の足でも時々からまったりするのに、百本以上もある足を順番にきれいに動かす虫を見ていると、不思議な気がしてくる。
(神奈川県立生命の星・地球博物館館長)
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