よくわかる
情報通信ネットワーク
価格:2,310円 (消費税:210円)
ISBN978-4-501-54840-7 C3004
奥付の初版発行年月:2010年09月 / 発売日:2010年09月上旬
ネットワークの基礎知識を収録。学部生レベルに合わせた内容、体裁、構成。各章末に「調査課題」を収録、より理解を深めることを意図とした。
90年代に一般化したコンピュータネットワークの技術は,ブロードバンドネットワークの普及とともに爆発的な進化と普及を遂げています.今までは社会インフラの一部として,市民生活になくてはならない存在に成長しました.
ネットワーク技術とそれを活用したインターネットの進歩は,学校での学習方法にも大きな変化をもたらしています。インターネット以前の時代における学習は教科書や図書館の書籍・論文などが情報源で,必要な情報を探し当てるにも時間を要し,また限られた情報から全体像を把握するには相当な訓練と努力を要しました.しかし現代では,インターネットの検索サービスを駆使して必要な情報は瞬時に,労せずして入手できます.一方で,このことは学習の質にも大きな変化をもたらしています.授業で出されたレポート課題の正解が検索サービスで一瞬のうちに発見でき,理論を組み立てて考える余地が減って,画一的な考え方に陥るケースが増えてきました.
そこで本書では,検索サービスが広く普及した現代に即した大学向けの教科書を目指していくつかの試みを取り入れました.これは,検索サービスでただちに答えがわかるようなリファレンス的要素をできるだけ排除し,代わりに個々の技術は「なぜ必要なのか」,「なぜそのような仕組みか」,「他の選択肢は何か」など,エンジニアリングデザイン的な説明を心がけた点が第一に挙げられます.逆に,このような記述だけでは初心者にとって議論の焦点を見失うことが懸念されるため,議論の要点を箇条書き形式で随所に挿入しました.
また,章末の調査課題についても工夫をしています.調査課題には,Web検索では簡単に答えが見つからない課題や正解がない課題を豊富にそろえ,クラスで議論する材料として使えるようにしました.本書は情報系学部学生の入門レベルとして執筆しましたが,調査課題については学部高学年の専門科目,または大学院レベルの授業にも対応できるようにしました.なお,調査課題の性格上,略解は掲載していません.
情報技術のユーザとしてだけでなく,システム設計を担うエンジニアに期待されるデザイン能力を磨く道具として,本書が僅かでも参考になれば幸いです.
20108月
山内雪路
目次
第1章 コンピュータネットワークの基礎知識
1.1 ネットワークでつなぐ
1.2 回線交換とパケット交換
1.3 パケット交換の利点
1.4 ベストエフォート型ネットワーク
1.5 プロトコル
1.6 プロトコルのモジュール化
調査課題
第2章 OSI参照モデル
2.1 プロトコルの標準化
2.2 OSI参照モデル
2.3 カプセル化
2.4 各レイヤの役割
2.5 コネクションの概念
調査課題
第3章 データリンク層プロトコルの主要技術
3.1 ネットワークトポロジ
3.2 CSMAとイーサネット
3.3 無線LAN
3.4 トラフィックとスループット
3.5 高速化と長距離化の両立
3.6 フレーム形式
3.7 自動再送要求(ARQ)
3.8 イーサネットと高信頼伝送
3.9 誤りの発見
3.10 誤りの自動訂正
3.11 PPP
3.12 フレームリレー
調査課題
第4章 ネットワーク層プロトコルの主要技術
4.1 中継と経路選択
4.2 ホスト位置の記憶
4.3 ルーティングプロトコル
4.4 ネットワーク層アドレス
4.5 インターネットプロトコルとIPアドレス
4.6 ネットワークの大きさ
4.7 CIDR
4.8 サブネット化
4.9 DHCP
第5章 トランスポート層プロトコルの主要技術
5.1 トランスポート層プロトコルの目的
5.2 TCP
5.3 ポート番号
5.4 スライディングウィンドウと序列番号
5.5 輻輳制御とスロースタートアルゴリズム
5.6 コネクションの確立と解放
5.7 UDP
5.8 NAPT
調査課題
第6章 代表的なアプリケーション層プロトコル
6.1 クライアントサーバ型モデル
6.2 ピアツーピア型モデル
6.3 WWW
6.4 SMTP
6.5 FTP
6.6 DNS
調査課題
第7章 セッション層・プレゼンテーション層概論
7.1 セッション層機能の実現
7.2 プレゼンテーション層技術の概要
調査課題
第8章 ネットワークデザインとセキュリティ
8.1 3階層モデル
8.2 可用性の確保
8.3 ネットワークセキュリティ
8.4 リモートアクセス
調査課題
索引