世界文学と日本近代文学
価格:5,720円 (消費税:520円)
ISBN978-4-13-086058-1 C3090
奥付の初版発行年月:2019年11月 / 発売日:2019年11月下旬
世界文学と日本近代文学との具体的な関係の緻密な分析を通して,世界文学論が掘り起こす問題系に応える.世界史・世界文化と密接な関係性をもつ世界文学からの,日本近代文学による摂取の複雑な過程が解きほぐされる.日本近代文学研究から発信される世界レベルの知の再編成.
野網 摩利子(ノアミ マリコ)
国文学研究資料館准教授
上記内容は本書刊行時のものです。
目次
はじめに(野網摩利子)
序 論 日本近代文学から世界文学へ(ダリン・テネフ)
一 世界文学と日本近代文学
ニ 世界文学の概念
第一部 世界文学は理論のなかに産れる
第一章 世界文学のエピジェネティクス(ダリン・テネフ)
一 方法論をめぐって
ニ 文学のDNAと世界文学のエピジェネティクス
三 ジェネティクスとエピジェネティクス
四 エピゲノムとしての世界文学
第二章 漱石の(反)世界文学と(反)翻訳(マイケル・ボーダッシュ)
一 「世界文学」理論と翻訳
ニ 漱石の「世界文学」概念
三 漱石の翻訳への憚り
四 「死後の生」としての翻訳
五 「カーライル博物館」における翻訳
六 結論の代わりに
第三章 運動としてのモダニズム――ニカラグアから日本へ(スティーブン・ドッド/訳=田中・アトキンス・緑)
はじめに
一 ニカラグアから日本への運動
ニ 日本の政治運動としてのモダニズム――梶井基次郎の場合
結論
第四章 『坊っちやん』の世界史――ラファエロからゴーリキーまで(小森陽一)
はじめに
一 「ターナー島と名づけ」ることの意味
ニ 「ラフハエルのマドンナ」の図像学
三 「いっしょにロシア文学を釣りに行」く記号学
四 「街鉄の技手」の政治学
第二部 世界文学の聞こえる場所
第一章 古謡と語り――漱石の翻訳詩から小説へ(野網摩利子)
一 ゲール語口承詩英訳の翻訳
ニ どこを翻訳しているか
三 古英詩の物語中の歌
四 盲目の武将と聞き手
五 演者が解く謎
六 過去をつかみなおす
七 不誠実な語り
八 小さな物語
第ニ章 猫との会話と文学の可能態――コレットの『牝猫』と谷崎の『猫と庄造と二人のをんな』について(ダリン・テネフ/訳=橋本智弘)
一 文献学研究と動物の言語
ニ 猫の物語――二つの視点
三 猫の雄弁さ
四 コレットと谷崎――三角関係とキメラ猫
五 コレットと谷崎――人間の言語における猫の発話
第三章 フランツ・カフカの「変身」と宇野浩二「夢みる部屋」というモダニストの部屋(スティーブン・ドッド/訳=田中・アトキンス・緑)
はじめに
一 ガストン・バシュラール――空間読解と文学的想像
ニ ゲオルグ・ジンメル――モダニズムと都市空間
三 フランツ・カフカの「変身」
四 宇野浩二の「夢みる部屋」
おわりに
第四章 自分のアイデンティティへ――高橋たか子『空の果てまで』とモーリヤック『テレーズ・デケルウ』(リンダ・フローレス/訳=田中・アトキンス・緑)
一 『空の果てまで』
ニ 高橋とモーリヤック
三 テレーズ,母性と家族
四 テレーズ・デケルウと「免訴」(‛Non-Lieu')という評決
五 ミシェル・ド・セルトーの「場所」と「空間」
六 久緒――「場所」と「空間」の交渉
おわりに――「居場所のない」の場所から「自分のところ」まで
第三部 引き継がれる世界と生命
第一章 世界文学としての三つの生命――漱石,スタイン,ジェームズ(マイケル・ボーダッシュ)
はじめに
一 「一夜」の語りと構造
ニ 『三つの生命』における繰り返しと意識の流れ
三 ジェームズにおける「繰り返し」の意義
四 「一夜」における繰り返しの意義をもう一度
結論の代わりに
第ニ章 文学の生命線――『リリカル・バラッズ』から漱石へ(野網摩利子)
一 聞き手の存在
ニ ワーズワス詩の関与
三 人の口から知る
四 脳内現象
五 文学としての不整合性
六 子を亡くした父親
七 死者に手向ける
八 アイデア連鎖
第三章 世界文学の文体チューニング――手紙の中のローザ・ルクセンブルグ(谷川恵一)
一 候文から口語文への転換期における女の手紙
ニ 「新しい女」のことば――ツルゲーネフ『その前夜』の手紙と日記
三 「女らしい」ことばから「女の言葉」へ――平塚らいてうと山川菊栄
四 世界文学への回路としての女のことば――ローザはどのようなことばで語るか
あとがき(野網摩利子)
World Literature and Modern Japanese Literature
Mariko NOAMI, Editor