日本史のなかの「普遍」 比較から考える「明治維新」
価格:5,500円 (消費税:500円)
ISBN978-4-13-020157-5 C3021
奥付の初版発行年月:2020年02月 / 発売日:2020年02月上旬
日本史が日本だけでなく世界に開かれるためのその方法論と分析視角を提示する.近世後期から明治維新にかけての日本を素材に,その普遍性と特殊性をとらえ,比較史の観点から歴史を意識的にみる.言語と史料の境界を越え,日本史のより深い理解と,新たな問題設定の可能性を追究する.
三谷 博(ミタニ ヒロシ)
跡見学園女子大学文学部教授/東京大学名誉教授
上記内容は本書刊行時のものです。
目次
序 章 日本史から普遍を求めて――明治維新を一例として
一 学界の国境分断
ニ 意識的な比較
三 明治維新の解剖
むすび
第I部 時間――秩序形成と危機認識
第1章 安定と激変――儀礼による秩序の固定とその解放
一 歴史への問い
ニ 危機と儀礼
三 複雑系の変化理解
四 政治秩序の生成と崩壊
むすびにかえて
第2章 長期的危機の予測と対応――藤田幽谷と「夏虫の氷」
一 長期危機という問題設定
ニ 紛争経験という泰平観の定着
三 政策妥当性の反転――経験的合理性とイデオロギー的臆断と
おわりに
第II部 空間――ナショナリズムとリージョナリズム
第3章 ナショナリズム――多層世界における相互作用と記憶の力学
はじめに
一 対照的な史実
ニ 理論的考察
三 相互作用によるナショナリズムの出現――日本と中国
四 記憶のダイナミックス――「忘れ得ぬ他者」現象
五 ナショナリズムの相対性――グローバル化の中のリージョナリズムとローカリズム
おわりに
第4章 周辺国の世界像――日本・朝鮮・ベトナム
一 「周辺国」の共通性――「中華」の利用・抵抗・複製
ニ 日本
三 朝鮮――高句麗・新羅・高麗
四 ベトナム
第5章 「アジア」リージョンの発明――地理学から地政学へ
一 前近代の「世界」分節
ニ 中華文明圏における「アジア」概念の導入
三 「亜細亜」概念の意味転換――一九世紀後半の日本
むすびにかえて
第6章 外交規範の変化――一九世紀東アジアにおける儀礼と語用の変化
一 外交儀礼の変更
ニ ペリー条約――二つのヴァージョンの存在
三 「アジアの外交官は嘘つき」か
四 多義性を基盤とする国際秩序の崩壊
五 多義性の部分的残存――中国との国交回復
むすび
第III部 秩序――儀礼と言葉
第7章 天皇即位儀礼の再編成――孝明・明治・大正三帝の比較
はじめに
一 即位儀礼の三段階
ニ 孝明天皇の即位式――弘化四年九月二三日
三 明治・大正の変化
むすび
第8章 尊攘イデオロギーの構造――『新論』における「忠」「孝」の多重平行四辺形
はじめに
一 「国体」と対外論
ニ 神話的祖型《「忠孝」の多重平行四辺形》
三 歴史――祖型の喪失と回復
四 武と米穀
五 英雄――祖型の回復
おわりに
第9章 「公論」慣習の形成――幕末から明治へ
はじめに
一 初期条件――江戸期日本の「公的」コミュニケーション
ニ 幕末の変動
三 維新――政体転換とマス・メディアの導入
四 政府と民間の対抗と協調――言論と暴力の交錯
おわりに
第10章 「公論」空間の創発――草創期の『評論新聞』
はじめに
一 公論空間の開闢
ニ 紙面構成と編集方針の概観
三 吉島時代の『評論新聞』
むすびにかえて
第IV部 方法
第11章 証拠の吟味――「蛮社の獄」を考え直す
一 事件史と裁判
ニ 歴史の通説――第二審の模様
三 証拠の再検討――第三審
四 まとめと展望
第12章 研究史の反省――維新の政治史
はじめに
一 幕末から明治初期の歴史編纂
ニ 初期議会期の史料編纂と史論の流行
三 政治史の成熟と偏り
四 文部省『維新史』
むすび
第13章 比較の試み――明治維新からみたフランス革命
はじめに
一 期間と経過
ニ 庶民と暴力
三 ナショナリズム
四 知的側面
おわりに
Searching for Generalities in Japanese History
Hiroshi MITANI